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Episode12






第二部








「ここが、ここらでは大きい街 ポカナだ」



『へぇぇ〜きれーい!』




無事に合流できたユージーンと私は街の中へと足を踏み入れた。

街から少し離れたところでユージーンを待っていた私は半泣きの状態でユージーンの帰還を出迎えた。

そのあとも街に入る際にひと悶着あったが、ユージーンが勇者見習いだと名乗ったら疑惑の眼差しがあったものの中に入れてもらうことができた。




『本当にユージーンが無事でよかった…私ひとりでどうやってハカちゃんを助けてこの世界で生きていけばいいのか…そればっかり考えちゃってたよ』



「おいおい…少しは俺が勝利して帰ってくることを考えていてくれよ…」



『…そのためにはもう少し戦闘能力をあげようね』



「!……げふん、とりあえず、ナナミもアイテムとか持てるようにカバンや装備品を買おう。…あとはギルドカードも作っといたほうがこの先また街に入る際に便利だろう」



『ぉぉぉ…RPGっぽいぃ。零たちが聞いたら発狂しそう…』



「ナナミの知り合いか?そういえば、ナナミの世界のことを全然聞いてなかったな。今度ゆっくり聞かせてくれよ」



『うん、全然良いよ』




そんな話をしながらユージーンはとある場所で足を止めた。つられて私も立ち止まる。

大きな建物を見上げるとこれまた大きなアイテム袋らしいマークの看板がある。

ゲームでよく見るアイテム屋さんのようなものだろう。




「ここに装備やアイテムが売ってる。ついでにカバンとかもあったはずだ」



『うんうん』




ユージーンのあとに続いて中にはいると扉のベルがカランカランと小気味のいい音を立てて店に響いた。その音に続いてパタパタと足音がこちらに近づいてニッコニコのお姉さんが小走りでこちらにむかってきた。

長い髪をハーフアップにしてお団子にまとめて可愛いというよりきれいな印象だ。




「いらっしゃい!アイテムから装備までこの店ひとつで完結!ショップダイユウへようこそ〜!」



「こんにちは!カバンとかアイテムとか見たいんですけど」



「カバンとアイテムですねー!じゃあまずはカバンの方からご案内致しますのでこちらへどうぞー!」




元気な挨拶と喋り方で丁寧に教えてくれる店員さんに付いていく。道中も周りを見渡していろいろな商品を眺める。

物騒な武器やら防具に、キラキラ輝く宝石が埋め込まれたアクセサリーの類。それだけでなく瓶詰めされたポーションのようなものに、葉っぱや粉、素材のアイテムのようなものまで多種多様だ。

