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62.ストーリーという運命に抗う(チヒロ視点)

もう少しだけチヒロの独白が続きます。

 ーーチヒローー



 私を愛する5人の恋人達。

 この歪な関係は誰にも言えない秘密だ。


 無事にストーリーをコンプリートしたのは満足だ、そして私は表向きはグランと結婚して王妃となった。


 だけどひとつだけ困った事が起こった。

「やる事がない・・・」

 ストーリーをコンプリートしたは良いものの、もう能力を上げる必要がないし、政治なんて私が出来る訳がない。

 王宮で暇を持て余す日々を送るしかなかった。それでもグラン達は足繁く私のもとへ訪れて愛を語らおうとする、私はそれを受け流すように愛想を振り撒くだけだった。


 そして私はあることに気がついた。

 私はグランやミシェイル達を・・・愛していない。


 彼らは一生懸命私に愛の言葉を語ってくれる、だけど全く私の心に響かない。

 ゲームの中のキャラクターだからだろうか?ゲームをしている時は大好きだったはずなのに、現実に目の前で私に愛を手や髪を触って愛を語られても心は全然トキメクことはない、それどころか若干不快にさえ感じてしまう。


 それでも周囲は私とグランとの子供を望む声が多い、王妃になったのだから世継ぎが生まれる事に期待するのは当然だ。

 だけどグランとの子供を産もうと全然思えなかった、逆に一生懸命私の愛を期待する姿が可哀想にさえ思えてきた。



 ただそれとは別にグランとの間に子供を産まない理由があった。


 フランシソアは続編である『アメリアに花束を〜2』の冒頭部分の出来事だ。フランシソアは自身の子供を守るために命を落とす事になる、それがアメリア王国でおこる長い内戦の引き金になり、国は前国王派と現国王グランとで二つに割れてしまう。

 私は死にたくないし、もしこれが定められた運命だとしても、何とかそれに逆らいたいと思った。

 そこで色々と考えたのが、フランシソアの死の原因となったグランとの子供を産まない事だ。

 このまま現状維持で進めばストーリーから大きく外れるはず・・・



 しかし彼等は私のもとからどんどん離れていく事になる。

 ミシェイルの父親のデルタ公爵や、サイスの父親のベルトン伯爵らが裏で動き、彼等を拉致るように連れ去っていったのだ。

「大丈夫、私に任せておけば上手くいく」

 不安そうなグラン達をその言葉で何度も嗜める。それでも次々と攻略対象達は去っていき、最後は私とグランの2人だけになってしまった。


 つまり逆ハーレムルートでも最終的にグランとだけ結ばれる・・・これはシナリオの強制力というヤツなのではないだろうか?

 最終的に2のストーリーに行き着くように私とグランだけ残されてしまったのではないのか?今更ながらグラン以外を選んだ方が良かったと後悔する。


 この頃よりグランは不安に駆られて悪手を繰り返すようになった。

 諸貴族が王家に歯向かえないよう、無理難題を押し付けて力を蓄えないような命令し始めたのだ。さらには自分の親である前王夫妻を王宮から追い出し、誰も自分に文句を言わせないようにした。

 敵を作る行為を不味いと思うが、グランは視野が狭くなっており、とにかく不安でしょうがないようだ。私の話は聞いてくれるが聞き入れる様子はない、次第に私の言葉も煩わしく思われ始めたようで、あからさまに距離を取る様になってきた。


 そしてグランは私に別居を申し出てきた。


 私としては一緒の寝室なんて無理だし、四六時中一緒にいなくて良いのは助かる。

 だが一抹の寂しさは覚える。こうやって人の心は離れていくんだろうなと実感しつつ、まるで他人事のような感覚で別居を受け入れた。



 私達は夫婦のまま他人となった、グランは王宮を出て前王夫妻の為に新築した離宮に引きこもってしまった。と言っても同じ王城の敷地内に建っているから家庭内別居みたいなものだ。

 時々、国王として公務の席で一緒になるが、私と離れたことでプレッシャーから解放されたのか以前のような落ち着いた雰囲気に戻っていた。

 少しだけ安心した。私のせいで壊れてしまったと思うと、別居する事は良い解決法だったのかもしれない。


 後は私の対策だけだ。


 私は死にたく無い、だけど私の周りは敵だらけだ、今の王妃という地位を失えばすぐに殺されてしまいそうだ。

 私の持っている最強の武器はゲーム内の知識と今後のストーリー展開だ。これから何が起きてるかを知っているし、誰がどのような人物なのかを知っている事。それともう一つの武器がカンストしているだろう私の能力値だ、課金アイテムのプラクティスノートを使い、おそらく全ての能力がカンストしているはず。

・・・そう言えばプラクティスノートってどこに行ったっけ?まあいいか。



 まずはゲーム内最強キャラを見つけ出し、私の味方に引き入れなければならない。


ディランド=シャフタール。


 確か2の冒頭部では若き新鋭の将校となっており、後に物語最大の敵である「(あか)の蠍」に唯一対抗できる人物だ。

 ディランドはアメリア王国の大鷹と呼ばれる英雄で作中最強のキャラクターだ。2だけでなく3でも登場し、その無類の強さを発揮して主人公達を助けてくれる。

 ネタバレすると滅んだ他国の王子様で、奴隷として売られて幼い頃にこの国にやってくる。

 2の主人公リコルシェの実の兄で、戦火の中で運命的な再会をする感動的な名シーンが有名で、ファンの間でも語り種になっている程だ。


 上手くディランドに出会えれば味方に引き入れる算段はある。ストーリーを知っているから赫の蠍のアジトや妹の情報を小出しして私に興味を持たせれば勝ちだ。

 今はクリア後から5年くらい経っている、そろそろ頭角を現してきても良いはず。


 そしてチャンスはすぐにやって来た。


 王都で人身売買の闇組織を全滅させたという功績をあげ、最強の男ディランド=シャフタールが褒賞の為に私達の目の前で畏まっていた。





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