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第19話 鬼竜の過去

破部は胸の前でラズファムを両手で握ると、ラズファムの先がオレンジ色に光だし、体全体が再びオレンジ色に包まれた。

薄暗い道場に破部のラズファムのオレンジ色の光が輝く。


山威

「何だあれは?!」


ニカ

「綺麗な光…」


鬼竜

「?!!!」


鬼竜は急に恐れおののいた。


破部

「浄化には、もう一段階」


破部のラズファムからでる光と、体から放たれているオレンジ色の光の内側に、青い光が混じり始めた。


破部

「よし、桐生。いくぞ」


破部は素早く鬼竜の元に駆け寄る。

胸元に手を向けるとオレンジ色の光がほど走った。


鬼竜

「うぎゃああああああ」


山威

「大丈夫か?!なんて光景だ…」


ニカ

「いったい何が起きてるの…」


鬼竜はその場で、畳に膝をついた。

胸あたりに、オレンジ色の光が「バチバチ」と放電のような音を立てると、消えた。


破部

「終わった。桐生、もう大丈夫だ」


鬼竜

「な、なんだ。今のは…」


山威

「鬼竜、大丈夫か?」


鬼竜

「や、山威……。ニ、ニカ…ちゃん。俺、なんてことを…」


鬼竜は気を失いその場に、そのまま倒れた。


山威

「鬼竜!」


破部

「大丈夫です。ストゥーピットは消滅した。少ししたら目を覚まします。寄生していたときの記憶が消えるわけじゃない…きっと、目が覚めて思い出せば、自分がやった行為を強く後悔するだろうがな…」





「桐生さーーーん!」





鬼竜の手下の五人が道場に駆け寄って来た。



破部

「お前たち、帰ってなかったのか」


鬼竜の仲間

「はい。来なくていいと言ってたけど、気になって。桐生さんの声が聞こえた気がして、今さっき来てみたんです」


破部

「そうか、お前たちのおかげで間に合ったよ。暮井も無事。桐生も目を覚ませば、前みたいに戻ってるはずだ。そのあとは…桐生次第だがな…」


鬼竜の仲間

「あ、争ったあとですか?!桐生さん、倒れちまってるけど」


破部

「大丈夫だ。時期に目を覚ます」


鬼竜の仲間

「そうですか。最近の桐生のアニキは、とち狂ってた…。ニカさんのことになると、やけに怒り狂うし…」


ニカ

「………」


山威

「すまない…。私の…せいなんだ」


鬼竜の仲間

「山威先生のせい?ずいぶん、山威先生のこと慕うようになって、俺たちは驚いてたけど」


山威

「ああ、それは…」


破部

「山威先生」


山威

「ん?」


破部

「桐生が柔道部辞めた理由、知ってますよね?」


山威

「あ、ああ。こいつが一年だった時の出来事で、当時の鬼竜のことも知ってましたからね」


破部

「いま、話してあげてください。暮井のためにも、桐生のためにも」


山威は、チラっとニカを見ると、鬼竜の過去を話し始めた。


山威

「そ、そうだな。こいつが柔道部を辞めた理由は、高校一年の時に、暴力事件を起こしたことがきっかけだ。その日は、柔道部の試合で、とある学校の女子生徒のマネージャーが柔道部員に襲われそうになっていたところに、鬼竜がでくわした。元々正義感の強い鬼竜は、その男子生徒たちに暴行を加えた。女子生徒を助けるためにな」


ニカは鬼竜を見る

「………」



山威

「おかげでその女子生徒は助かったが、そのあと暴力事件だけが問題になり、それが原因で鬼竜は柔道部を退部になったんだ」


ニカ

「そんな…、理由を話せば退部を免れられたんじゃ…?」


山威

「そうかもな。だが、相手が柔道部の名門校だっただけに、ただの高校同士のケンカとして扱われ、鬼竜も何も言わず退部していったんだ。学校側としては、それで済ますことで大きな問題になることを避けたんだろうよ」


ニカ

「そんなことが…でも、それじゃあ、あまりにも…」


山威

「鬼竜は、それ以来。硬派のイメージから打って変わって、髪を染めてケンカに明け暮れるようになった。いつのまにか、鬼の桐生と呼ばれるようになり、いまでは『鬼竜』と呼ばれるようになった」


破部

「桐生は、そういう奴なんだな。不器用な男だが、無理矢理女子に手を出すような奴じゃない。だから、暮井、お前にやった行為や言動は、コイツの本意じゃない。あんなことを自分の意思でする男じゃないってことは、わかってやってくれ」