そして目の前に陳列されたカバン達の前で店員さんが立ち止まった。




「はい!こちらが当店自慢のカバンでございます!」



「ありがとうございます!ナナミ、なにか好みのものはあるか?」



『うわぁ、なんかいろいろあって悩んじゃうね』




この世界でもおしゃれという文化はあるのか色味が綺麗なものから装飾品に力が入っているものまで様々なものがある。

陳列棚の端から端まで右往左往しながら悩んでいるとユージーンと店員さんがクスクスと笑っているのが聞こえた。




「なんかナナミ、楽しそうだな」



「可愛らしい彼女様ですね〜!」



『…な!彼女とかじゃないです!…えっと仲間です!』



「ふふ、そうでございましたか!失礼いたしましたふふ」




私の反論にも微笑ましそうにこちらを見る店員さんにいたたまれなくなってまた商品を見ることにした。

現実世界でも優柔不断で友達に散々迷惑をかけていた私は2つまで絞っていた候補のうち近いものを手にとってユージーンの方へと駆け寄った。

銀色のようで光の当たり方によって水色っぽくも白っぽくも見える素材が綺麗なうえに中は収納抜群で肩ひもと持ち手の二種類あって日常生活にも旅でも不便が無さそうな鞄。




『これにする!』



「お、これでいいのか?」



「あらお客様、お目が高いですね!リザードマンの皮膚と鱗から作られたこのカバンは耐久性も良ければ防水にも優れて長くお使いいただけます!」



『り、リザードマン…』




相も変わらずニッコニコの笑顔の店員さんから発された魔物の名前にもう一度カバンを見る。

現実世界でも牛皮やワニの革から作られるバッグなどあるけれど、それとは少し違ったものに思わず顔をしかめる。

リアルに想像したリザードマンの姿と触れている手からもっと濃ゆい想像がされる。




「あら、リザードマンはお好みではなかったですか?…それではこちらのコカトリスの革と羽毛から作られたものやゴブリンの革、ピッグマン、シャークマン………」




店員さんから出てくる単語単語に思考をシャットアウトした。現実世界とは違うこの文化を深く考えてはいけないのだ。

現実世界でもゲテモノ料理が好きな人だったり、趣味嗜好が常人とは違う人とはまず根本の考え方が違うものなのだ。

これぞ、多様性。

と自分を納得させて口を開いた。




『最初のカバンでお願いします!!』




私の大きな声で決済されたカバンをユージーンに手渡されて私の大きな買い物は幕を閉じたのであった。














そんなこんなでー




目的であったカバンと諸々のアイテム調達を終えた私達は次なる目的地、ギルド商会へと移動をした。

物々しい佇まいの建物に圧巻されつつもユージーンが扉を開くと、いかにも冒険者ですと言わんばかりの重装備の屈強な男達で溢れていた。

見渡す限りパワー系でゴリ押すようなファイター達ばかりでRPGによくいるような賢そうな僧侶や可愛らしい魔法使いなどは微塵にもおらずに何か悟ってしまった私がいた。

むしろ目の前にいるこの男が勇者で間違いないのだろうか、とも思える。

そんな私の生ぬるい視線を知ってか知らずか受付の方を指差して私を促すユージーンに頷いてそちらの方へ歩き出した。





「こんにちは。こちらはギルド商会受付場です。なんのご用でしょうか?」



「この子の登録をしたいのですが」




そう言って私の背中を押す。私はそのままカウンターを挟んで受付の人の前に立った。

受付の女の人は私を一瞥して頷き、手元から紙を1枚取り出して目の前に丁寧に置いた。




「かしこまりました。ではこちらに基本情報をご記入頂いてから、所持属性のテストを行いますのでまずはこちらにお願いいたします」



『えっと…』




プロフィールと言った項目を書き連ねて簡単な質問に答えていく。

何を書いたらいいところはユージーンが教えてくれて、ささっと記入が終わった。

その様子を見て受付の人は紙を回収してくるくると巻くとぽんっと1枚のカードに変えた。

まるで手品のような光景に思わず感嘆が出てしまい受付の女の人はくすっと笑った。




「では、こちらのカードがナナミ様のギルドカードとなります。身分証にもなるので必ず持ち歩くようにお願いします。では、次に所持属性のテストを行いますのでこちらの魔力石に魔力を込めてもらってよろしいでしょうか」




『魔力を込める?』




石を渡されたものの魔法などこの人生使ったことがない私は戸惑ってユージーンを見た。

そんな私の様子を見たユージーンも逆に魔法を使ったことがない人などいないこの世界の住人なのでどうしたものか分からずにいる。

うーん、と唸ったのちにユージーンは口を開いた。




「とりあえず、石を握って体を巡る魔力をその石に込めるイメージでやってみたらいい」



『う、うーん…分かった。えーっと…石に込める…』




言われたとおりに目を閉じて、血液のように全身を巡る魔力を想像してそれが腕から手に、手から石に…という感じで込めてみる。

完全な想像でしかないけれども大丈夫だろうか。

成り行き任せに石に込め続けていると、




「はい。では確認しますね」




ある程度込められたであろう時間で受付の人に声をかけられ持っていた石を渡す。

が、その石を見て受付の女の人は困った顔をして口を開いた。




「…あら、こちらの石には魔力の反応がありません」



「それって…ナナミには魔力がないということですか?」



「そうかもしれませんし、魔力を放出する術を知らないだけなのか…識別ができるものを呼んでくるのでしばらくお待ちください」




そう言って席を立ったのを見てふぅ、と脱力する私をユージーンは優しく支えてくれた。

近くの椅子に促されてそこに二人で座る。




「お疲れ。って別に疲れるようなことでもないんだがな」



『なーんかこういう役所のような作業って肩に力入っちゃうんだよね』



「ヤクショ?ナナミの世界の言葉か。ナナミには魔力がないのかもしれないな」



『魔法なんか私の世界では架空のものよ』




そんな会話をしていると、先程の受付の人がとある男性を引き連れて戻ってきた。

椅子から立ち上がると、ぺこりと頭を下げられてこちらも頭を下げる。

短髪銀髪高身長の上にオッドアイまで兼ね備えたイケメンの中のイケメンの風貌の男に無意識に緊張が走った。




「お待たせいたしました。こちらが識別の魔法を扱えるシリウスさんです」



「初めまして。魔法使いのシリウスです。魔力の測定ができなかったと伺っています」



『な、七海です。魔法を今まで使ったことがなくて』



「…魔法を使ったことがない…なるほど、では識別を使ってナナミ様の魔力を視ようと思いますがよろいしいでしょうか?」



『は、はい!お願いします』



「…それでは、【識別】」




シリウスと名乗った男の人は私を見て魔法を唱えると上から下まで私を視る。

多分一瞬のことなのだろうが私には長く感じ、しばらくそうしているとシリウスが話しだした。




「…ふむ、ナナミ様には魔力がないようですね」



「魔力がないなんてことがあるんですか?」




シリウスの言葉にユージーンが驚いたように声をかける。

ユージーンと違って至って冷静にシリウスは言葉を続ける。




「稀なことですが、人間にもイレギュラーがあります。魔力がない人間もいるでしょう。ですが、今後なにかがきっかけで魔力が発現する可能性もあります」



『イレギュラー…』




なんだか引っかかる言葉ではあるが、別の世界から来た以上、そういう扱いをされても仕方のないことなのかもしれないと飲み込むことにした。

そのあとは私は魔力なしということで登録され、ギルド商会を後にした。









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