3.鼓動
「こんなのっ…俺じゃ…。」
俺を睨む狼たちの牙は血で濡れていて、その中心にいるエレナの腕からは血が出て、服は裂けていた。
ガルゥッ!
狼が吠えてきた。
「っ、雷よ。『飛雷』!」
静電気より、ほんの少し痺れる雷が、指から放たれた。
「ーーそりゃ効かないよな。」
「悪いが、エレナは貰うぞ。その代わりに俺の肉を食うといい。ちょっとまずい肉だが、美味い飯を食わせてもらってるからな。マシであることは保証するぜ…。」
「エレナはな、家で待つ家族がいるんだ…。俺には…いない。じっちゃんを心配させてしまうかもしんねぇ。けど、ここで逃げたら、親父とお袋に顔向け出来ねぇッ!」
魔力を迸らせ、上級魔法の詠唱を紡ぐ。
「できなくても…、テメェらの気は引けるだろ!『炎よ。吹き荒れろ。』」
「『我が道を塞ぐ敵を』」
「『欠片も残さず灼き尽くせ』!」
「『地獄の炎』!」
ポスッ。
「ははは、そりゃ…無理だよな。」
あぁ、死んだ死んだ。まだ、ライルさんの飯食いてぇよ。死にたくねぇ。
「ーー死にたく…ねぇッ!」
ドクンッ!
『気に入った。』
キャ、キャゥ…。
狼が、感じ取り、後ずさる。
『其の方は、我が力の一端に触れるに相応しい。我が好むは力?否。それよりも我が好むのは其の方の魂である。』
なんだ…この魔力…。
『其の方の心意気。我は気に入った。此の状況、其の方がどう潜り抜けるかが、気になった。故に聞こう。』
「っ。」
『先の言葉に、疑はないか。』
「……ない。実際、俺のことを家で待ってくれてるのは、じっちゃんだけ…。エレナには、家族も、姉貴もいる。」
『ガハハッ、良い。良いぞ。其の方、名前は?』
「俺は、ローグ。」
『我が名はゼルディアス。ローグよ、其の方は、何を望む。』
「ーー俺は…、身近な人を守れる、ちっぽけな力が欲しい。」
『ほう、強大な力ではないのか?』
「俺は性に合わん。気ままに暮らす方が好みだ。」
『ガハハッ!なお、気に入った。良い、良いぞ。改めて、我が真名はゼルディアス=フェミスト。かつての友との約束を果たすため、この森に住む龍。』
「俺はローグ・ドラグレイヴ。ゼルディアス、俺に、望みを叶えうる力を貸してくれ。」
『承った。『鼓動よ、鳴れ。』』
ドクンッ!
「なっ。」
俺の体にある魔力の塊。そこから、鼓動が聞こえた。
体が熱くなる。魔力が溢れ出ていく。
「これは…。」
『ガハハッ!その名前、まさかとは思うたが、本当に龍源を継ぐ者だとは思いもしなかったぞ!』
「?」
『良い、今はわからなくて良いことだ。さぁ、其の方の力を、我に見せてみよ!ローグ・ドラグレイヴ!』




