プロローグ
MF文庫ライトノベル新人賞一次審査を突破した作品を改稿した作品です。どうか最後まで見てください!
プロローグ
妹の為にも死ねない……! 死んでたまるか……!
僕――リオ=マルクスは、謎の敵が放つ魔力弾をギリギリ回避しつつ、恐怖で足が竦《すく》みそうなのを、死ねないという一心で抑え込んでいる。
慌てて走っている為に埃等が舞っており、カビ臭いがそんな事を気にしていられる場合ではない。
昼食直後、旧バムロ帝国帝城跡で地下室に通じる通路を発見し、中に入って蝋燭《ろうそく》を灯したのはいいが、行き成り敵が現れたのだ――しかも頭上からである。
「くそっ……!」
最初の攻撃をぎりぎり回避したものの主武装を落としてしまい、今は補助武装である小太刀で応戦していた。
その小太刀はただの小太刀ではない。
魔装武具と呼ばれる武具である。
魔装武具とは呪式陣を封じ込めた――生命元素であるマナが結晶化した石――華石を、武具や武装具に装着させたものの総称である。種類は二つあり、華石に封じられている魔法を呪式無しで、魔法名である呪言を言うだけで扱える常駐型。そしてもう一つは、『マスター・スペル』となる呪式陣を封じ込め、ある程度呪式を省略できる汎用型である。この小太刀は前者にだ。
「サレ、ニンゲンヨ!」
吃驚(びっくり)してしまい、今度は小太刀を落としそうになる。
何だ、この魔物は……! 喋った……⁉ そんな馬鹿な⁉
奥は薄暗いが階段付近は灯りがあり、魔物の姿が見えたのでよく観察する。
敵は人型でありながら、翼を持っていた。蝙蝠の様な翼を持っている為、天使ではない。勿論魔物だから素っ裸だ。
何だ、こいつは……⁉
小太刀を構え直した僕は、その蝙蝠男から敵対行動と捉えられたようで、
「サラヌカ! ナラバシネ!」
蝙蝠男が魔力弾を再び放ってくる。
不味い! また来た!
それらを避けながら、僕は懐から投擲用の短剣を抜き放つ。
マリョクケッカイ!
しかしそれらは全て空中で弾かれてしまう。
「くそっ……! 結界か……⁉」
僕は悪態を付きながら、次の手を考える。敵は空中を飛んでいるのだ。小太刀では手の出しようもない。
くそ! どうすればいいんだ⁉ この地下室の床から天井までの高さは、およそ十五メートル! 届きようがないぞ!
…………逃げるか?
攻撃が届かなければどうしようもない。幸い逃げれば蝙蝠男は追ってこないだろう。
早速階段に……。
いや、待てよ……階段?
降りてきた階段を盗み見る。
よし……!
階段に向かって全速力で疾走。
予想に反して、蝙蝠男は追って来ながら魔力弾を相変わらずに放ってくる。
くそ! こちらが手出し出来ないからと思って調子に乗って!
でも、好都合だ……!
ジグザグに走ってそれらを躱し、階段を上りきった所で反転。蝙蝠男に向かって跳躍して小太刀を構える。
マリョクケッカイ!
振り下ろした小太刀が空中停止。しかし結界に触れた瞬間に、
破砕呪!
呪言を言った瞬間――小太刀に付いている華石が灰色に輝く。同時に蝙蝠男の張った結界が砕ける。
通常魔法の中でも、上級に入る結界破りの術だ。
「ナニ⁉」
「うおあああああああああああああああああああ!」
僕は弐の太刀で蝙蝠男の首を斬り落とす。それと同時に、蝙蝠男の掌から魔力弾が上空に放たれ、天井を破壊する。
足が床に付いた時、崩落で埃が舞う。
「はあはあはあ……ごほごほ!」
埃を目いっぱい吸い込み、噎せる。
そして暫らくたって、僕はようやく部屋の中央に棺がある事に気が付いた。
蝙蝠男の魔力弾で天井が破壊され、外の明かりが入って来たようだ。
そのお蔭でこの地下の全体が一望出来る。かなり広い部屋のようだ。
あの魔物は、この棺を護っていたのかな?
棺に吸い寄せられるように近付く僕。
ザラザラしている砂や埃を振り払うと棺の中央に華石があり、天使の文様が描かれている。
「これは……?」
良く観察すると、棺には蓋になる部分が無い。それにこの棺は年代物のくせに、完全な形を保っていた。
「何かを封印したものなのか?」
もし邪神を封印したものだったらどうしよう?
もしも邪神の類なら、今の状態ならば敗北は必至だ。
ネガティブな考えだった僕だが首を振って、ポジティブに思考した。
大昔はこの様な棺で、金銀財宝が保管されていたと聴いた事があるな。なら、その可能性は十分にありえる……! もし金銀財宝なら、近場の街で売り払ってしまおう!
僕は期待を込めながら、小太刀を突きだし、
破砕呪!
結界破りの魔法を使った瞬間――僕は三メートル程吹き飛ばされた。
「いつつ……」
何だ、何だ? この異様に強固な結界は?
破砕呪を持ってしても突破出来ない堅固な結界を持った棺の前に、僕の期待はさらに上昇する。その為、何かが封印されているとは露程も思わなかった。
ここ――帝城跡には、もう一人……教官がいる。その教官ならこの結界を破れるかもしれない。
僕は立ち上がって、
「仕方ない。教官を呼ぶか……」
誰かが聴いている訳でもないのに、ぽつりと呟く僕。
そして階段に向かって僕は歩き出したのだった。




