薬膳カレー的な(キャラ紹介4)
とにもかくにも、果々子のカレーは並んだ。
やり遂げた脱力感で、みかんと一緒に隅のテーブルでノビる果々子。
ビタミンカステラ先輩が、何種類かのルウをかけたカレーを二皿持って来てくれた。
それから三人の先輩や上級生たちが果々子のカレーを取りに行こうとする……
……が、ここでまた驚く事が起こった。
湯気の立った新しい料理が来るやいなや、真ん中に陣取っていたポプラ寮の十人ばかりの集団が、他を押し退けて群がったのだ。
彼らにとってこれは、『三百円でカレーを腹一杯喰い放題のイベント』。
いや別にそういう動機で来ても構わないのだが、皆で審査するのも兼ねているという事を、彼らは完全に無視している。
「無くなっちゃうよ、遠山さんのカレー」
「どうだろ……?」
果々子はまだ力の抜けた顔のまま、ぽぅっと眺める。
「なんだこりゃ、葉っぱ!?」
「信じられねぇ、カレーに葉っぱ入っとる」
「肉ないのか、肉!」
「……セロリと蕪の葉のカレーが、ああいう人たちに受け入れられるとは思えない」
「はは、なるほど」
男子学生たちの後ろから皿を持ったビタミンカステラ先輩やドラゴンフライ先輩(旧 前髪クリップ先輩)たちが、
「お口に合わないようでしたら、そこをどいて下さらない?」
と悪役令嬢のように言った。
両脇と後ろにも調理組の女子がズラリと並び、本当に悪役令嬢とその取り巻きのような圧がある。
「だって人を集めといてこんなに早く料理が無くなるなんて詐欺じゃん」
ブツブツ言う男子。彼らは、審査の為に少しずつよそう者の横で、何も考えず肉だけ選り分けてガバガバよそっていたのだが。
「カレーなら、今厨房で作っている物があります」
タチバナ先輩の朗とした声。
「もうそろそろ出来上がりましたでしょうか? エントリーNo.8番、群 竹則さんのグループのかたがた」
言われて、厨房占拠組が青い顔でこちらを見た。そういえばそもそも何をやっていたのだろう? 昼の三時から占拠していたっていうけれど……
「あの寸胴鍋では運べないでしょうから、欲しい方は配膳口まで行って下さい。群竹則さんのグループのかた、よそってあげて下さい」
「なんだあっちにあるんじゃん」
と、イナゴ男子たちは食堂と厨房の間の配膳カウンターに殺到した。
その間に、果々子のカレーは希望者に一口分ずつ分けられた。
配給を受けた先輩がたはそれぞれの席に戻り、三人の運営委員は果々子たちのテーブルに座った。
「えっ? 目の前でレビューする感じですか?」
「ええやん」
「良い香り、健康的な匂いがする」
「薬膳カレー的なカテゴリーですか」
「みかんはええのん?」
「私はさっき味見したし」
「じゃ、いただきま――す」
三人はそれぞれの仕草でスプーンをパクっと口に入れる。
「・・・・」
「うん、……うん」
「何というか、独特の……」
「だから言ったじゃないですか、私にしか美味しくないカレーだって」
「いやそこは、皆で『おいし~~い!!』って叫ぶオチを求めるやろ!」
瀬戸先輩の突っ込みに、両脇の二人も笑いをこらえて水を飲んだ。
味見した周囲もザワザワしている。
「け、健康には良さそうね」
「薬膳料理としてはアリなんじゃない?」
「っていうか、ほぼカレーパウダーしか無かったのに、この香辛料の風味は何?」
「あ、それ思った。カレー店のレジ前の匂いがする」
「範囲狭いな」
「へへ、内緒です」
言って果々子はタチバナ先輩に会釈をした。
先輩もアーモンドみたいな目を細めてうなずく。
さっき果々子が耳打ちで譲って欲しいと頼んだ物は、『漢方の胃薬』。
料理に使う香辛料と同じ成分が含まれていて、少量ふると『何だか本格的っぽい』風味を付けられる。
前に先輩の部屋を訪れた時に匂いでそれの存在に気付いていたと言うと、先輩は目を丸くして驚いていた。




