危険な晩御飯
読んで戴きましたら倖せです。
「はー、疲れた
徹底的にこき使われた」
瑞基はベッドに倒れ込んだ。
「その分、お給料貰ったろ」
隆一朗はキッチンで晩御飯の用意に精をだしていた。
「そういえばさ、隆一朗って警察の人にも顔利くんだね」
「顔が利くんじゃなくて、葉山さんがいい人なんだよ
あの人が来てくれてラッキーだったよ」
隆一朗は急に思い立って言った。
「思い出した!
瑞基、昼間のあれは何? 」
「もう、時効だよ」
「関係無いよ、どうして万引きなんて? 」
「どうしてって、みんなやってる事じゃん
売るといい小遣いになるし」
瑞基はのんびりあくびをしながら答えた。
「瑞基、煩く言うつもりは無いけど
付き合う友達は選んだ方がいいと思うよ」
「うへ、母さんと同じ事言った」
「当たり前だよ
善悪を見極められない友達なら居ない方がいい
だいたい学校はどうしたの?
今日が開校記念日なんて聞いてないし、今朝制服着て学校に行くって出かけて行ったよね」
「ああもう、母さんが二人居るみたいだ」
隆一朗はガスコンロの火加減を絞ると瑞基の隣に座った。
「キミ、言ったよね
ここに置いて貰えるなら学校もちゃんと行くって
あれは口から出任せだったの? 」
瑞基は起き上がるとベッドの上で体育座りをした。
一応、反省のポーズらしい。
「解った、スマホ貸して
お母さんに電話するから」
「何で、母さんに電話なんか」
瑞基の顔色が変わった。
「ボクはもう大丈夫だから、お母さんに迎えに来て貰うんだよ」
瑞基は驚いて立ち上がった。
「ダメだよ、そんなの! 」
「キミは約束を破ったんだから、当然の措置だろ」
「だいたい隆一朗スマホ持って無いのに使い方知らないだろ? 」
「電話掛けるくらいできるよ、さあ貸して」
隆一朗は手を出して催促した。
「嫌だ! 」
急に隆一朗の顔色が変わった。
「しまった、カレー! 」
隆一朗は慌ててキッチンに飛んで行った。
カレーは何とか無事だったので、隆一朗は胸を撫で下ろした。
瑞基が食卓の傍に突っ立って、お玉でカレーをかき混ぜる隆一朗を見詰めていた。
「悪かったよ
ちゃんと学校行く
あいつらとも縁切る」
隆一朗はしゅんとした瑞基を見るとクスッと笑った。
「キミって素直なのか悪餓鬼なのか解らなくなるよ」
「ねえ、隆一朗はさ
一応若いのに……………」
「その一応って何」
瑞基は隆一朗の突っ込みは無視して続けた。
「どうして、スマホとか持たないの? 」
隆一朗はガスコンロの火を止めて鍋を食卓に置いた。
「電話が嫌いなんだ」
「え、なんで? 」
「聖流の話だとボクが三歳の時にボクの母は家を出て行ったらしい
ボクが小学一年の時に無言電話が掛かって来た
そして一言だけボクの名前を呼んで切れたんだ
それ以来、ボクは毎日学校が終わると電話の傍で待っていた
来る筈の無い電話を待った、毎日」
瑞基は更に落ち込んだ。
「ごめん、またオレ、隆一朗の辛い過去を思い出させちゃったんだ」
「そんなに気にする事は無いよ」
瑞基はその時初めて恵まれた環境に育った事を意識した。
「一服盛っておいたから、覚悟して食べて」
隆一朗が意味ありげに微笑んだ。
皿に盛られたカレーを見て、瑞基の沈んだ気分は一変した。
「何この、ゴロゴロと入った黄色い物体は? 」
「見て解らない? 」
「どう見てもこれ、パイナップルだよね?
パイナップルってカレーに合うの? 」
「さあ、ボクも初めて食べるから」
「ええっ?!
なんちゅう危険な晩御飯!
