不能
読んで戴けたら嬉しいです。
それから二人は、暫く他愛無い会話をしている間にすっかり打ち解けていた。
隆一朗が深夜の三時になるのに気付くと言った。
「そろそろ寝た方がいいんじゃない?
キミ、学校は? 」
「オレ、家出しても学校行くの? 」
瑞基が呆れ顔で言った。
「キミの歳頃なら学校へ行くのは当然の義務だと思うけど」
隆一朗は真顔で言った。
「冗談きついよ
あんた見た目に依らず真面目くさったこと言うんだな」
「ボクは至って真面目だよ」
隆一朗は少し怒った顔を瑞基に向けた。
普段から表情に乏しい無機質な隆一朗だが、美しい故に怖い顔には迫力が増す。
思わず瑞基は引いた。
「と………、取り敢えず時間も時間だし、寝た方がいいかもね」
瑞基は苦笑いしてごまかした。
隆一朗が着ていたシャツを脱ぎ始めると、瑞基は目を奪われた。
ベックリンの「死の島」をバックに白い背中を露わにした隆一朗は、まるで一枚の絵のように様になった。
だが瑞基はハッとした。
慎一の言葉を思い出したからだ。
『もし、あの噂が本当なら、オレ今、
めちゃめちゃヤバいんじゃ…………』
瑞基は焦り始めた。
「このベッド、セミダブルだから余裕で二人眠れるよ」
振り返りざまに見た瑞基は、上目遣いで、もじもじと落ち着きが無かった。
『ははーん…………
なるほどね』
隆一朗は悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「もしかして、慎一から聞いた?
ボクの噂」
瑞基はギクリとした。
上半身裸の隆一朗はゆっくりと瑞基ににじり寄って来た。
ベッドに座る瑞基の処まで来ると、瑞基の太腿の横に手をつき顔を近付けて来る。
瑞基はたじろいだ。
「今夜は、キミがボクのひと夜限りの恋人だよ」
隆一朗は瑞基の顎に人差し指を当てた。
「まっ…………、オレ………そんな、あの………………」
瑞基はあらん限りの声で叫んだ。
「無理!
無理です!! 」
隆一朗は項垂れた。
「ごめん
オレ、ファーストキスもまだで、せめてそれくらいは女の子がいいって言うか……………
だから…………………………」
「ふふっ」
「え? 」
隆一朗が肩を震わせ、堪え切れず笑い出した。
「ごめん、ごめんね
冗談だから、安心して」
「は? 」
隆一朗は瑞基の横に腰掛けると笑いながら言った。
「あの噂ね
事実無根なんだ」
「え? 」
瑞基は隆一朗をガン見した。
「そんな珍しいもの見る様に見ないで
ボクも何故そんな噂が実しやかに流れてるのか不思議なんだ
物理的に無理なんだよ
何故ならボクは、完全な不能だから」
「はあ? 」
瑞基はあんぐりと口を開けて驚いた。
「ね、驚くよね
ボクも初めて聞いた時、凄く驚いた」
「不能って? 」
「うん、男として全く機能しない
マスターベイションしなくて済むから面倒くさくなくて楽だけど」
一瞬、時が静止した。
漫画で言うなら白け鳥がアホーと飛んでいるような場面だ。
『不能って、そんなに明るく言っていいんですか』
瑞基は気を取り直して訊いてみた。
「でも、火の無い処に煙は立たないって」
「その火には、心当たりがある
一晩話相手してくれそうな人に声掛けてるからだと思う
ライヴの後の空虚感て耐えられなくて」
瑞基は大きな溜め息をついた。
その溜め息が隆一朗とリンクしたので、二人は笑い出した。
「………でも、この部屋に入れたのはキミが初めてなんだ
大抵は一晩中やってるファミレスなんかで話をして過ごすんだけど、何故かな?
キミだけは初めて目が合った時から特別な感じがしたんだ」
「ふーん」
そう言われて瑞基は悪い気はしなかった。
ただ、隆一朗が不能になった理由が気になったが、それはまた隆一朗の哀しい過去を思い出させる事になりそうだ。
瑞基は沈黙した。
読んで下さり有り難うございます。
この間、大好きなナインインチネイルズのフィクスドと言うアルバム聴いていたら、もの凄い前衛音楽でした。笑
大抵の変わった音楽に対応可能な私の耳も悲鳴あげました。笑
リズムとかも無視でぎゅーんきーんて騒音スレスレで。
そう言えば私、ナインインチネイルズの中心人物トレント・レズナーって見たこと無くて、一人でアルバム編集に二年掛けたとか、全パート自分でやったとか聞いてて、きっと神経質なほっそりした男なんだろーなーって思い描いてたんです。
で、先日中古CDにDVDが付いてて喜び勇んで見たら、トレント・レズナー……………………
筋肉ダルマでした。笑
ざけんな、このやろーと笑いました。笑