表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様に殺された!  作者: 猫めっき
38/82

のどかな戦争


いつもの様に市場へ向かうと

何やら騒がしい。


行きつけの八百屋に

顔を出すと

主人がせわしく

奥さんに指示していた。


「あとは任せていいか?」


「あいよ、行っといで。

久しぶりの戦争なんだから

楽しんどいで!」


何やら物騒な話だ。


「何かあったんですか?」


御主人に声を掛ける。

こっちへ振り向くと

ニヤニヤしながら


「戦争だよ、戦争。

戦争に参加するんだ。


これから向かう所さ。

どうだい、兄ちゃんも来るか?」


至極楽しそうである。


「戦争ですか? 

危なくないんですか?」


「兄ちゃんは、戦争を知らないのか。

面白いぞ。

俺達は農民兵だから

ただの数合わせさ。


もちろん剣は持つが

それは貸してくれるし

見た目の恰好だけさ。


実際に戦闘に参加する事は無いよ。


城の兵士だけが戦うから

俺達は弁当を食べながら、

それを見物する訳さ」


何やら面白そうな話しである。


「連れてってください。

自分も参加してみたいです」


「今から行けるか?

すぐに参加しないと、

戦場まで時間が掛かるんだ。


行ったら終わってた、では

日当も弁当も出やしねえ」


「大丈夫です。このまま行けます」


勢いで、自分も戦争に参加する事になった。



*********************************************



集合場所の広場には

もう大勢の人が集まっていて

関心の高さが伺える。


というか、どうも物見遊山の様だ。


正面にはリーダーらしき兵士がいて

その脇には貸し出し用の剣が

準備されている。


「それぞれ剣を受け取ったら

人数ごとに一団として

戦場に向かって頂きます」


八百屋の御主人を真似て

剣を受け取ると

ベルトを巻く。


自然と剣が腰に落ち着いた。


どんな剣だろうと抜こうとすると、

抜けない。

どんなに頑張っても

抜ける気配すら無い。


「兄ちゃん、無理無理(笑)

