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二人暮らし

 読んで戴けたら倖せでございます。

 家はかなり街外れにあった。


 辺りに民家は(まば)らで、広い庭に車を止めた。


 瑞基は隆一朗の肩に捕まりながらケンケンでテラスに上がり家の中に入った。


 スイッチに触れると、シャンデリアが部屋を明るく照らし、白い布で覆われた家具が浮き上がった。


 隆一朗はソファーとおぼしき家具の布を取ると、瑞基を座らせた。


「凄く大きいよね

 日本の住宅事情が(わび)しく感じるね」


 瑞基は室内を見回して言った。


 隆一朗は室内をあちこち見て回ると言った。


「こっちは寝室みたい

 今日はもう休もう

 明日、掃除して住みやすくするよ

 薪って外にあるのかなあ」


 隆一朗は外を気にして言った。


 隆一朗は車から荷物を運び入れると、家の傍の物置小屋の横に積み上げられた薪を何本か持って来て暖炉に火を点けた。


「明日はここから少し行った処に市場があるみたいだから、食料を調達に行かなくちゃ」


「隆一朗、ごめん

 オレ、何もできなくて」


 瑞基は申し訳なさそうに言った。


「治ったら、濃き使うから安心して」


 隆一朗は笑った。


 おそらくニコルの両親の寝室なのか、ダブルベッドが置かれた寝室で二人はベッドに潜り、話していた。


「瑞基、後悔してない? 」


「どうして? 」


「こんな見も知らない街でボクと二人きりだよ」


「オレとしては望む処だよ」


 瑞基は起き上がると、隆一朗の首から指輪の鎖を外して指輪を隆一朗の左手の薬指に()めた。


 隆一朗もそれに(なら)って瑞基の左手の薬指に指輪を嵌めた。


 隆一朗は微笑んで瑞基の頬に指をなぞらえた。


 瑞基はその指に頬ずりした。


 兄弟と知っても、それを真実として受け入れる事ができなかった。


 どうしても抑える事はできない。


 触れ合うだけでもっと触れ合いたいと思ってしまう。


 口付けたいと思ってしまう。


 肌を重ね会わせたいと求め合ってしまう。


 どれほど背徳の罪悪感に(さいな)まれようとも、愛し合いたいと求め合ってしまう。


 二人は手を重ね合わせ指を絡めた。


 口唇を愛撫しあった。


 それだけで、身体が熱く火照る。


 互いの背中に手を這わせ、ゆっくりと愛撫を繰り返した。


 長く深いキスを繰り返し、瑞基は(あえ)ぎながら隆一朗の髪に指を埋もれさせ、隆一朗の髪に口付けた。


 隆一朗は呼吸を乱して瑞基の首にキスを繰り返し、二人はベッドに倒れ込んだ。


 溶け合うように抱き合い、絡み合った。


 二人は兄弟であると云う真実を振り払うように夢中で愛し合った。




 朝早く隆一朗は市場まで行き、食材を調達した。


 帰っても、疲れているのか瑞基はまだ眠っている。


 隆一朗はキッチンに立って、朝食の支度を始めた。


 瑞基は目が覚めるとベッドに隆一朗が居ないので、服に着替えると車椅子で隆一朗を探した。


「隆一朗? 」


 キッチンから水の流れる音がして隆一朗が姿を現したので瑞基は安堵した。


「隆一朗に時差ぼけって言葉ないの? 」


「さあ、自然と目が覚めたから」


 隆一朗は拳を口にあて軽い咳をした。


「風邪? 」


「どうかな、別に身体が怠いとかは無いけど

 今、カナッペ作ってるんだ

 もう少しでできるから待ってて」


 瑞基はその間、車椅子を操作しながら家具に掛かった白い布を剥ぎ取り畳んだ。


 隆一朗は寝室のクローゼットから毛布を何枚かを持って来ると暖炉の傍のソファーの前に敷いた。


 隆一朗は満足げに敷かれた毛布を見て、腰に手をあて言った。


「こんなに広いとかえって落ち着かないね

 ここで食べない?

