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ドラゴンプラネット  作者: 葉月 優奈
四話:ドラゴンの切り札
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この世は、ありえないことが起きていた。

六つの赤い目のドラゴンは、とんでもなく強いと直感した。

レベルは???だけど、圧倒的な強い威圧感を放っていた。

そんなアジ・ダハーカの隣には、一人の人物がいた。正確にはつかまれていた。


「自己紹介がまだですね、私は『アジ・ダハーカ』。こちらが……」

「金森会長!」

紹介前に叫んだのはヴァルキリアだった。僕もそれを見て驚いた。

509のフィールドには、ありえない光景が見えた。

レベル???のドラゴンと、金森会長が一緒に出てきた。

それにしてもこのドラゴンはなんだ、ものすごく嫌な予感がする。


「騒がないでください、ヴァルキリアさん。折角紹介できると思っていましたのに」

「アンタ何者?どういうこと?」

「その前にあなたがたの他己紹介させてください。『たまだん』のみなさん。

あなた方のことを知っていますよ、『K・シューター』こそ有明高二年G組『木田 弘明』君」

「な、なんで俺のことを……」

いきなりアジ・ダハーカは『K・シューター』の弘明のことを話してきた。

K・シューターはいきなり言われて動揺していた。

さっきまでの余裕は、どこかに吹き飛んでいた。


「どういうことなの?」

「あなたは美しい戦場のバラの様です、『ヴァルキリア』こそ有明高二年G組『蓼沼 結衣』さん」

「えっ、あたしも……」

509のシェルターにいたリアルで僕の隣にいた結衣が、スマホを見ながら声を漏らした。


「『ナツナイト』の豊洲高一年三組の『親園 棗』さん、

『ジャイアント・キリング』こそ、豊洲高三年七組の『壬生 太』君」

「うそっ、なんで……」

「……」

ナツナイトは驚いていて、ジャイアント・キリングは黙り込んでいた。

リアルでそばにいる太は、黙ってスマホを見ていた。


「それに、『ハルヒメ』でもある浜大二年『鐙塚 晴海』さんも」

「晴海……」

「しっ」僕がしゃべろうとしたとき、リアルの結衣が僕の口を抑えた。

「えっ、どういうこと?」

だけど黙ったまま結衣は、そのまま首を横に振っていた。


再びスマホの画面に戻っていく。

「君たち五人は、すでに『アジ・ダハーカ』であるこの私に知られているんだよ。

君たちがどんな生活をして、どういう人間で、君たちがこれを探しているのも。

全部知っているんだ、全部手の内にある」

そう言いながら、アジ・ダハーカの隣にいる金森は大きなアタッシュケースを持っていた。

そこにはコインがいっぱい見えた。

ドラゴン視アターで見たコイン、女性の横顔が描かれていたあのコインと同じだ。


「知っているからなんなのよ!」

鬼気迫る顔でヴァルキリアが動いていた。剣を構えてアジ・ダハーカに向かっていく。

だけど、アジ・ダハーカは全く動かない。

接敵すればオート戦闘に変わるのもあるが。


「いけない、ヴァルキリア!」

「うるさいわ!」

K・シューターの制止を無視して、上の方にいるアジ・ダハーカに向かっていく。

怒りや恐怖が、結衣のヴァルキリアを走らせていた。


「守らないと、アジ・ダハーカの言うとおりにさせてはいけない!」

ハルヒメの前にいたナツナイトが、ヴァルキリアに近づいていく。

僕もナツナイトに引っ張られるようについて行く。


「戦争は情報戦だ。相手の情報をいかに知っているかが、勝敗を分ける」

「どういうことよ」

「つまり、お前たち『たまだん』は絶対に負ける!」

結衣が接触する瞬間に、アジ・ダハーカの動きが横に流れた。

金森会長からすうっと離れていく。


「いいものを見せてやる」

アジ・ダハーカの赤い六つの目が同時に光った。

そして、アジ・ダハーカが指を鳴らすと、アタッシュケースのコインが金森会長を包みこんだ。


「なんなの?」

「金森は私に服従しているのだ。金森にはたくさんのお金が必要なのよ!

だから与えてあげる、浴びるほどお金を与えるの。欲望を満たせるように。

何より欲望を邪魔する、『たまだん』メンバーを完全に始末するために!