多分錆付いてるよ。


抜けなくても良いんだ。

別に俺達が戦う事は無いんだから。

見た目だけだよ」


笑って声を掛けてくれる。

何とも呑気な話だ。


剣を付けて一団に並ぼうとすると

腕を引っ張られる。


「兄ちゃんはこっちこっち。

御得意様だから、一緒に連れてってやるよ」


そう言うと、一団とは別の方向へ

連れて行かれる。

一緒に向かった先には

乗合馬車が用意されている。

もう何人かは、既に乗っかっていた。

御主人は中の人達に挨拶すると


「今回も宜しくな。

それから新入りだ。うちの御得意様だ」


「新入りか。珍しいな」


中から声が聞こえて来る。

どうやら常連の様だ。


「若いの、宜しくな」


馬車の中から、次々と声が掛かる。


「これで揃ったかな。出発するか」


御主人の後に、乗合馬車に乗り込むと

ゆっくりと戦場に向けて

馬車は動き始めた。



***************************************



戦場へと向かう道すがら

この世界の戦争について

気のイイ親爺たちが説明をしてくれた。


戦争にはルールが有って

仕掛ける側が

その戦争の目的を前もって口上する。


受ける側が後日

戦闘方法と日時を指定する。

拒否する事は出来ない。

それは降伏する事を意味し

向こうの条件をを丸呑みする事を意味する。


戦争が行なわれる場所は

受ける側が指定する空き地。


大体は見晴らしの良い荒れ地が

指定され

農地が使われる事は無い。


戦争は農民に優しいのだ。

そうしなければ

国王が国民に、そっぽむかれてしまう。


進軍した両軍が向かい合って

対峙したところで

先ず、兵士の相殺が図られる。


軍の前方にいるのは

大抵農民兵だ。

その後ろには、傭兵の一団。


この兵士達は

基本戦わない。

見た目だけの兵士である。


傭兵も同じ。

実力の有る高給取りの凄腕なら

話しは違うが

一般的な傭兵は

手を抜いて戦おうとはしない。

安日当では

怪我をしたら元も子もない。

極力戦闘は手抜き。


それは相手軍も同じ。

農民兵なら尚更だ。

戦争で怪我でもしたら

仕事が出来なくなる。

大切なのは農作業。

戦闘では無い。


ましてや死亡でもした物なら

国王への非難が殺到し

暴動も起きかねない。

何処の国でも

その事情は同じである。


長い間の戦争の変遷を経て

農民兵と傭兵の大多数は

数合わせの見せかけとし

相殺が慣習化された。


言わば体裁を保つ為の

お飾りである。


このお飾りは

戦場に於いて最終的には

人垣となり、コロッセウムを造る。


観客であり、壁であり、時には審判となる。


両軍の農民兵と傭兵は

手弁当と日当付きの観客なのだ。


その説明を聞いて

ホントにのどかな戦争だと思った。


「だからよう。

戦うのは両軍の兵士だけなのさ。

俺達はただの見物」


楽しそうなのも

もっともな事なのである。


「で、何処の国が戦争を仕掛けて来たんだ?」


誰かが声を掛ける。


「ドード王国!」


「ドードか。そりゃ負けるな、うちは!」


「あそこは、最近伸して来た所だろう。

何でうちなんかを標的にする?

大した財産も無いのに」


「戦争の名目は何だ?」


「神々の森の、大規模調査らしい。

多分、是が非でも入って見たいんだろう」


何やら聞き捨てならない言葉が出て来た。


「神々の森ですか? どんな目的ですか?」


その問いに、物知り顔の一人が

答えてくれる。


「あの森は、

この辺りでは唯一手付かずの森なんだ。

森の中を知る者はいない。


中には神獣や魔獣がいると言われている。

見方を変えれば、宝の森にも見える。

財宝が隠されている噂も有る。

それが目的なのさ」


「でも、そう簡単には入れないのでは?

魔獣がいるでしょう!」


「普通なら、な。


でもあそこの国は、やる事が荒っぽい。

調査団と言ってるが、数百人規模で

調査を行いたいっていう話しだ。

名目は調査だが

第一の目的は

おそらく派兵・戦争への足掛かりだろうな。

二番目が森に有ると言われている

神々の財宝。

これは噂でしかないが。

だから神獣、魔獣なんてお構いなしさ。

あまり気にしていない。

森の最大の敵は何か知ってるか?」


「最大の敵ですか?」


「火事さ。あの国は時に荒っぽい事をする。


どうにもならないって思ったら

火を付けて焼き払う。

その後でこれも調査です、なんて言う方法も有る。

それ位の事をしてくる国なのさ」


結構ヤバそうな国である。


「しかもあそこの国の兵力は別格だろう?

うちの国王軍で勝てるのか?」


「先ず無理だろうよ。兵士のタマが違うから」


「となると負けか?」


そこへ先ほどの物知り顔が

口を挟んだ。


「どうやらそうでも無いらしいぞ。

国王が各領主に伝令を飛ばしたらしい。

騎士団長クラスも終結するそうだ。


何でも神々の森、というのが問題になったらしい。

どの領主も、精鋭を出すという噂だ」


「だったら、結構いい勝負になるかも知れないな」


どこまでも呑気な親爺達である。


でも、自分としては

いいタイミングでこの戦争に

加わる事になった。


この戦争に負ける訳には行かない。

最悪神々の力を使ってでも

負けは阻止しなければならない。


神々の力を使う心算は無いが

この一件は

公私の公、である。


どれだけ神々の力を使おうが

全く問題は無い筈だ。

文句が出る筈も無い。

事は神々の森の問題なのだ。

醸造所が有るのだ。

神殿も有る。


厄介の種は

早めに摘み取るに限る。

まあそれでも、神々の力を使う事は

ギリギリまで避けようと思っている。

そこは臨機応変に対応しなければ

ならない。


“使っても、事後報告で済むだろう。

最初から大騒ぎする理由も無いし”


後手後手に成れば成程

面倒事は大事(おおごと)になる。


それだけはどうしても避けたい。


目に見えぬ加勢を

どう施して行くか。


“まあ、魔法を使う事になるんだろうな”