 あ、テレビつけないで、フランス語はもう沢山」


 そう言いながらキッチンへ行った。


 瑞基はクスッと笑った。


 隆一朗はお盆のような大皿に色とりどりのカナッペを載せて、それをソファーの上に置くと床に敷いた毛布の上に胡座をかいて座った。


「隆一朗の料理なんて、すっごい久し振り

 今思い出すと懐かしいよ、毒々しいミートパスタとか、赤ワイン入りの凄い色の野菜の煮付けとか」


「なんなら、作る? 」


「いや、遠慮しとく

 あれはほんと、いつも衝撃だったから」


 隆一朗は咳をした。


「やっぱ、風邪ぎみだよ

 あったかくしなきゃ」


「そうだね」


 隆一朗は腰に毛布を当てると端を膝の上に掛けた。


 瑞基は食べるのを止めて言った。


「どうして、こんな事になっちゃったんだろう

 なんだか、凄く遠くに来てしまった

 どうして、あの隆一朗のアパートでずっと二人で暮らすことが出来なかったんだろう

 そしたら、オレたちが兄弟……………」


 隆一朗が瑞基の口に人差し指を立てた。


「それ、禁句ね」


 瑞基は隆一朗の顔を見詰めた。


 そして微笑んだ。


「隆一朗が傍に居るならいいや」


「申し訳ないと思ってる

 ボクのわがままで瑞基の総てを奪ってしまった」


「オレはそんな風に思ってないよ

 ずっと言ってる、隆一朗以外何も要らないって」


「本当は、その言葉に甘えちゃいけないのにね

 ボクもどうかしてる」


 隆一朗は遠くを見ていた。


「隆一朗! 」


 瑞基は隆一朗の手を掴んだ。


「どうかした? 」


 隆一朗は不思議そうに瑞基を見た。


 瑞基は不安な顔で言った。


「いま、隆一朗がそのまま消えちゃう気がした」


 隆一朗は笑って言った。


「瑞基、疲れてるね

 これ食べ終わったら、ゆっくりするといいよ」


 瑞基は掴んだ手を離すことができなかった。


「傍に居てよ、オレが安心するまで」


「いいよ

 時間なら沢山ある」


 隆一朗は瑞基の手を握った。


「隆一朗だって、オレと一緒に居ることを選んで総てを失くしたよ」


「ボクに失くすものって瑞基しか無いよ

 いま、冷静になって考えると、結局ボクは瑞基を振り回してただけだった気がするよ」


「オレはそう思ってないけど、でも、結果的にオレはそれで色んな事を得た

 辛い事いっぱいあったけど、それでも隆一朗と離れる以上に辛い事は無かった」


「そう、ボクは瑞基に、(いたずら)にエゴを強いてただけだった」


 隆一朗は握っている瑞基の手に力を籠めた。


「ボクが一番キミに愛されてる事に甘えてたんだ

 離れる度、心の何処かでキミが追い駆けてくれるのを待ってた気がする


 瑞基が居なければボク自身、自分をどうコントロールしていいのかさえ解らなかった

 瑞基を一番必要としていたのはボクだったのに」


「どうしたの?

 懺悔? 」


「そう、懺悔

 莫迦(ばか)な話だけど、こうして自分の気持ちに正直になって初めて自分が見えて来た」


 隆一朗は車椅子に座る瑞基の膝に頭を載せた。


「こんなにも一緒に居るだけで満たされていたのに」


「隆一朗………………」


 瑞基は隆一朗の頭に手を置いて髪を撫でた。


 隆一朗は目を閉じて言った。


「愛してる

 どうしようも無いほど」


 瑞基は隆一朗の髪を撫で続けた。



 

