Episode12
『ハカちゃん、大丈夫?』
「…ん。」
山のダンジョンへと向かった3人は驚愕した。
山だった部分は抉れてほぼ更地のようになっていたのだ。残った木の部分は燃えてここから煙が上がっていた。
ユージーンと私は顔を見合わせて生唾を飲み込んでから足を踏み出して先へと進んだ。
「確か…ここあたりにダンジョンの入り口があったはずだが…」
『…なにも残ってなさそうだね』
「…魔力、の、あと、がある」
『魔力の跡?』
「…」
ハカが私の裾を掴んでそういった。
聞き返すとコクンと頷いて正面の方に指を指す。その方向は煙に包まれていてよく見えない。
『…魔力って、人間のものか…魔物のものかわかる?』
「…魔物」
シュンッッ
と言いかけたハカの目の前に目にも止まらぬ速さで何かの影が飛んできた。
煙を突き抜け飛んできたそれは鋭く光るものを持っている。
ほぼ反射神経でハカを抱きしめて横に飛び込む。
間一髪ふたりは危機を回避した。
「チィッ、外したか」
「は、ハカ!ナナミ!」
『ユージーン!敵よ!!!』
こちらに駆け寄ってこようとするユージーンにそう叫ぶとユージーンは固まった。
砂煙が晴れて見えたその影は真っ黒な翼を広げ、頭に四本の角を生やした人ならざるものだった。
殺意がこもったその瞳は私達ふたりを射抜くと、背筋に悪寒が走った。
本能が目の前のものはやばいと言っている。
だが、下手に動くと一瞬でこの命が散りそうな気がして動けない。
ぎゅっとハカを抱きしめる手に力がこもる。
「…ナナミ、こわい?」
『だ、だいじょうぶ…ハカちゃんは、守るから…だいじょうぶ…』
震える声でそうハカと自分に言い聞かせる。
恐怖で頭なんか働かなくて、徐々に視界がぼやけて目の前の敵の姿もわからなくなってきた。
すると、
「おい、そこの女。お前か?暗黒魔法を使ったのは」
『…あ、暗黒魔法…?』
「チィッ、しらねーのかよ。この山の方から感じたっつってたのによ」
暗黒魔法…。すなわち私達で言うところの闇属性魔法?
だとしたら、狙いはハカ?
『あ、暗黒魔法がなんなの!』
「…っふ。特別に教えてやろう、人間。ここで感じた暗黒魔法の純度は魔王様に匹敵するほどだ。その暗黒魔法の持ち主をつれて来いとの命令なんでな」
『…魔王に匹敵する…?』
「フンッ、人間なんぞに魔王様と同等など反吐が出るが、そんな暗黒魔法の使い手なのなら少しは興味があるってもんだ」
目に前の魔物が片腕を上に突き上げパチンと指を鳴らした。
一瞬の間が空いたあと、腕の中にいるハカがブルブル震えだした。
それこそ先程恐怖で震えていた私のように。
「…あ、ぁあ……あぐ…」
『ハカちゃん?!』
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