乗合馬車に揺られながら

その策を練る自分だった。



***************************************



無事に戦場に着くと

隊列を組まされる。

綺麗な隊列が出来上がった所で

進軍開始。


でも、ものの数分で終わった。

敵国の隊列が、既に目の前にいる。


両軍の伝令が

先頭に立ち

それぞれ口上を述べると

双方の伝令が大きく腕を上げる。


そうして

すぐに隊の後方に下がって行った。


それと同時に

両軍の農民兵と傭兵だけが

中央へと進軍し

両軍の兵士がごちゃごちゃになった所で

やがて四方八方へと散らばって行く。


どうやらこれが

農民兵と傭兵が

戦っている(てい)らしい。


八百屋の御主人に引っ張られ

自分も外側へと歩いて行く。


両軍の農民兵と傭兵が

コロッセオの様な大きな丸い壁状に

囲みを造った所で

おのおのその場に座り始めた。

人垣のコロッセウムの完成である。


座ったらもう既に、お弁当タイム。

陣地から弁当が

自軍の兵士に配られていた。


この人垣は

敵味方関係が無い。


おそらく左右に分かれていたら

血の気の多い奴らが

喧嘩を仕掛けるに違いない。

だからこそ

両軍の農民兵や傭兵が入り混じって

人垣を作っているのであろう。


やっぱりのどかな戦争で有る。


配られた弁当を見ると

思ったよりその中身は、結構充実している。


「いいお弁当ですね。

もっと安っぽいと思ってました」


「そうだろう! 

お弁当が良く無いと、人が集まらないから。

戦争では、どの国も結構奮発するんだ。


これに日当が付くから、止められないのよ」


嬉しそうに笑っている。

確かにこれは、

戦争であることを除けば

結構良い娯楽である。

親爺達が行きたがるのも、無理は無かった。



****************************************



対戦の準備が出来たようだ。


今回の対戦方法は、

甲冑剣士による一対一の

勝ち抜き戦方式。


この方法を指定したのは

カデナ王国側。

申し込まれた国に

戦争方法の選択権が有る。


総勢30対30の勝ち抜き戦で

片方の戦士が

ギブアップ、もしくは戦闘不能で

勝敗が決まり

次の戦士に交代する。

先に30勝した方の勝ち。


戦闘不能の定義は簡単で

立ち上がれなければ

その時点で負けが確定し

退場。


殺し合いでは無いので

とどめは刺さない。


勿論、打ち所が悪ければ骨折

死亡する場合も有るけれど

今回の戦争では

殺しは目的では無いので

自重しなければならない。


もしその約束が破られたら

どうなるか。


それは

紳士協定に反するとして

有無を言わせず

他国全てからの

軍事介入をされる事になる。

友好国とか有っても

助けてくれる国は

一切無い。


紳士協定は、それ程に重い。

どんな場合でも

紳士協定を反故にした時は

その国自体が

世界から排除される運命に有った。


勿論介入に

抵抗しても良いのだが

負けは目に見えている。


今回は

こういう戦争方法が

選択出来たのだが

国の全権を掛けた戦い

総力戦を選択した場合は

それは全面戦争を意味し

農民を巻き込んだ

悲惨な戦争となる。


それは攻める側にも守る側にも

メリットは殆ど無い。


間違い無く

国民からそっぽ向かれてしまう。

支持される保障は無いのだ。


全面戦争は

他国からの援助、協力が許されるが

それには援助する国にも

リスクが付き纏う。

協力国と確定した時

その国が

全く関係の無い他国からの

全面戦争を申し込まれたら

それもまた断れない。


他国にとっては

その国の兵力が二つの戦いに分散するので

攻め込むには絶好の機会だし

損害も軽微で済む。


二国間の全面戦争は

時に全ての国を巻き込んだ

勢力図の改変を

意味しているのである。


それ故に

紳士協定が前提での

この限定戦争が

有る意味最も安全で

他国の介入も無い

リスクの少ない戦争方法でもあった。



***************************************



いよいよ対戦が始まった。

両軍の先鋒が対峙する。


しかし

先鋒戦は敵国の兵士の一撃で

あっけなく終わってしまう。

その途端、周りからは溜息がこぼれた。


最初は何が起こったのか

良く分からなかったのだが

敵の先鋒は

かなりの手練れの様である。


こちらの2,3,4,5人目まで

あっけなく一撃で敗れて

戦闘不能になった。


「やっぱり敵さん、強えや。


この調子だと、こっちの兵士は

先鋒に半分ぐらいはやられるんじゃないか?」


そんな声が

会場のあちこちで聞こえて来る。


敵軍を見ていると

体格の良い猛者が集められているのが

良く分かった。


でも、

なんかこっちの兵士の

動きが鈍い。


相手軍を見渡して見ると

物陰に隠れてはいるが

3人ほど

タクトを握ってフードを被った

参謀らしき人影が見える。


6人目の兵士が敵の先方と対峙した時

その内の一人のタクトが

振られたように見えた。


途端に6人目の兵士の動きが悪くなる。

そして、あっけなく敗けた。


“魔法士が()けてやがる”


