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カタコユリ荘 春の選抜カレー大会  作者: しらら
ゴールデンウイーク突入
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34/46

裏カレー大会へようこそ

   


 皆のカレーが出揃って、ピクニックテーブルにコッヘルやフライパンが並ぶ。

 佐原手先輩が七輪でチャパティを焼いて配ってくれた。

 おのおののシェラや紙皿を並べて、

「いただきま――す!」


「うまっ! 鶏肉パリパリでうまっ!」

「いいねえ、ネマガリ筍。春って感じがする」

「南原先輩のタコ大根カレーもイケるっス」


 食べている所に、運営三人と、なんと寮母さんとパートさんの一人がやって来た(ゴールデンウィーク中に厨房メンテがあるので、立会い業務で何回かは出勤するらしい)。

 皆立って、どうぞどうぞと真ん中の席を譲る。


「あらぁ、嬉しいねぇ、ちょっと味見したいだけのつもりで来たのに、全部美味しそう」

 おかあさんがたはニコニコしながら、自分たちも時期が違えどカタコユリ寮の出身だと教えてくれた。『日曜カレー』の思い出もあるのだと。


「当時は街もあんなに栄えてなくて雑木林ばかりでさ」

「そうそう、日曜ったって遊びに行く場所もないし、冬も今ほど除雪されなくて雪に閉ざされたし」

「日が短くて一日中空が明るくならない時期なんて、食堂に下りて行ってカレーの湯気と匂いをかいだだけでホッコリしたわぁ」

「芋剥き名人がいたんよ。もうバ――と回してガ――って。いまだにあのスピードの上行く人知らんわ」


 おかあさんがたはひとしきり楽しんで、ゆで卵をくれて業務に戻って行った。


 果々子は口を横に結んで、寮が昭和の空気だ何だと心の中で揶揄していた事を、深く反省した。だって平成生まれの自分が昭和を知っている訳がないじゃないか。その時代を大切に生きた人になんと失礼だったことか・・



 ちなみに果々子のカレーは今度は受け入れられたが、やはり絶賛というほどでは無かった。

「だから私にしか美味しくないって……」

 言い掛けた所で、後ろからスプーンを持ったみかんがいきなり出現して、素早く奪ってパクっと食べた。

「うん、美味いで!」

 エントリーNo.6は一票だけ票が入っていたが、最初のカレーを味見していたみかんの物で、正当な票だと記録に残された。




「なにやってるんですか……」


 怯えたような声に一同振り向くと、鍋を携えた蜂矢涼介が突っ立っていた。

 そういえば運営のタチバナ先輩たちに「カレーをご馳走する」って約束していたっけ。


「言われた時間に来たのですが……間違えましたか?」


「折角だからご招待しようと思いまして。裏カレー大会へようこそ」

 タチバナ先輩が爽やかな声で立ち上がる。


「はぁ……?」


「蜂矢涼介カレー!!」

 先輩の一人が失礼にも本人ではなく鍋の方に食い付いた。


「あのめっちゃ秀でていたってカレー?」

「私食べられなかったのよ」

「待って下さい、運営に作って来てくれたのです、私たちが優先です」

「権力横暴!」


 ますますドン引く蜂矢を、タマ先輩が穏やかに席へ誘った。


「怖いんですが……」

「まあまあ。来てくれてありがとうねぇ、はいチャパティ、好きなカレーよそいますよ」


 蜂矢は観念した感じで席に着いた。

「じゃあ……この人のカレー、ありますか?」


 いきなり指名されて果々子は喉がヒュッと言った。待って勘弁して。

 案の定、ポトフ風薬膳カレーに目を白黒させる蜂矢。

 最高のカレーを作って来てくれたのにごめんなさいごめんなさい……


 その後、他の先輩がたのカレーも一通り食べて、いや勉強になりました、いい経験させて貰いましたと礼を言う蜂矢。同じ一回生なのに大人だなあ。

 その隣では年上の女子たちが蜂矢涼介カレー(カリスマシェフカレーみたいだ)を奪い合っているというのに。


「人のことイナゴとか言えますか……」


 ボソッと言った声は果々子にだけ聞こえた。







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