「スキル『血の金(ブラッドマネー)』か!」

無数コインが、金森会長の体を完全に覆った。

だけどそのコインは邪気のような赤と黒が混じったオーラを放っていた。


「どういうこと?」

「この星に生まれし、新たなドラゴンよ!姿を現せ!」

アジ・ダハーカの挑発にリアルでそばにいる結衣は唇をかんでいた。

なんだか、スマホを持つ手が震えているようにさえ見えた。


そして生まれたのが、一匹のドラゴン。

僕が晴ねえとデートした時に見た、額にコインをつけたドラゴンがそこにあった。

レベルは60、さっき戦ったコインドラゴンのレベルが倍以上だ。

名前表記はコインドラゴン、だけどこれは金森会長が元の人間だったドラゴン。

だから『カナモリドラゴン』と呼ぶことにする。


「ふざけないで、あたしは負けない!

あたしは覚悟があるの、誰が相手であっても!」

叫んだヴァルキリア、いや結衣の心の叫び。

結衣の頭の中は、いろいろ起きてきっとぐちゃぐちゃだろう。

自分のことを敵の総大将であるアジ・ダハーカに知られ、自分の知り合いである金森会長が敵になった。

そして、そのドラゴンと命を懸けたゲームをしないといけない。


それでも結衣は前に進んでいく。勇気をもって敵と対峙していく。

僕もそんなヴァルキリアの勇ましく頼もしい姿を見て、羨ましく見えた。

(僕も覚悟を決めないといけない……後は)

迷いが無くなりつつある僕の目の前に見えたスマホ画面。

だけどヴァルキリアと距離が離れていた。


「いけない、ヴァルキリア。下がって!」

ジャイアント・キリングが叫ぶが、進撃をやめないヴァルキリア。


「勝てないんだよ、人はドラゴンに!」

いきなり現れたカナモリドラゴンと、アジ・ダハーカに挟まれたヴァルキリア。

オート戦闘で、ヴァルキリアが狙っているのはカナモリドラゴン。

レベルはヴァルキリアよりももちろん高い。


「させないわよ!」

挟まれたヴァルキリアは、あっという間に体力が減っていく。

それでも強気のヴァルキリアは、端から見て痛々しかった。

実際のダメージもあってリアルの結衣の顔が、苦痛でゆがむ。だけど目は前を向いていた。


「なによっ!あたしは絶対ひるまない!」

「余計なことするな、ノーキン。迷惑かけるなよ!」

「今助ける!」

K・シューターの文句と同時に、ジャイアント・キリングが急いでヴァルキリアの方へ加勢しに向かう。

しかし、カナモリドラゴンはジャイアント・キリングにスキルを使ってきた。


「『蔦の術(バインド)』」

カナモリドラゴンのスキルだ、ジャイアント・キリングに緑色の蔦が向かっていく。

あっという間に緑色の蔦が、ジャイアント・キリングを包み込む。

だけどジャイアント・キリングは拳を構えてそのまま走ることができた。


「僕には効きません」

緑色の蔦がジャイアント・キリングを包み込んだ。

だけど、すぐにそれをブチ破ってカナモリドラゴンの背後をとった。

そのままカナモリドラゴンを殴り始めた。


「まあ、いいでしょう。残りは動きを封じましたから」

ナツナイトは蔦にまんまとはまっていた。当然ハルヒメの僕もだ。

K・シューターは遠隔攻撃だから全く影響はないようだ。


「どうやら、情報戦はこっちの方が上だな」とK・シューター。

ずっと遠隔攻撃をしていた。だけど顔は浮かない。

やはり金森会長を知っている有明高の人間は、戦うにはきつい相手だ。


「どういうこと?」

「ジャイアント・キリングの足元を見て見ろ。茶色のブーツを履いているだろ」

「うん」確かにジャイアント・キリングの足は茶色いブーツだ。

「あれは『大地系魔法』、つまり蔦とかの弱体スキルを無効化できるブーツなんだ」

「へー、そうなんだ」

「ストーリー報酬だぞ、俺がプレゼントしたんだ。そんなことよりヴァルキリアに回復!」

K・シューターに言われて、僕は「はい」ということなくすぐさま回復をしていた。


ヴァルキリアの体力が半分を切っていたし、回復が激しい。

どうやらアジ・ダハーカの攻撃力はかなり高い。

逆にカナモリドラゴンの方はダメージが低かった。


「ジャイアント・キリングはあれで無効化している、だけどリアルは話が別だ」

K・シューターがそう言うと、スマホ画面ではないリアルは別だった。


「た、助けてくれっ!」

それは地下に響く声。僕はすぐにリアルへ引き戻されていた。



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