でも、どうしてパイナップル? 」
「冷蔵庫にあったから」
「何その安直な理由」
この家の冷蔵庫は瑞基が生活するようになってから劇的な変化を遂げていた。
以前は水と酒しか入っていなかったが、今は仕事帰りにスーパーに寄るのが最近の隆一朗の日課になった為、食材が大半を占めるようになっていた。
とにかく椅子に座ると、瑞基はそれを口に入れてみた。
「んー、なんかよく解らないけど食べられない味では無いような……」
育ち盛りの瑞基はもりもり食べた。
莫迦丁寧にお代わりまでした。
「隆一朗、なんか舌が痺れて来たんだけど」
「そお? 」
隆一朗は涼しい顔で黙々と食べていた。
「隆一朗居るー? 」
玄関から麗畏の声がした。
「こんな時間に? 」
瑞基は眉をしかめた。
「麗畏だよ
多分また彼女と喧嘩したんだ
余計な事言うと絡まれるから気を付けて」
ぐでんぐでんに酔っ払った麗畏が入って来た。
「隆一朗聞いてくれよ
彼女がさあ、仕事で遅れただけなのに、私の事なんてどうでもいいんでしょって、カンカンに怒るんだ」
隆一朗は慣れたもので、入り口で座り込もうとする麗畏の腕を取ると自分の肩に回してベッドまで誘導して座らせた。
「で、彼女がどうしたの? 」
「急いで駆け付けたのに、怒って帰っちゃったんだよーぉ」
「そう、たまたま機嫌が悪かったんじゃない? 」
「あ、あれの日だったのかも」
「多分ね
女性はホルモンのバランスが崩れやすいから、感情のコントロールが難しいんじゃないかな」
瑞基は三杯目のパイナップルカレーを食べながら、その様子を見学していた。
『なんか、すげえ慣れてる』
「あれ、珍しい
いい匂いするね、飯食ってた?
て、あれ?
少年じゃん、まだ居たんだ」
麗畏はよろよろ立ち上がって瑞基に近付いた。
強烈な酒の匂いに、瑞基まで酔っ払いそうになった。
「何食べてんの? 」
麗畏はふらふらと瑞基の皿を覗き込んだ。
「わっ、何食ってんの?! 」
瑞基は少しビビりながら言った。
「パイナップルカレーです」
「ああ、隆一朗が作ったんだろ
隆一朗にまかない任せると、信じられない物食わされるって魁威がしょっちゅう嘆いてるんだ」
「そうなんですか? 」
瑞基は自分の不倖を垣間見た気がした。
「俺も一度ご馳走になったけど、微妙なんだよね
不味くも無いけど美味しくも無いんだ」
「言えてる
因みにその時のメニューは? 」
瑞基はある種、怖いもの見たさで訊いた。
「んーと、あれはね
パフェ用の残ったキウイフルーツの入った肉じゃが」
「ほんと微妙だ
とても美味しそうに思えない
つか、むしろ食べないで済んでラッキーな気さえする」
「ねえ、二人共ボクが居る事忘れて無い? 」
麗畏は隆一朗へ振り向いた。
「隆一朗、真実は認識しておいた方がいいって」
「ご飯なんて、お腹満たされれば何でもいいだろ」
瑞基は腑に落ちない。
「初めて朝食作ってくれた時はまともだったけど、あれは幻だったんだ」
「気が向いただけ」
「いつも気が向いてよお! 」
瑞基はこれからの食生活の不安に、切に訴えた。
「瑞基、それは甘いと思うよ」
隆一朗がニッコリ笑顔で言った。
麗畏が瑞基の肩を叩いて言った。
「諦めろ、少年
不味い物食って死んだ奴は居ない」
「うげげえ」
瑞基は初めて人生に絶望を感じた。
読んで戴き有り難うございました。
お化粧をしたロックバンドが登場して流行したのは、デーヴィッド・ボウイ、Tレックス、ストゥージスなどで有名な´60年代のグラムロックですが、ロックで初めてお化粧をしたのはローリングストーンズのミック・ジャガーだそうです。
と、言ってもミックがしたお化粧は頬に赤い三本線を入れただけのシンプルなものでした。
後の´80年代にニューロマンティックスが花開き美しい男達が蔓延した華やかな時代、若かった私は胸踊らせてました。
ジャパン、デュランデュラン大好きでした。
そして´90年代に入り、日本でヴィジュアル系が誕生します。
多分私の記憶が正しければ、XジャパンよりBUCK-TICKとデルジヴェットが先だったと思うのですが。
しかし、世界の´90年代はブリットロックが全盛期。
いつも、華やかなファッションの先端を行ってたロックがブリットロックで地に堕ちました。
いや、私もオアシスとか聴きますけど。
キレイに越したこた無い。
旦那によく言われたのが「顔で音楽する訳じゃ無い」。
でも、私はロックで夢を買ってました。
このギターを弾いているのは美形さん、と思うだけで倖せな気分になれました。
カッコいいロックをカッコよく演奏してくれたら凄く満足する訳です。
私、来世は美少年に生まれて、ロックやりたいなあ。




