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51:アヤカ、呼び出される

「ユスティン、あなたの誓いは見事だけれど……そう簡単にはいかないわよ」


 抱き合うアヤカとユスティンに向かって、ブリギッタが冷ややかに言った。


「この国の女王から、招集がかかっているわ」

「……女王から、ですか。それは、断れませんね」


 そう答えたユスティンは、再び苦い顔に戻ってしまった。

 この国で神殿勢力の次に強い勢力は、王族や貴族だという。

 宗教的なことや、幽獣関連のことは神殿に。その他の内政や外交は王族貴族に。

 内政の中で治安関連のことはどうしても幽獣が絡むため、アインハルド騎士団は特例として存在している。

 通常、二つの勢力は分けられており、担当する役目も異なるのだ。


「女王が私に何の用かな。私、何も悪いことはしていないけど……」


 アヤカは、頭の中にネズミの国でハートパンツを履いたふくよかすぎる悪役を思い出した。

 残念ながら、アヤカの貧相な脳に浮かぶ女王像はそのくらいだったのだ。


(いきなり、「首を撥ねろ」とか言われないよね?)


 ビクビクしながら、ブリギッタの次の言葉を待つ。


「女王は、アヤカを労いたいそうよ。もちろん、目的はそれだけじゃない……彼女は、聖人の力を手元に置きたがっている。自分の権力を盤石にするためにね」

「神殿勢力は、反対していないのですか?」


 ユスティンが、横から口を挟んだ。女王に関しては、ユスティンよりもブリギッタの方が詳しいようだ。


「今回、神殿勢力は、悪事が全て明るみに出て人々に糾弾されているわ。聖人を監禁拘束し、命の危機に晒したのだから当然だけれど……そのほかにも、様々な悪事が暴かれたみたい。しばらくは、大人しくしているしかないでしょうね」

「たしか、ウモウジール・リーベルは更迭されたらしいですね」

「そうよ。もともと、神殿本部から将来の幹部候補としてこの街に送られていたようだけれど、あれだけのことをやらかせば、もう日の目は見られないでしょう。神官長の後釜には、ハイン・リーベルが収まるそうだわ……聖人を助けた功績が認められたようね」


 確かに、ハインは危機に陥ったアヤカを助けてくれた。彼がいなければ、アヤカとシュウジは幽獣に襲われて命を落としていただろう。

 アインハルド騎士団でしごかれたという彼が神官長になることによって、神殿内部の腐敗がマシになれば良いとアヤカは思った。


「明日午後、謁見室へ来るようにとのことよ。ここから城まではすぐだから、問題ないとは思うけれど」

「……アヤカ、どうしますか?」

「どうするって、どういうこと?」

「女王に会いますか、会いたくないですか?」

「それは、私が決めちゃっていいものなの?」

「彼女に関わると、少なからず厄介なことに巻き込まれるでしょう。もし、アヤカが嫌だというのなら、僕があなたを攫ってこの国から逃げます」


 女王も神殿と同様にアヤカの力に興味を示しているのだろう。

 だが、ユスティンがアヤカを連れて逃げたとなると、彼は重罪人になってしまう。

 アヤカは、ユスティンが心配だった。それに、女王が悪人と決まったわけではない。


「とりあえず、行くよ。会ってみて、やばそうな人だったら逃げるかもしれないけれど……」

「心配しないでいいわよ、アヤカ。神殿の奴らよりはまともだから」


 ブリギッタがアヤカを安心させるように笑った。


「ねえ、ブリギッタは女王のことをよく知っているの?」

「まあ、一応伯母だからね。私の父が女王の弟なの」

「ええっ!?」

「ユスティンの父親も、女王の従兄弟よ?」

「二人とも、本当に良いところのお坊ちゃんだったんだね……」


 玉の輿狙いのミルが、目の色を変えるわけである。


(あれ……でも、ブリギッタとミルは仲が悪いよね?)


 理由を聞きたい気もしたが、話が脱線しそうだったのでアヤカは口を噤んだ。


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