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22話 接触

舞踏会の喧騒が落ち着いた頃。


王城の回廊で、声がかかった。


「ルチア嬢」


振り向く。


第二王子だった。


穏やかな笑み。


だが瞳は鋭い。


「少し、お時間を」


断る理由はない。


断るべきでもない。


小さな応接室。


護衛は遠ざけられる。


密談の形。


「率直に申します」


第二王子は前置きをしない。


「当主の件は現実的ではない」


柔らかな声。


だが直截。


私は微笑む。


「そうでしょうか」


「平民出身の養女が、実子を差し置いて当主に就く」


静かな分析。


「三家が承認するとは思えません」


理屈は正しい。


「はったりに聞こえる」


さらに踏み込む。


敵意はない。


純粋な評価。


私は否定しない。


「可能性は低いでしょう」


あえて認める。


「ならば」


第二王子は続ける。


「一年後、婚姻は可能」


第一王子と同じ結論。


違うのは口調。


焦りはない。


「殿下はそうお考えですか」


私は問い返す。


「兄上は焦っている」


静かな断定。


「だが愚かではない」


港を締める。


噂を流す。


派閥をまとめる。


合理的だ。


「一年後に合法的に迎える」


第二王子は淡々と言う。


「それが兄上の勝ち筋」


私は小さく笑う。


「合法、ですか」


第二王子は目を細める。


「違いますか」



沈黙。


一瞬だけ。



「殿下」


私はゆっくりと言う。


「証拠はすべて揃っております」


空気が変わる。


「……何の」


「国外口座」


「宝石商」


「別邸」


「側近名義の迂回送金」


一つずつ並べる。


声は低く。


第二王子は動かない。


だが視線が変わる。


計算を始めた目だ。




「兄上は、まだ気づいていない?」


「泳がせております」


私は答える。


「焦らせた方が、動きが荒れる」


第二王子は沈黙する。


そして静かに笑う。


「なるほど」



「一年後に婚姻可能」


私は続ける。


「それまでに兄上が立っていれば、の話ですが」


完全な宣戦布告ではない。


だが十分。


第二王子はゆっくり頷く。


「あなたは、王位に興味はない」


確認。


「ございません」


即答。


「商売と家の均衡だけです」


嘘ではない。


だがすべてでもない。


「兄上が退けば」


第二王子は言う。


「均衡は戻る」


「均衡が戻れば、婚姻の話も消える」


私は続ける。


第二王子はゆっくりと歩み寄る。


声をさらに落とす。


「均衡は、誰かが座らねば保てぬ」


私は視線を逸らさない。


「兄上が退いた後」


わずかな間。


「空席が生まれる」


それは確認ではない。


未来の提示。


「殿下は、その席をお望みで?」


私は問う。


第二王子は微笑む。


「王家の者として、責務は負う」


否定もしない。


肯定もしない。


だが目は静かに燃えている。


私は頷く。


「ならば利害は一致します」


その一言で、力関係が定まる。


互いに利用する。


だが支配しない。

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