綾子
読んで戴きましたら倖せでございます。
瑞基の母、綾子は小さなメモ用紙を見ながら、やっと息子が暮らすアパートを見つけた。
昨日の夕方、瑞基が通う高校の担任から電話があった。
この三日間、瑞基が連絡も無く休んでいると云う事だった。
電話をしても出ないので、さすがに気になって行く事にした。
瑞基の強い要望で、綾子はこのアパートに訪れる事が今までできずにいた。
呼び鈴を何度鳴らしても返事すら無い。
綾子はノブを回した。
鍵はかかっていなかった。
「瑞基、居ないの? 」
綾子はそーっと覗き込む様に室内に入って行った。
カーテンが閉められ、辺りは暗くてよく見えない。
「瑞基? 」
「母さん? 」
部屋の奥から声が聞こえた。
綾子は声の方に視線をやった。
瑞基がベッドから上半身を起こして、こちらを見ていた。
「どうしたの、こんな部屋を暗くして
病気になるでしょ」
母のいつもの物言いに瑞基はベッドから降りると綾子に抱き付いた。
「どうしたの?
学校、三日も来ないって先生から電話が来たよ」
「母さん、オレ…………………………」
「泣いてるの?
いったい何があったの? 」
綾子は瑞基を抱き締めると背中を赤ん坊にする様に指で優しく叩いた。
「隆一朗が………………」
「隆一朗さんがどうしたの? 」
瑞基は暫く綾子にしがみついて、声を殺して泣いた。
「とにかく座りなさい」
そう言って瑞基をベッドに座らせた。
「カーテン開けるよ
こんな暗い処に居たら気分まで暗くなっちゃう」
綾子はカーテンを引いた。
久し振りに見る息子は憔悴した顔でかっくり肩を落とし、やつれて見えた。
部屋が散らかっているのが気になったが、まずは瑞基が心配だった。
瑞基は小さい頃から親に涙を見せる様な子ではなかったからだ。
その瑞基が自分を見て泣き出すなど、ただ事では無い。
「どうしたの? 」
綾子は瑞基の隣に座って瑞基の顔を覗き込んだ。
瑞基は重い口を開いた。
「隆一朗が出て行ったんだ」
「出て行ったって、病気は良くなったの? 」
瑞基は頷いた。
「退院の日、迎えに行ったら荷物だけ置いて、どっかへ行ったまま帰って来ないんだ」
「どうして? 」
「解らない」
「解らないって、何か怒らせる様な事でもしたの? 」
「解らない」
「全く、こんな大きな図体して、親に捨てられた子供みたいに、この子は…………
とにかくお風呂にでも入りなさい
気分が少しはすっきりするから」
「解った」
瑞基は項垂れたまま風呂場に行った。
綾子は買い物に出掛けた。
来る途中で見つけたスーパーへ急いで行き、豚肉や玉ねぎなどを買って帰った。
瑞基はまだシャワーを浴びてる様だ。
綾子は腕捲りをしてキッチンに立ち豚丼を作り始めた。
瑞基が風呂場から出て来ると綾子は部屋を片付けていた。
確かに身体がキレイになると少し気分が落ち着いた。
部屋に、久し振りに料理の匂いがした。
「まだご飯炊けないの
私片付けするから、瑞基はスマホでも弄ってなさい」
瑞基は言われた通り、邪魔にならない様にベッドの上に胡座をかき、スマホのアプリゲームを始めた。
「ねえ、もしかしてお米、ここにあったのを使った? 」
瑞基は不安になって訊いた。
「使ったよ」
「それ、ヤバくない?
一年前のお米だよ」
「別に虫は湧いて無かったみたいだけど」
「母さん、つえー」
いつも通りの瑞基の物言いに綾子は少し安心した。
「隆一朗さんて、几帳面な人なんだね
キッチン見たら、きれいに収納してあったから
瑞基、こんなに部屋汚なくして、それで怒ったんじゃないの? 」
「そうなのかなあ」
炊飯器のアラームが鳴った。
丼が無いので、大きな皿にご飯を盛って具を載せた。
「食べるものしっかり食べれば元気になるよ
隆一朗さんも機嫌が直れば、その内ひょっこり帰って来るんじゃない」
「……………だといいけど」
瑞基はそうは思わなかった。
食欲も無かったが、これ以上綾子に心配はかけたく無かった。
瑞基は久し振りに綾子の作った豚丼を口の中に掻き込んだ。
読んで戴き有り難うございます。
今日も、一気読みして下さった方がおられたようで、嬉しいです❗
今日は忙しかったです。
小説三昧の一日でした。
「最後の嘘」を一日で書き上げ、アップしたり、
修正版を三話も投稿したり。
頭使い過ぎて、さっきまで頭ふらふらしてました。
今は治りましたが。
根が単純なので、復活も早いです。笑
やりたい事やりたいだけやるとすっきりします。
でも、家事怠けてるので、罪悪感パ無いです。
明日から頑張ります。




