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愛してる

 読んで戴けたら倖せです。

 隆一朗が目を覚ますとナイトテーブルに置かれた時計は昼過ぎを指していた。


 六歳年下の恋人は、隆一朗の腕にしがみつく様にして眠っていた。

 隆一朗は倖ぜだった。


 隆一朗は愛おしい恋人の寝乱れた髪をそっと撫で、額に優しく口付けると、起こさない様に静かに腕を抜いた。


 ここ数日、ろくに眠っていない瑞基は小さな声は出したが起きはしなかった。


 隆一朗は素早く服を着ると瑞基にメモを置いて出掛けた。


 隆一朗が出掛けて二、三十分経ってから瑞基は目を覚ました。


 瑞基は隆一朗が居ない事に(おび)えた。


 瑞基はベッドに座ると、頭を垂れて指を組んだまま動けなかった。


 隆一朗が帰ると瑞基は頭を垂れたままだった。


 その苦悩に満ちたオーラを放出させている瑞基の姿を見て、隆一朗は自分がどれほど瑞基を傷つけたのかを思い知らされた。


「瑞基……………」


 瑞基は身体をビクッと震わせ顔を上げて、隆一朗を視界に認めると何事も無かった様に笑顔を見せた。


「おかえり」


「ただいま」


 隆一朗は瑞基の隣に座って買い物袋を床に置いた。


「また、ボクが何処かへ行ったって思った? 」


「思った

 凄く怖かった」


「どうすれば安心できる? 

 ボクはキミに何を与えられるだろう? 」


「ただ、傍に居たいだけなんだ

 ずっと終わりが来ないくらい長い時間を隆一朗と過ごしていたい

 それだけなんだ」


「愛してる

 それだけじゃ、何の保証にもならない? 」


「あ、隆一朗初めて愛してるって言ってくれた」


 瑞基の顔が急に明るくなった。


「言った事無かった? 」


「無いよ

 いま、初めて言ってくれた」


「あんまり当たり前の事過ぎて意識した事無かった」


「そうなんだ」


 瑞基は嬉しそうに笑った。


『そう………………

 この笑顔に、どれほどボクは救われただろう……………………』


「お昼作るよ」


 隆一朗はごぼうと大根の飛び出した買い物袋を持ってキッチンに立った。


「わあ、久々の隆一朗の料理だーぁ」


 語尾が下がった。


「何そのテンションの下がりかたは…………」


 瑞基は笑ってごまかした。


 隆一朗は米を研ぎ始めた。




 ベッドに凭れ、(くわ)えタバコでギターを弾く隆一朗を瑞基はベッドの上に寝転がって見とれていた。


 キッチンから不穏な匂いがしているが、瑞基は敢えてその現実から逃避した。


「ねえ、お昼何? 」


「野菜の煮付けだけど」


「見てなくて、いいの? 」


「煮付けなんて小火で放っておけば勝手に味が染みるものだって、教えてくれたおばさんは言ってたけど」


「ふーん」


 隆一朗は咥えタバコを指に挟むと慎重に灰皿に灰を落としながら言った。


「一年のブランクは(あなど)れないね

 指が上手く動かない」


「でも、そう言うのって身体が憶えてるものでしょ?

 すぐ勘が戻るものなんじゃないの? 」


「そう願いたいけどね」


 瑞基は寝返りを打った。


「こんなにのんびりするのもいいね

 初めてじゃない?

 こんな風にのんびりするの」


「そうだね

 こんなに穏やかな気分で過ごすって事がずっと無かった」


 瑞基は、多分それは隆一朗が彼女の呪縛に囚われていたからだろうと思ったが口にはしなかった。


「そろそろ、いいんじゃないかな」


 隆一朗はギターを置くとキッチンへ行った。


「色がついてるから、いいんじゃないかな」


「隆一朗、そんな不穏なこと言わないでよ」


 皿に盛られた煮付けを見た瑞基に戦慄が走った。


「隆一朗、どう煮付けたらこんな不気味な色になるの? 」


「ああ、赤ワインしか無かったから」


「はあ?

 どうして煮付けに赤ワインなの? 」


「日本酒買うの忘れたから」


 瑞基はテーブルに突っ伏した。


『このままオレ、普通の食生活に戻れなくなったらどうしよう』


 瑞基は真剣に悩んだ。


 瑞基は恐る恐る煮付けを口に運んだ。


『やっぱりぃ』


 美味しくも無かったが不味くも無かった。


「隆一朗って、ある意味天才かもね」


「そうお? 」


 瑞基のスマホが鳴った。


 画面を見ると母、綾子からだった。


「あれ、母さんだ」


 瑞基はスマホに耳をあてた。


「どうしたの? 」


「どうしたの?はそっちでしょ

 また、学校四日も無断欠席して

 先生から電話あったよ」


「ああ、ごめん

 隆一朗迎えに行ってたんだ

 そしたら、隆一朗あっちで肺炎起こして、昨日帰って来たんだ」


「それで隆一朗さんは大丈夫なの? 」


「うん、今元気に昼飯食ってる

 オレも隆一朗の看病で(ほと)んど寝て無かったから今日は休んでた」


「じゃあ、今は二人共元気なのね? 」


「うん、元気」


「じゃあ、今夜こっちに来れない?

 隆一朗さんにも来て貰って、快気祝いって事も無いけど、たまには一緒にご飯食べましょ」


「ちょっと待って」


 瑞基は隆一朗に訊いた。


「隆一朗、今夜晩御飯一緒に食べないかだって」


「ボクも?

 迷惑じゃない? 」


「母さんは隆一朗の快気祝いのつもりみたいだけど」


「ボクの? 」


 隆一朗は笑顔で言った。


「喜んで」


「大丈夫、隆一朗喜んでるよ」


「良かった

 じゃあ、今夜お鍋作って待ってるから」


「うん、じゃあ今夜ね」


 瑞基は通話を切った。


「今夜は鍋だって」


「家庭的な料理だね、楽しみだよ」






 読んで戴き有り難うございます。

 

 今日と明日、午前から忙しいので今夜は夜更かし禁止で、早めに投稿しました。

 実は、今も頭少し痛いです。

 歳には勝てないなあ。

 糖尿病の改善の為、食事制限してるので、踏ん張りがききません。

 お腹が空いてどうこうと云う事は無いのですが、

 順調に体重が減って来てます。

 甘いもの、そろそろ恋しいです。(TT)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 物凄く好い流れです。 前回の良い流れを維持したまま、幸せの真っただ中にいる不安な気持ちと、そのあとの事などが愛らしく。 そこから次の場面に移る、予告的な流れが自然に描けていましたね。 [一…
[一言] ああ、糖質摂れないときついですね。 頭使うと大変ですが、頑張ってください。
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