ニカ

「そうなんですね…。やっぱり、それじゃあ、あのストゥー…」


破部

「暮井っ!いまはそれはいい」


ニカ

「え、、ああ」


破部

「とにかく、桐生もここから変われていけるよう、お前たちが支えてやってくれ」


鬼竜の仲間

「ありがとうございました。破部先生。何でも話して欲しいって言ってた先生に、頼ってみてよかったです。なんか只者じゃない感が半端なくて」


破部

「只者じゃない感?笑。そんなん、わかるんか笑」


鬼竜の仲間

「オレたちもどうしようもなくて、藁にもすがる思いで誰かに頼りたかったんだ。その時に、破部先生が2年の副担任として就任してきて、桐生さんにも対等に接してたのを見て…。桐生さんには、破部先生をボコれって言われたんスけど…」


破部

「はは笑。俺の前に立ち塞がって来た時は、俺もそう思ったよ。ボコりに来たんだろうなって。ま、これからは桐生を支えてやってくれ、何かあればまた力になるからな」


鬼竜の仲間

「はい。桐生さんは、俺たちが連れて行きます」


鬼竜の仲間たちは、鬼竜の両腕に肩を入れ、そのまま第二体育館から出て行った。






破部

「じゃ、ここ片付けておかないとな。柔道部にも悪い」


山威

「破部先生、暮井、本当にすまなかった」


破部

「まだ終わってないですよ。あとは、渡瀬と鈴家。彼女たちのストゥーピットを除去してから話しましょう」


山威

「そう…ですね」


ニカが突然、畳の上に座り込んだ。


破部

「大丈夫か?!暮井」


ニカ

「怖かった…。もう、ダメかもって思って…」


山威

「すまなかった。暮井。オレのせいだ。罪は償うつもりだ」


ニカ

「ひどいですよ、山威先生。もう、本当にダメかと思った…」


山威

「すまん!いまは、それしか、言えん」


破部

「これでアンビヴァレントの非道さがわかったでしょう。山威先生、アイツらにはもう関わらないことです」


山威

「はい…」


ニカ

「破部先生も、ひどい」


破部

「オレも?」


ニカ

「わかってきたのなら、もう少し、早く来て欲しかった…。これも調査の一貫ですか?」


破部

「!!」

「そう…だな、確かに、ここに来た時点で突入すべきだったな…」


ニカ

「先生は計算のうちなんでしょうけど…何も知らない私は…」


というと、ニカは畳に倒れた。


破部

「暮井!大丈夫か?!」


破部はニカの肩を抱え起こした。


ニカ

「大丈夫…安心しただけ…」


破部

「そうか…。気を失ったかと思った。お前も、屋上での約束破って、1人でここに来るからだぞ。これからは、何でも言うんだぞ」


ニカ

「そうだね…。ごめんね、破部先生」


そういうと、ニカは寝てしまった。


破部

「ね、寝たのか?!」


山威

「恐ろしいことをしてしまいそうになった…。破部先生、助かりました…アナタがあの時、はじめてアンビヴァレントと言葉にしたときから、何者だろうと思ってましたよ」


破部

「ああ、職員室で暮井と話した時ですか。あの時は、山威先生の反応も見るために口にしたんですよ」


山威

「そうだろうとは思いましたよ…知らないふりしましたけど」


破部

「夜頭にはオレの存在のこと、伝えたんですか?」


山威

「それは、まだ言ってない。言えなかった」


破部

「そうですか、それで良い。とはいえ、オレの存在に気づくのも時間の問題だろう。とにかく、山威先生、これからは一緒に、まず渡瀬と鈴家を救いましょう」


山威

「わかりました。…………暮井、安心しきってますね」


破部

「え?ああ、そうですね。こんなところで寝ちまいやがって笑」


山威

「暮井のこと、よろしく頼みます。アナタを信頼しきっています」


破部

「あぁ、はい。これからも暮井を…生徒たちを守っていきますよ」


山威

「……私が、ここは片付けておきますよ。破部先生は暮井を連れて、送ってやってください」


破部

「いや、一緒に片付けますよ」


山威

「いいんです。私1人でやります。暮井をお願いします」


破部

「……わかり、ました。じゃあ、コイツを送ります。山威先生、また明日話しましょう。渡瀬たちのこと…」


山威

「わかりました。そうしましょう…」


破部は、ニカをおんぶし直して歩き出した。


破部は振り返り

「山威先生、何かあれば相談くださいね。夜頭のことも、何でも」


山威

「ありがとうございます。では…気をつけて」


破部はうなずき、一抹の不安が胸に残るのを感じながら、第二体育館をあとにした。







アンビヴァレント研究所ー


夜頭ノイドが、自室で、暗闇の中、自分のデスクの革の椅子に座っていた。


デスクの上には、丸い青白い光が浮遊しているものが入っている透明な容器が置いてある。


夜頭ノイド

「暮井ニカ…もうすぐ、君は僕の力を求めてくるんだ。これを見ていると、毎日、君のそばにいるようだ。ふふふ。」

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