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ドラゴンプラネット  作者: 葉月 優奈
四話:ドラゴンの切り札
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リアルで僕がいたのはシェルター。509の下にはシェルターが完備していた。

そのシェルターは便利なことに、渋谷区役所までつながっていた。

区役所までの道は太が知っていた。すでに調査済みという事か。

この渋谷は開発が進んでいて、地下通路がほぼあちこちに掘られていた。

509から駅も、巨大な商業ビルも、区役所も地下で全部がつながっていた。


そばには苦痛に顔がゆがんだ結衣と、冷静な顔を見せた太がいた。

それ以上にシェルターが慌ただしかった。走る足音と叫び声が聞こえてきた。


「大変だ!シェルターの中に、蔦が入ってくる!」

僕がスマホから目を上げると、奥の方から緑色の蔦が見えた。

そして逃げ惑うサラリーマンの背後から、巨大な蔦が襲ってきた。

蔦がシェルターの中に侵入してきた。安全だったシェルターが大混乱していた。


「あれは……」

「リアルがシンクロしている」

太はスマホを見ながら蔦と反対の方に走って行く。


「戦いに集中して!二人とも前を見て!」

「両方はできないよ!」

太が大声で叫ぶと、結衣と僕は顔を上げた。

それは植物の黄色い蔦が僕たちの方に襲い掛かってきた。


「なんなの!」

強張った顔で結衣は叫んでいた、蔦が出てきた方角は区役所からだ。

それをかろうじて太の合図で間一髪かわしていく。


「どうやら『蔦の術』を使ったことで、リアルに反映されたのだろう」

「そうじゃなくて、この蔦は僕たちを狙っているんだよね」

「そうかもしれない。でも……間違いなく市役所の方にはドラゴンがいる」

「怖い……」

青ざめた顔で結衣はいきなり恐怖を覚えていた。

今までのいきり立った強い彼女ではない、素顔の弱い顔が見えた。


「どういうことだよ?」

「金森会長がいるの、あたしの学校の会長!」

「分かっている、結衣!だから落ち着け!」


僕の制止を無視して結衣が走って行く。先に行く結衣を僕は追いかけた。

完全に結衣は混乱していた。金森会長がドラゴンにされたんだ、平静でいられるはずもない。

駆け出す結衣の手を落ち着かせるように僕は引っ張った。


「謝らないと……いけない!あたしは会長を疑ったんだ」

「結衣待て!会ってどうする?」

スマホを片手に持った結衣は震えていた。


「あたしは最低よ」

「分かっても、結衣がどうにかできるわけじゃない。

僕たちができることは、ただ戦うことしかできないのか?」

「うん……ごめん」


それでもスマホ画面を見ながら、結衣は泣いていた。

僕も悔しかった、でも泣けなかった。

ドラゴンになった金森会長は既に被害を出していた。

戦いをやめて逃げれば、渋谷の町が破壊されて多くの犠牲が出る。

皮肉なもので、いつの間にか覚悟が入れ替わっていた。


「結衣、迷っている暇はないよ。僕たちは……」

「わかった、ありがと……誉」

結衣はそんな僕に必死に笑顔を作っていた。

間違いなく強がっていた、結衣は絶対僕に弱みを見せない。昔から活発で強いから。

そんな結衣しかみせないところは昔と変わらない。


「カナモリドラゴンと戦える?」

「戦う……誉こそ……」

「僕は結衣やみんなを見て戦える、そんな気がするんだ」


ようやく僕は口にした、自分が戦う理由を。

ドラゴンになった人を殺すという状況でありながら、それでもゲームを続ける理由を。

はっきりしない想いがようやくまとまった。


それでも僕たちを狙ってか蔦が僕たちの方へと向かっていく。

それでも僕と結衣には区役所の方に向かう理由があった。

真実が区役所にある、戦うべき(ドラゴン)が区役所にいるのだから。



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