確かにこの方法ならば

戦いを有利に導く事が出来る。


しかし、それはズルだ。

でも残念ながら

自軍にそれを見破る人材はいそうにない。


あの魔法大会を見て、そう確信している。

この戦いで

有能な魔法士の参謀は

こちらの軍にはいないのだ。


敵国の魔法士が優秀なのである。

人の動きを止める魔法。

残念ながら

こちらにそのレベルの魔法士はいないので

その魔法を見破る事も

阻止する事も出来ずにいた。


7人目の戦士が中央に進み出た時

一人のタクトが揺れるのを見て

魔法士三人に向かって

動きを止める魔法を

こっそりと目立たぬように投げつけて見る。


その魔法士の三人は

金縛りにあったように

首から上だけを動かし

慌てふためいていた。


ついでにタクトも破壊する。


自軍の兵士の動きは、普通に戻った様だ。

前の6人とは違う。

それでも

7人目の兵士はあっけなく敗れて行く。


“弱い、弱すぎる!”


これでは

面倒の種を摘み取る事が出来ない。


次の兵士も、その次の兵士も

その動きを見ていると

希望が持てそうに無い。


その後ろを見ると

体力が有りそうで動きだけは良い

若い戦士がいる。


“コイツは使えそうかな?”


その次には

体格の良い女性戦士もいる。


『どっちがいいのかなぁ?


よし、決めた!』


その戦士の出番が来るのを

じっと待つ。

そして遂に

その兵士の順番が

回って来たのである。



**************************************



戦場から帰る

乗合馬車の中では

先ほどの戦いの話しで

親爺達が盛り上がっていた。


「まさか30人抜きの兵士が

うちの国にいるとは思わなかったぞ」


「ホントにそうだよな」


「兄ちゃんには、世話に成ったな。

俺達は大儲けだ!」


親爺達が笑顔を向けて来る。


「兄ちゃんを信じて良かったぜ。

奢ってやらなきゃな」


「だったらうちの店に来て飲んでってください。

その分安くしますから」


「あの人気の店か? 入れるのか?

だったら、これからみんなで繰り出そうか」


「それもイイな。ぱっとやるか」


兎に角楽しそうである。



こういう戦いに於いては

必ずと言っていい程

賭け事が始まるのは当然の成り行きだ。


対戦が始まる前から

もう既に声が掛かっていたのだが

ドード王国の有利、と見る向きが多数で

最初は賭けが成立していなかった。


自国の戦士で

誰も勝てそうなヤツが

いなかったからだ。


そこに若き戦士

マークの登場である。

期待の若手戦士。

自分がこれは使えそうと思った戦士だ。

その次の女性戦士でも良かったのだが

それはこの戦士が

敗れた時の保険。

自分にとっての次鋒である。


相手の魔法士がズルをしたのだ。

こっちにも当然の権利がある。


ここは先ず

自分が先陣を切って

賭けに参加しなければならない。


が、ここでひとつ疑問が起こる。


「掛け金って、どう払うんですか?

お金が国で違いますよね。

誰か両替でもしてるんですか?」


連れて来てくれた親爺に訊ねた。


「兄ちゃんは、他国の商人と

まだ取り引きした事が無いのか。


こういう時には、豆金粒銀(まめきんつぶぎん)