 部屋の掃除が終わると二人は裸になって風呂に入った。


 瑞基がシャワーの下で壁に手をついて立つと隆一朗は瑞基の身体を洗い始めた。


「隆一朗に身体洗って貰うの二度目だね」


「そうだね

 あの時は面白かった

 寝てる処に水掛けたら瑞基が奇声上げて立ち上がって」


「酷いよね

 オレ、何事かと思ったよ」


「あの後、服のままくたくたになるまでお湯掛け合ったよね

 凄く楽しかった」


「あの後確か、朝まで喧嘩したんだよ

 隆一朗も凄いムキになってさ」


「キミ、ピーマンの話まで持ち出して」


「そうそう、その日の晩御飯が毒々しいミートパスタでさあ

 隆一朗、意地になってピーマン食わし捲るから、オレ今ピーマン食えるようになっちゃった」


「そう言えばそうだね」


 隆一朗は笑った。


 洗い終わると瑞基はバスタブに腰掛け隆一朗が洗い終わるのを待った。


 瑞基は、泡が隆一朗の白い肌を滑り落ちるのに見惚れていた。


「瑞基、そんな事してたら風邪ひくよ」


「隆一朗に見惚れてた」


「莫迦だね」


 隆一朗は笑って、中指と親指で瑞基にお湯を飛ばした。




「夜は何にしようか」


 ソファーに座り、手を後ろについて両脚を伸ばしながら隆一朗は天井を見て言った。

「えーと、何があるの? 」


 瑞基は車椅子を前後させながら言った。


「何があったかなあ」


 隆一朗はキッチンに行った。


 瑞基はその後に付いて車椅子のタイヤを押した。


「できれば日本食がいいな」


「日本食ねえ…………

 お蕎麦は? 」


「蕎麦なんて売ってたの? 」


 瑞基は目を丸くした。


「まさか

 持って来たんだよ」


「ワイン入りの蕎麦とか言わないよね」


 瑞基は怪訝(けげん)な顔を隆一朗に向けた。


「よく解ったね」


「え…………」


「冗談だよ

 醤油もみりんも持って来たよ」


「随分用意がいいよね

 何処行くのも身一つで動く人が」


「色々持って来たよ

 お米とか梅干しとか漬物とか……………

 日本の食材売ってる店もあるらしいから、そう云う不便は無くて済むんじゃないかな」


「へーえ

 じゃ、蕎麦がいい」


 隆一朗は大きな鍋にお湯を沸かし始めた。



 夕食が済むと瑞基は食器洗いを手伝った。


 隆一朗が洗った食器や鍋を拭いてしまった。


「ねえ、いっそベッドのマットレス暖炉の前に置かない?

