Episode20
「はにゃーん!街についたまーす!」
ゆきが両手を広げてきょろきょろとせわしなく周りを見渡している。
下山して無事に街へと辿り着いた私達は早速出店やいしゃれな宝飾屋さん、飲食店やさまざまなお店が立ち並ぶ通りを歩いていた。
『ゆ、ゆき!おち、おちる!』
そんな中私はゆきの背中におぶられていた。
結局下山をしたところで動けなくなくなってしまった私を軽々とゆきがおぶってここまで来たわけだ。
はしゃぎまわるゆきに必死にしがみつきながら半泣きでユージーンに助けを求めるも微笑ましそうに我が子を見守る温かい目で見ていた。
『ぜってぇ許さねぇからなァァァああああ』
「お初にお目にかかります。ザマンド国王陛下」
「ほっほ、頭をあげよ。名はなんと言ったかな」
「はい。わたくし勇者見習いとして旅をしているユージーンと申します。後ろに控えますは仲間ナナミとゆきと言います」
「ほう…聞かぬ名を持つ見慣れぬ姿の娘と獣人を控えておるとは…なかなかの処遇を受けておるのだな」
なぜか王城のそれも王様の前へと来ている。
どうやらこういう大きな街では勇者や冒険者は一度王様と謁見をして顔や名を覚えてもらったほうがいいらしい。と、言うことでユージーンに連れられてここに来たということだ。
ちらっと前と見るといかにも王様といった風貌の大男が玉座に鎮座している。
ユージーンの紹介を聞いて王様はこちらに視線を送ってくるが、あまり良い印象ではないらしい。話題に上がり目が合いそうですっと下を向いたが送られてくる視線は好意的と言うよりはどこか訝しげ、疑い、見下すようなそんな感情。
「国王陛下、私の仲間は誰よりも平和を愛して私を信じてついてきてくれているかけがえのない宝物なのです」
「…ふむ。大変失礼をした。いやはや昨今の異種族間での抗争などのせいで神経質になっておってな」
「それには私も胸を痛めている所存です。その問題を解決すべくこうして仲間として魔王の討伐ができたら獣人たちや人間を代表してイメージを変えて行けるのでは、と思っております」
「ほっほ、若いながらによく考えている。良いだろう、我が国を存分に楽しんでいっておくれ」
王様の笑い声を最後に私達は城を後にした。ユージーンの拙い敬語でもその真意と熱量は伝わったようで最後には私とゆきにも笑顔を見せてくれた。
緊張の糸が切れて大きなため息を吐くとその隣でユージーン同じくらいの息を吐いていた。
「いつ来ても緊張するなぁ」
『よくゆきも我慢したね』
「ふにゅん!ゆきも何回かこの王様には会ってるます!」
「え、そうだったの」
『じゃあ、前の冒険者のときもここに?』
「ふにゅ、そうます!」
ならなんとなく王様のあの視線にも納得がいった。
きっとあの冒険者達の素行には王様も気付いていたのだろう。その中にいた仲間のゆきとここにいるゆきが同じことにも気付いて良くないイメージがついていたのかもしれない。
ユージーンの気持ちが伝わって本当に良かったのかもしれない。
「さて、王様への挨拶が終わったらもう自由だ。俺は先に宿をとっているからゆきとナナミは先に街を見てるか?」
「はにゃ!ゆき、ナナミとまわりたいます!」
『私じゃゆきの暴食は止められなさそうだけど大丈夫?』
「はは、まぁその分明日からここのクエストで稼いでもらうからな」
「はにゃーん頑張るまーす!」
お城から出たところでゆきに腕を引っ張られて引きずられていく私を手を降って見送るユージーン。
先程の通りへと戻ってくると目をキラキラさせて欲望を耐えきれずによだれを垂らしているゆきと一緒にいろいろなお店へとまわった。
ユージーンからお財布を預かっていたけどユージーンと合流するまでにお金が持つかなぁと不安に思いながらも私も美味しいものを食べてきれいな服や髪飾りなどを見ているとそんな不安も飛んでいった。
「はにゃあナナミはなんでも似合うますね〜かわいいます!」
『そ、そお?確かにこれ可愛いね』
とある宝飾屋さんでブレスレットを見ていたとき、ゆきが私にきれいに輝く石が入ったものを付けてくれた。
現代では見ないデザインに腕をまじまじと見て眺める。
「おやおや、よくお似合いだねぇ。それは私の祖父が祖母に贈ったものでね。きっとお嬢さんに良い縁を運んでくれると思うよ」
奥から店主であろうおばあさんが出てきて私のブレスレットを見てそう話してくれた。
そんなに思い出や人の想いが篭ったものだと分かるとさらに中の石が輝いて見えた。
私はおばあさんに会話を返す。
『そんなに大切なものだと知らずに付けてしまいました。お店に出して良いものなのですか?』
「ふふ、祖母から譲ってもらったものだけど私も良い縁に恵まれてここまで生きてこれたからね。奥に仕舞ってしまうよりも誰かに付けてもらいたくてね」
『…私も本当に素敵なものだと思います』
すっとブレスレットを撫でて私はこのブレスレットを購入することにした。お会計をして私にブレスレットを渡すときのおばあさんは少しだけ寂しそうな瞳をしていたけれど、それよりも大きな笑顔を送ってくれた。
そんな出会いを経て、
私とゆきは途中で喫茶店に立ち寄った。
それまでも焼き鳥や魚の丸焼きやフルーツなどなどを食らい尽くしてきたゆきはここでもパンケーキのようなものを頼んでいた。
「お、こんなとこにいたのか」
『ユージーンおかえり。よく分かったね』
「飲食店にいるのはおおよその検討はついてたし、メインはもう食べ終わってる頃だと思ってスイーツやカフェに絞って探してた」
『…勇者よりの探偵に向いているのでは?』
「タンテイ?またナナミの国の言葉か」
そんな会話をしながらユージーンが席につくと店員の女の子にドリンクと軽食を頼んでいた。
ユージーンにも目もくれずパンケーキを頬張るゆきを見て少しだけ呆れたように笑いながら改めてこちらを見た。
「さて、今後のことだけど」
『ん?ぁあそうだね。仲間探しを続行するのか新たな目標をたてるのか』
「…今度はダンジョン攻略を目指そうと思う」
『......え、えええええええええ??!』
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