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飾り屋店主の魔法使い  作者: 梨箒星
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第14話 首飾りの紋様

 朝日が昇る。

 森林諸国の港の朝は早く、照らされた海面に浮かぶ多くの色様々な船。

 漁師は大きな網を抱えて船に乗り込む。

 最も大きい桟橋には白く塗られた旅客船。

 蒸気帆船の煙突から黒煙が立ち上がり、桟橋と船の間に架けれたボーディング・ブリッジを歩いて続々と人が旅客船に乗り込んでいる。

 この旅客船は西の大洋の先『アスティラヌ大陸直行便』らしい。

 まぁ、今のバレンには関係の無い話だ。

 市場で日用品を買いに来たのだ。

 まだコゲドリは帰ってきていない。

 ステートアイズランの時も1週間は帰ってこなかった、今回もそんな感じだろう。

 

「おう、そこの……旅人かね」

「行商人です」

「まぁどっちでも同じだ。最近物騒だからな、自衛の武器買っていかねぇか?」

「いや、間に合ってる……だが物騒と言うには平和な雰囲気だが」

「物騒な時ほど人はいつも通り過ごしたがるものよ。 それに、そんな原因が悪魔狩りとかいう……まぁ単なる人殺しの集団が関わってるとなればどんな者でも対処のしようがねぇ。それこそ、その道のプロでもない限りな」

「その道のプロ、対悪魔狩りの騎士団か」

「なんだ、知ってるのか」

「会ったことなら」


 商人のおっさんから自衛の剣……は流石に魔法剣士ではない魔法使いにとっては扱いにくいので、汎用性の高い小さなナイフを三本買った。

 買い物を済ませ、宿に戻ろうと市場を歩いていると、肩に強い衝撃が走る。

 人混みの中とはいえ強すぎる。

 

「なっ、自分なんかしたか?」


 ぶつかり主の方を向くと急いで走る黄緑の長髪の子。

 耳はとんがっており、眼鏡をかけている。

 真紅の金縁ローブを身につけたその子は、人混みを縫うように走り抜け、大通りから姿を消した。


「……なんだ?」


 見失ってしまったので声もかけれず、また歩き出そうとした時。


ドンッ


 またぶつかってきた。

 今度は少し背の高めの男で、黒い大ローブに紺色のコート、白いシャツを着た……魔法使いか。

 

「おぉ、すまない。急いでいたもので」


 ぶつかった衝撃で転んだバレンの手を取り、立ち上がるのを手伝ってくれた。

 ふと、ローブからはみ出て胸元で揺れる首飾りが視線に入る。

 

「肩幅が広い故、よくぶつかるもので……」

「その首飾りは……」

「……? あぁ、家紋ですよ。父から受け継いだものです」

「そうか、急いでいたな。すまない」

「いいえ、私はこれで」


 大柄な魔法使いは先程走り去っていった少女の方へ歩いて行った。


「父から受け継いだものなんて嘘だ」


 教会で神父から教えて貰った。

 親を殺した人物を。

 ウロボロスと、ソレをを刺す二本の剣を象った首飾り。

 悪魔狩りの紋様だ。

 バレンはすぐに男を追う。

 

 

「メリナス・ルレアさん……逃げられては困る。 話を聞きたいだけなんだが」

「悪魔狩り……」

「そうだよ、悪魔狩りだよ。いや話を聞きたいんだが。じゃないと他の連中もお前を殺りに来るぞ」

 

 ルレアは小杖をスカートのポケットから素早く取り出し、その先端を男に向ける。

 男はハッとして、同じくローブから杖を取り出す。

 

 「待て、ここでブッパなすと街が混乱する。 やめておけ」


 そこへバレンがやって来て、男の背中に杖を向けた。

 

 「……正気かよ。 背中を刺される前に言っておこう、お前、殺しはした事あるか?」

「してないわよ」


 男はそうか……と一言。

 

「んじゃ、背骨痛めたくないから逃げる」


 男は目眩しの魔法で姿を消す。

 

「あっ!待て!」


 バレンが叫ぶ頃にはその姿はなかった。


「ありがとうございます……助かりました」

「……うん、なんか違和感が。 知ってる悪魔狩りと違うぞ?」


 彼女の名前はメリナス・ルレアと言うらしい。

 何故追いかけられていたか、経緯を聞いた。


「はい、家に帰ったら両親が血塗れで倒れてて……駆け付けた時には既に息はありませんでした。 それで役所に連絡しようと家を出たら目の前にあの悪魔狩りが」


 

─数時間前─

「早く誰か呼ばなきゃ……」

 

 ルレアは扉を開ける。

 何かぶつかるような衝撃と共に目の前に立ちはだかる男。

 胸元の首飾りには悪魔狩りの紋様。


「イテ……あっ 少しお伺いしたい。 この家から死臭が……ってお、おい!待て!」

「悪魔狩りだ……殺される……」




「なるほど…… 家に案内してくれませんか? 悪魔狩りは自分の親の仇でもあるので、手伝える事があれば」

「良いんですか?」


 港市場から少し奥の街、ここら辺は定期便や輸送業で儲ける商人が住み、裕福な家庭が多い地域だ。

 ザ、豪邸……という程では無いが、庭持ちのマンション アパートでは無い二階建て以上の大きな煉瓦造りの家が建ち並ぶ。

 その通りの一部に人が集まり、ある家の門を塞いでいた。

 

「……!」


 ルレアはそこに駆け寄って、人混みを掻き分ける。

 庭には布で包まれた2つの何か。

 その傍らで啜り泣く黒長髪の子、焦げ茶色のローブ裾を庭の地面に広げて膝から崩れ落ちるように座っている。

 

「レーフル!」


 その声に気が付いたのか、見上げるように振り向く。


「ルレア……」


バレン「結局……護身用武器買わされちゃったよ」

ルレア「……チョロい。無いよりはマシかもしれないけど」


次回 縁

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