 あそこが一番落ち着くよ」


「そう言えば、昔読んだフランスの小説に浴槽で暮らす男の話があったね」


「浴槽で? 」


「もう内容なんて憶えて無いけど、食事も睡眠も浴槽で取る生活を何年も続けるんだ」


「フランス人て発想が変わってるね」


「ボクもそう思った」


 隆一朗は瑞基を見て笑った。


 隆一朗はダブルベッドのマットレスをズルズルと引き摺って暖炉の前に置くと毛布を掛けた。


 隆一朗はまた咳込んだ。


「隆一朗…………」


 瑞基は心配そうに隆一朗を見た。


 隆一朗は、何でも無いよと言うように肩を(すく)めた。


「この発想って、ちょっと小説的かもね

 居住区域がここだけ

 こんなに広いのに」


 隆一朗は瑞基を居住スペースに座らせると瑞基の前に胡座をかいて座り、タバコに火を点けた。


「そう言えば、こんな小説もあったよ

 言葉が話せない知恵遅れの少女がテーブルの下で自分の世界を作って遊ぶんだ」


「誰の小説? 」


「池田満寿夫」


「誰、それ? 」


「エロティシズムで世界的に有名な芸術家だよ」


「エロいんだ? 」


「うん、凄く

 池田満寿夫は小説や映画監督としても成功をおさめた人だけど、もともとは油絵の画家志望だったんだ


 彼は油絵でも成功をしようと思った矢先に亡くなった

 消えるように死にたいと言ってたように突然、脳卒中で亡くなったんだって

 人って死にかたを選べるのかな? 」


 瑞基の顔が曇った。


「やだな、そんな縁起の悪い話

 だって出逢った頃、隆一朗は凄く死ぬことに|拘《こだわってた」


「拘ってた訳じゃないよ

 逃げたかった、ただ逃げたかった

 でも、できなかった」


 隆一朗は吸っていたタバコを揉み消した。


「オレ哀しかったよ

 あんな哀しい思いしたの、生まれて初めてだった」


「彼女を失った時、何度も死のうとした

 でも、死ねなくて、苦しくてまた死のうと繰り返した

 聖流(さとる)がキレて、病院でボクを殴った

 目にいっぱい涙を溜めて、罪の意識があるなら生きて苦しめって言われた


 初めてだった、あんな哀しい目をした聖流見るの」


「その話、聖流さんから聞いたことある

 そんな残酷な言葉でしか聖詞を繋ぎ留める事ができなかったって、とても辛そうだった」


 隆一朗は俯いて、目を閉じた。


「初めてだよね、隆一朗がその頃の話するの」


 隆一朗は瑞基を見詰めて言った。


「キミが居たから、割り切ることができた

 キミの明るい笑顔を見る度に、いつの間にか夢も見なくなって、気がついたらキミを愛する事に夢中になってた」


「オレのファーストキス奪った時、オレを誰だと思ったの? 」


「それが本当に憶えてないんだ」


 隆一朗は肩を竦めた。


「本当に憶えてないの?

 こんな風にしたんだよ」


 瑞基は隆一朗の口唇に、何度も愛撫して浅く口付けてそっと舌を侵入させた。

 それから、甘く舌を絡ませた。


 瑞基が口唇を離すと隆一朗は目を開いて、驚いた顔を瑞基に向けた。


「高1のキミに? 」


「うん、衝撃だった

 で、もう一度してって言ったらしてくれた

 こんな風に…………」


 瑞基は熱烈なキスをした。


「オレ、思いっきし、勃っちゃった」


 瑞基は笑った。


 隆一朗は頭を抱え込んだ。


「責任感じるよ」


「今更遅い」


 瑞基は手をついて隆一朗に口付けた。


 隆一朗は瑞基の髪に指を埋もれさせて受け応えた。


 瑞基が口付けで隆一朗を押し倒すと隆一朗は瑞基の身体に指を這わせながら背中に腕を回した。


 瑞基は隆一朗のシャツのボタンを外しながら愛撫を肌に這わせた。


 隆一朗は仰け反って呼吸を乱した。


「愛してる」


 瑞基が囁くように言った。


「瑞基…………」


 口唇と舌の淡い感触を長い間楽しむと、愛の深さを伝え合うように深く口付けて抱き締め合った。


 隆一朗は指先を瑞基の敏感な場所に這わせながら瑞基の白いセーターを脱がせた。






 読んで戴き有り難うございます。

 蕎麦茹でるシーンがありますが、フランスの水で蕎麦は美味しく茹であがるんでしょうかね❔

 真実を知っていても内緒にしておいて下さい。笑


 芝桜が咲き乱れて、とてもキレイです。

 タンポポの綿帽子が風に揺れるのが可愛い。

 今日はキングダムが放送されて家族みんなで観ました。

 吉沢亮くんがめちゃくちゃセクシー‼️

 長髪の乱れ髪がめちゃ色っぽくて、観ながらもだえてました。

 銀魂の亮くんも素敵だけど、キングダムの亮くんも萌えだわあ。

 亮くんがいまわのきわに山崎賢人に抱き付くシーンはいけない妄想に陥りそうになりました。笑

 長髪の乱れ髪が色っぽいで思い出しましたが、無限の住人の福士蒼太くんもセクシーでしたねー❗

 才能ある素敵な男の子は生きる糧の楓海です。


 この楓海ってペンネーム、因みに楓はスラムダンクの流川楓から戴きました。

 海は、ヴィストリップと言うヴィジュアル系バンドのサイドギターにしてリーダーの海くんから戴きました。

 あそこのバンドも息の長いバンドで、もはや十年選手です。

 デヴューミニアルバム持ってますよ。笑

 二人とも、男の子にしては可愛い名前だなと戴きました。

 

 因みに私の大好きなDIAURAの達也さんはスラムダンクの大ファンなんですよねー。

 どうでもいい話ですが。笑

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― 新着の感想 ―
[一言] フランスって、同性婚OKだったかなあ。 あ、でも、兄弟じゃダメか。
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