女子力が三万(適当)
女は手元の机の上に置いた、分厚いパイプファイルを開きながら、きりっとした病院関係者らしい外見らしく、事務的に話を始めるのかと思われた。
だが、違った。
「えーと、とりあえず、今後の相談をする為に、斉木さんにはここに来ていただいたわけなんですけど、たった今、次は佐藤苺姫さんに決まりましたよー。きゃー、おめでとうございまーす」
女がいきなり嬉しそうに、女子高生がカラオケ屋で、友達相手にするような、ぱちぱちとテンションだけが高いのが窺える、どう見ても、うすら寒い拍手をした。
それに、本体が瀕死であるのにも関わらず、この状況下で、何故、俺はこの得体のしれない、しかも人をなめたような語尾を伸ばす話し方の女に、何の因果でここで祝われなくてはならないのか。
多少綺麗め美人だと思った、俺の中の感情は負の暗黒領域へと、一直線に急降下した。
「は……? 」
瞬間的に、俺の口から出たのは、その一文字だけだった。
「だから、斉木さんのー、来世でのお名前ですよー? 」
「じゃあ、俺は次は女になるんですか? 」
「みるきぃちゃんなら、そうでーす」
あー死んだ人間の進路だから、やはりつまりはそういうことですか。そうですか。
って、俺がこの異常な状況に納得するとでも思ってんのか。
いやいやいや、何かおかしいこと言ってるでしょ、この人。っていうか、何で疑問符を付けて質問した側の、俺に訊き返そうとしてんのよ。
それにみるきぃって、それ、キラキラネームって言うんじゃないの?
「……俺の来世は、ペットのチワワか何かですか? 」
俺は努めて冷静さを装いながらきいた。
確認が必要だからな。
「えー全然違いますよぉー。ちゃんと、わんちゃんじゃなくって、人間ですってば☆だからどーんと構えて、安心していて下さいねー」
どーんと構えるどころか、女の言葉の語尾の☆に完全にドン引き状態になった、こっちの感情を完全におかまいなしに、得体のしれない女の話は更に続いた。
「本当は佐藤さんのお宅以外にも、伊集院さんとか、西園寺さんとかも、他には候補に挙がってたんですけどねー」
「?!!! 」
なっ、おい、ちょっと待て。どう考えても、そっちの方が家系的に生まれた瞬間から、薔薇色の人生直行確定じゃないか?
選ばせるなら普通、そっちにするだろ。
相手の致命的な選択ミスを疑いつつ、若干もやもやしたものを感じながら、俺が切り出す。
「あの、少し聞いてもいいですか? 」
ひたすら殊勝な言葉遣いに徹しようとする俺とは真逆に、女が女子力が三万(適当)くらいの、つけまつげバリバリの(多分本人は色っぽいつもりでやっているらしい)上目使いで、こっちを見ながら、甘ったるいギャル声で「なんですかぁ? 」ときいてきた。
「他に挙がっていた候補にならずに、俺がその佐藤さんちのみるきぃちゃんとやらに、いきなりなりそうなのは、なにゆえなのでしょうか? 」
「あー、それはですねー、佐藤さんが斉木さんの一位指名獲得だったからですよー」
いきなりドラフト会議でも始めるつもりか?
というか、この輪廻転生の仕組みには謎が多すぎる。




