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13.ドン底にいる時

「はあ!?中身が別人!?」

「シー!声がでかい」


 後ろにベベルらがいる事を忘れてはいけない。


「何?つまり本来のフランシソアは指輪の中に閉じ込められていて、今のフランシソアの中には別の女が入っていて好き勝手やっているという事か?」

 ヨヒムが私の言いたいことをまとめてくれた。

「信じられないかもしれないけど、おそらく本当っぽい。自称神とかいう胡散臭いけど本物っぽい奴が、私がやったって自供してたし」

 自分で言っている事がおかしいのは自覚しているが、それしか例えることが出来ない。

「つまり、キアが言いたいのは、王妃が暗殺とかされたら指輪の中にいる本物が元に戻れないという事だな。結構タイムリミットギリギリじゃねえか?」


 そう、タイムリミットは現国王のグラン陛下が愛人との間に子供ができるまでだ、2人の間に子供が出来てしまったら、フランシソア王妃は生かしておいても邪魔なだけだから始末するんじゃないか?


「・・・ねえ、それは別にキアには関係ないんじゃないの?あの人達に説明して指輪を渡して向こうで勝手にしてもらえば良いじゃん」

 クララが棘のある言い方をする。まあ、確かに指輪のために私がそこまでやる義理はないし、やるつもりもない。


「まあ、その、何だ。昔の私もそうだし、出会った頃のクララもそうだったけど、指輪が少し自暴自棄になっててさ。こう、ドン底にいる時の気持ちって私達も何となく分かるじゃん」


(・・・)

「・・・」


「誰かが手を差し伸べても、いらないって突っぱねたり、構わず放っておいてくれっていう気持ちは凄い分かる、私もそうだったから。そういう時にさ、相手の気持ちなんて汲まずに、お節介焼いて強引に手を引っ張ってあげないとダメな場合もあるじゃん」


「こう、無理やり顔を上げさせてさ、辛いけどそのままだと辛いままで終わってしまうよって、自分を助けられるのは自分だけなんだって、私達は嫌というほど思い知らされたでしょ」


(・・・)

「・・・」


「・・・そうか。で?キアはどうするつもりなんだ?」

 ここで不意にヨヒムに尋ねられる。

「・・・さあ、どうしよう?だから良い案がないか聞いてるんだけど?」 


「「おい!」」


「まあ、到底信じられない話だけど、少し脚色して話すわ。指輪もいいか?勝手にお節介するからな」

(・・・う ん、ありがとう)

・・・泣いているのか?



「えーと、ベベル。今から話すことは信じられないかもしれないけど事実です」

 頭をフル回転させてストーリーを練る、

「今の王妃フランシソア様は人ではありません」


「は?なんと!?」

・・・あれ?人じゃないは不味いか?


「今のフランシソア王妃の中身は・・そう!魔女です」

(は?魔女?)


「本当のフランシソア様をこの指輪の中に閉じ込め、フランシソアという存在になり代わった魔女なのです!」

 よし、少しだけ修正できた!

「その魔女は人の心を操り、信じ込ませる事ができて、陛下や他の人々の心を操っているのです」


 やべっ、一気に胡散臭くなってしまった。


「・・・して、その確証はあるのですか?」

 あれ!?思ったよりベベルが食いついてきたんだけど?


「まず、長い年月で魔女の魔力が弱まったことで、この指輪の中に閉じ込められたフランシソア様と話す事ができます」

 よし、ここで入れ替われ。何とかするのはアンタ自身なんだ。

(え!?うそ!本気!?ちょっと待って、心の準備が出来てないって!)


「・・・・」

「お嬢様?」


「・・・はじめ まして、フラン  シソ アと申します」

 指輪は本当に口下手だ、私と話している時は流暢に喋れるのにいざ他人と喋ることになると一気に辿々しくなる。

 だけど、今のでベベルもカリムも別人になったのが分かったようだ。

「今は キアの 体を使わせて もらってま す」


「・・・驚いた、本当の話なのか?」

 やはりベベルも半信半疑だったようだ、見た目も声色も一緒なのに全くの別人に映るなんて、当事者だから私には全然分からないけど。


「私の 体は チヒロという 女に乗っ取られ、私は指輪の中に  ずっと閉じ込められていた。ごめんなさい、私はとても 周りに 迷惑をかけて しまったよう です」

 別に指輪は謝る必要はないと思うけど、辿々しく頭を下げる。

「失礼ですが、貴女がフランシソア様だと証明できるものはありますか?」


・・・ベベルはやけに乗り気だ。


「証明できる ものは 何もない・・私は 閉じ込められる前 、12、13年くらい前のことしか、知らない」

「・・・12、13年前、ミゼット卿に引き取られた時ですね。やはり辻褄が合うかもしれない」

 何やら胸ポケットから手帳を取り出して思案している。


「失礼ですが、お母様のお名前は覚えていますか?」

「え?母  ですか? ベリアンヌです。みんなからアンヌと 呼ばれて ました」


「それではお父上の名前は?」

「・・・すいません 知りません」


「・・・あの、そろそろ キアと代わってもいい ですか?質問され たらキアに 答えます」

 そう言うと、指輪はグッタリと疲れた感じで私と入れ替わる。

 人見知りの口下手には辛い時間だったようだ。


「・・・ふう、で?何か分かったの?」

 いつもの私に戻ったので、その場の全員がホッとした様子を見せる。


「はい、実はお嬢様の無実を勝ち得ようと、フランシソア様について調べたのです」

 ベベルが手帳を見ながら話し出す。

「ミゼット卿に引き取られたのは14歳の時です、つまり13年前。フランシソア様の母親ベリアンヌは下町でドレスの縫い子で生計を立てており、女手一つで娘のフランシソア様を育ててました。そして当時の周辺の人達の話では、誰にもフランシソアの父親のことを話さなかったそうです。もちろん娘のフランシソア様も父親を知らないと答えていたそうです」

 そう言えば、指輪は母親が亡くなった後、突然父親と名乗るミゼット卿が現れ、いきなり自分が貴族になる事を他人事のようだったと語っていた気がする。


「引き取られた時、フランシソア様はカルベルン=ミゼット伯爵の名を知らないはずなのですが、なぜか知っていたそうです。当初は母親のベリアンヌが教えたと思われていたようですが」


 確かに、何か違和感があるな。


「そして平民出身でありながら、貴族マナーや教養をすでに習得しており、素晴らしい才女だと周囲を驚かせたという逸話までございます」


 あら?指輪は教会学校に通っていた程度だと言っていたな。


「つまりミゼット卿に引き取られる前後で、フランシソア様に突然何らかの変化があったのではないかと仮説を立てていたのです」


 何か複雑な気持ちになる。自分のためにこうして動いていてくれた事を知り申し訳なく思ってしまう。



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