想定内
普段の日曜カレーを作る側にも関わらず個人でエントリーした面々は、
「私たちは『賑やかし』よ。選抜大会にするなら頭数が要るし、たまには思いっきりハジケたカレーも作ってみたかったしね。
出来レースって言われても否定しないけれど、投票だけは公正にって運営からお達しされているの。ポプラ寮生は割と毎回入賞して来るわよ」
と、にこやかに教えてくれた。
……賑やかし要員と、優秀なポプラ寮参加者と、イナゴガヤ……それらすべて想定内の舞台の中。
「わ、私も賑やかし要員として誘われたのでしょうか」
果々子は複雑な気持ちで聞いた。
先輩がたは顔を見合わせて含みのある笑顔を浮かべた後、明るく答えた。
「単純に食べてみたかったんじゃない? ナツ先輩が」
「今度ちゃんと作った奴を、私たちにも食べさせてね」
「私も、先輩がたのカレー食べたいです!」
「じゃあやろうか、裏カレー大会」
「あはは、やろうやろう」
「ゴールデンウィーク期間中は日曜カレーお休みだから、紛らわしくない日がいいわね。前半の内で考えとく」
「オッケー!」
「聞き捨てなりません」
いつものクリアファイルを抱えてタチバナ先輩が入って来た。
後から運営の二人。
「なにうちらのおらん所で楽しそうな計画しとるんや、まぜろ」
「食堂の方も片付け終わったわ。お風呂の順番ジャンケンしましょ」
***
糊カレーはイナゴ男子たちのお陰でだいぶん減ったが、まだ寸胴に半分ある。現在は小分けにして冷凍中。
今、風呂につかりながら、その処理法を皆で検討している。
「アレンジする手段ある?」
「片栗粉は、一旦冷やして再加熱するとゆるくなるらしいっス」
「ほお」
「麺類なら合うかもしれません。カレーうどんなど如何でしょうか」
「あ、いいですね」
「ちょっと味を足して」
「鰹出汁?」
「いけそう」
料理好きな調理組の皆さんとは話が弾む。果々子は出るタイミングを逸してのぼせそうになった。
「飯テロ……」
後から入って来たみかんが、隣でぐったりと鼻の下まで水没している。夜は夜でノルマがあるらしく、さっきまでストレッチをしていたそうだ。
「プリン、プリン、明日の朝にはプリン……プリンが夢に出て来そう……」
皆と別れて部屋の前、お向かいのビタミンカステラ先輩が、
「日曜カレー、よかったらたまに手伝ってくれないかな? 気が向いた時だけでいいから」
と誘ってくれた。
「私でよければ。ヘッポコで野菜の皮剥きぐらいしか役に立てませんが」
「なんくるないさ、ありがとう」
おやすみなさいを言って部屋に戻り、ベッドに倒れ込みながら嵐のような一日を反芻する果々子。
ビタミンカステラ先輩が『勧誘成功』メールを一斉送信し、画面を見た調理組がそれぞれの部屋でガッツポーズをしたり、運営三人がハイタッチを交わした事など、知る由も無かった。




