プロローグ
瀬戸内海の真ん中に、ひときわ大きな影を落とす島がある。
淡路島。
海に浮かぶというより、
海に抱かれていると言ったほうが近いかもしれない。
朝の光はやわらかく、
昼の風はどこか甘く、
夕暮れは海と空の境界を曖昧にしてしまう。
古くは「国生みの島」と呼ばれ、
日本の始まりを語る神話の舞台にもなった。
イザナギとイザナミが最初に生み落とした島──
それが淡路島だと言われている。
面積は592平方キロ。
瀬戸内海の島々の中では最大で、
東京ドームにすると約12,700個分。
甘くて大きいと評判の「淡路島玉ねぎ」なら、
およそ1億2千万個分にもなるらしい。
けれど、数字だけではこの島の魅力は語れない。
海の青さは季節ごとに色を変え、
風は潮の匂いと草の匂いを混ぜて運んでくる。
島の道はどこまでも続いているようで、
どこか懐かしい場所へと導いてくれる。
そして何より、
この島には“人の温度”がある。
観光客に手を振るおじいちゃん。
朝の港で魚を並べる漁師さん。
学校帰りに自転車で坂を駆け下りる高校生たち。
夕暮れの海辺で犬を散歩させる家族。
どれも淡路島の日常で、
どれも淡路島の宝物だ。
この物語は、
そんな淡路島で生まれ育った六人の高校生たちの物語。
彼らは、島の光の中で育ち、
島の風の中で笑い、
島の海のそばで悩み、
島の道を歩きながら未来を考えた。
けれどある日、気づく。
世間の淡路島へのイメージは、
どこか曖昧で、どこか雑で、
本当の魅力が伝わっていないことに。
「淡路島って小豆島のことでしょ?」
「なんか橋でつながってる島だよね?」
「兵庫県?香川県?」
そんな声を聞くたびに、
胸の奥が少しだけざわついた。
自分たちが知っている淡路島は、
そんな一言で片づけられる場所じゃない。
海の光も、
風の匂いも、
夕陽の色も、
島で過ごした時間も、
全部が宝物だ。
だったら──
自分たちが伝えればいい。
自分たちが愛してやまないこの島を、
胸を張って「世界に誇れる」と言える場所だと示せばいい。
これは、淡路島を愛する六人の、
小さくて大きな挑戦の記録。
そして、
淡路島という舞台で輝いた青春の物語である。




