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35.明るい未来

「え?エリナが王宮勤め?何で?」

 意味が分からない、何で私の教え子が王宮なんかで働いているんだ?

 するとロナは難しい顔をしている。

「ええと、エリナさんは努力家で、かなり優秀な成績をおさめて卒業しました。また人柄も良く、身分や出生に関係なく誰からも慕われる方だと伺いました。なので周囲は政治官庁に入るものだと思われていたのですが、母親を楽にさせるために家族寮があり、給料の良い王宮勤めを選んだそうです。マナーや作法も高等学院で学べますからね」


 母親のために給料の良い方へ進んだ・・・エリナらしい選択で何とも言えない。

「それで、エリナのお母様は?」

「はい、王宮の従者用の寮で母親と一緒に住んでいます。どうやら母親はその寮で働いているようで、2人とも元気に過ごされているとの事です」

 良かった、2人とも元気なのか。


「ねえ、キア。このまま行くと不味いんじゃないの?」

 ここでクララが深刻そうな顔をしている。

「このままだとさ、この国って良くないんでしょ?今の王家がダメになったらエリナ達にもしわ寄せが来るんでしょ?」

 確かに、もし王妃のチヒロとかいう女が乗っ取ってしまったらこの国はダメになりそうだ。

 でも努力して手に入れた今の成功を全部捨てて、メダリアに戻って来いなんて私には言えない・・・


 一番良い落とし所は、グラン陛下が立ち直って周囲からの信頼を得て、しっかりと王政を盛り立てるのがベストだろう。懇ろな相手がエリートだとしたら、きっとその方が大きな助けになってくれるだろう。

 次は前王様アイラス陛下の復権だろう。王家の血は途絶える可能性があるが、王権維持には一番現実味がありそうだ。

 そして最悪は国を乗っ取られる事だろう。王政も何も無くなり内乱状態になってしまう。その場合はメダリアに逃げ込むしかないだろうな。


・・・もう一つ最悪があった。

 もしかしたらグラン陛下の懇ろだという相手がエリナの可能性がない訳ではない。教え子だったという贔屓目があったとしてもエリナは間違いなく美少女だ、磨けば磨くだけ光り輝くと思う。そんな子を男性が放っておくわけがない、同じ美人でもクララのように性格と人間性に難があれば大丈夫かもしれないが、周囲から慕われる人格者と言っていた。


「・・・何?」

 クララに睨まれた、勘だけは本当に鋭い。


「報告は以上です」

 ロナが立ち上がり丁重に頭を下げる。

「ありがとうロナ、本当にありがとう」

 私も立ち上がり深々と頭を下げる。私にとって本当に嬉しい報告だ、この事を知れただけで王都まで来た意味があった。

 ロナの顔を見ると頬を赤らませて照れている、そして誤魔化すように咳払いをする。

「ゴホン、それで本日の予定ですが、昼過ぎにコリスと共に迎えにあがります。一度、王族管理区に赴いて準備を進めたいと思います」

 一礼してロナが私の部屋から出て行く、部屋には私とクララだけになる。


「ふう、エリナはやっぱ凄かったな。ちょっとだけ一緒に教会学校でキアの授業を受けたけど、本当に頭が良かったもんね、年下とは思えなかったわ」

 率直にクララが感心している。確か3つ下になるのかな?クララも勉強できると思っていたけど、エリナと比べるのは可哀想だな、比べた事はないけど。

「ふふふ、私の教え方が良かったからな。アンタとエリナという成功例が出来た」

 今なら胸を張って自分の教え方が間違っていないと言える。早くどこかの富豪から家庭教師の仕事が来ないかなぁ?


「そう言えば交易センターの所長が、キアに孫の勉強を見てもらえないか聞かれてたな」

「本当!?」

 おお!いきなり仕事が舞い込みそうだ、上手くいけば私も夢の個人事業主になれるかもしれない!


「エリナの事を話せばすぐに飛びつくんじゃない?言っておこうか?」

「是非にお願いします!」


 エリナには悪いがダシに使わせてもらうよ、教え子が超難関の王立高等学院に合格したという実績は、とんでもない看板になる!

「ふふふ、王都に来て本当に良かった、私に明るい未来が開けてきたわ!!」

 高笑いが止まらない。オホホホホって素で言いそうになってしまう。


「何か変な笑い声がしてんだけど?」

 ノックもなくヨヒムが私の部屋に入ってくる。薄手のシャツを着ており、普通の女性なら色っぽいはずなのにヨヒムの場合は筋肉の方に目が行ってしまう。

「おはよう。良く寝てたね」

 クララが笑って言う、

「ああ、ようやく平常運転な気分だ。朝早いのはやっぱ勘弁してほしいわ」

 時計を見ると昼前だ、普段酒場をやっているヨヒムにとって、これがいつもの起きる時間なんだろう。

「さっきまでロナがいてね、エリナの事を調べてくれたの、なんと高等学院に合格していたのよ!それで今は王宮で働いているみたい」

 エリナの報告をすると目が覚めたように驚いた表情になる。

「マジか!?凄えなぁ、頭良いと思ったけどそこまでだったか!?」

 ヨヒムも素直に大喜びしている。


「あれ?でも何で王宮で働いてんだ?」

 ヨヒムが不思議そうな顔で聞き返してくる。もう一回最初から話さないといけないようだ。

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