使うんだ。

どれ、オレが交換してやろう。

どれ位今現金を持ってるんだ?」


そういうので

今日持っていた仕入れの金を全て見せると

その親爺は、それに見合う豆金粒銀と交換してくれた。


豆金2つと、残りは全て粒銀だった。


「これで掛け金を支払えばいいのさ。

レートは胴元が把握しているから

いくら出せば賭けが成立するかは

向こうが判断してくれる。

それに見合う金額を出せば成立だ」


今回は一人で

この一戦の賭けの全てを

マークの勝ちで引き受ける事にした。


賭けの初めての成立である。


誰もがその無謀な賭けに

笑っていた。

一緒に来ていた親爺達も

同じであった。


で、結果は自分の一人勝ち。

マークが一勝を挙げたのである。

しかも一撃で。


自分に大金が入ったのを見て

周りの親爺達の目の色が変わる。


次の戦いにも

自分がマークに賭けているのを見て

それに乗っかる人が

何人か出て来た。


一緒に来ていた親爺達は

それでも様子見を決め込んでいる。


またまたマークの勝ち。


さらに金額を上乗せする。

賭けが成立するので

参加する人数も

どんどん増えて行った。


そこからは一緒に来ていた親爺達も

賭けに参加し始める。

マークに賭けている訳では無い。

大金を手にしている自分に

乗り始めたのだ。


自分のやっている事は、ズルである。

勝って当然。

使える魔法はすべて使って

勝つように仕向けている。

マークの体が持つ間は

マークに勝って貰う。


その為の手助け。

相手を一撃で倒させる。


ある対戦相手の剣速が早かった時には

少しビビったが

(自分がちょっと目を離してしまった時だ)

マークの前進速度を

一瞬だけ10倍にして

体当たりさせた時は

ホッとしたものだった。


その体当たりで相手が吹っ飛んで

戦闘不能になったのだから。

結局それも一撃で一勝となった。


親爺達も

みんな有り金を賭けているのだから。

負けて貰っては困るのだ。


どうせマークが負けるのなら

切りの良い時でないと・・・。


マークの10人抜き辺りから

相手兵士のレベルが

かなりのモノに成って

賭けはどんどん面白くなって行く。


誰もがマークはその内

負けるだろうと思い始めたからだ。


それでも自分は

マーク一本で有る。

負ける時は、自分で決める。

限界が来たなら

その時は負けさせて休ませてあげよう。

倒れたら動かぬ様

魔法で寝かせておけば良いのだ。

立ち上がらなければ、負けとなる。

怪我はさせたくない。

それまでは勝たせる。


“ズルだよなあ”


親爺達は、相変わらず自分に乗っていた。

でも掛け金は、様子見の金額。


“うん、正解”


別に相手に賭けてくれても良いのだが

勝ち馬に乗るって言うのは

有る意味間違いでは無い。


マークの20人抜き辺りから

賭けは最高潮に達して行く。


マークを見ていると

まだ体は大丈夫みたいだった。


21人目からは

賭けのレートが

五分五分になって行く。


流石にこの辺りからは

並みの戦士では無くなり

マークの体力も

限界に近付いて来た。


どんな剣の達人でも

それなりの対戦相手ならば

7,8人目辺りから

負ける要素が出始めるのが

一般的だ。


気力、集中力は残っていても

体力と判断力が鈍って行くのが

通例だからだ。


偶然の要素も加わって来る。

剣を持つ手にも限界は来る。

握力は当然落ちて行っている筈だ。


剣を落とす可能性も当然有る。


ここからは

自分の魔力でどこまで援助できるか

そういう戦いにもなって行った。


実際に戦っているのは

マークなのだが

本当に戦っているのは

自分の魔法力である。


この力を上手く調整し分散する事にも

徐々に慣れて行った。


立たせて

剣を落とさせないようにして

剣の軌道を変え

体をぶつける方向を考え

そのスピードを上げ

一撃で倒すタイミングと破壊力を

マークに与える。


マークの動きと

自分のイメージを

シンクロさせる事に成功すると

後は簡単だった。


ポンとエンターを押す気分である。

で、パタって敵の兵士が倒れる。


最後の方の戦士は

マークより一回り大きかったのだが

結果は同じであった。


対戦相手が

最後の一人になると

人垣のコロッセウムは大盛り上がりで

賭けも最高潮。


その一人も

マークが一撃で倒した時は

敵味方関係無く

万雷の拍手に包まれた。


英雄が誕生した瞬間である。


その一方で

こっちはっていうと

張り詰めていた緊張感から

解放されて

ホッと一息ついた。


戦いは

カデナ王国の勝利で

無事に終結したのであった。



*************************************



店に帰り着くと

戦争参加組の親爺達で

店は貸し切り状態になった。


一人硬貨4枚で

飲み放題食べ放題にする。


勿論それでは

本当は足りないのだが

賭けで手に入れた泡銭(あぶくぜに)が有る。


その金を全て

店の売り上げに計上する。


これで店のスタッフの給料として

使える金になった。


だからきっと

仕事をサボって戦場に行った事も

御目溢ししてくれるだろう。


売り上げに成ったんだし

沢山の客も連れて来たんだし。


きっとこれでまた

常連客も増えるに違いなかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