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10.メダリア港湾都市の歩き方

 まだまだ指輪と共にメダリア港湾都市を散策中。


(すごっ!豪華な船)


 運河の対岸に行くために大きな橋を渡る最中、内陸側から豪華な中型船がやって来た。

「どっかの王侯貴族だね、舶来品を好きな貴族は多いからね、外国の商船団が来た後にああやって我先に見に来るんだよ。これも一種の風物詩だね、ほらすぐ後ろにもやって来てるでしょ」

 私が指差すその後ろに豪華な船が次々と連なってやって来ている。


(1番後ろから来る大きい船は?)

「あれは私らみたいな平民が乗れる船。運賃が高いから大概の人は陸路で行くけど、安全と時間を買うと思える人なら船を選ぶって感じかな」

 船が橋の下を通り過ぎるのを見送り、その場を後にする。

「このまま港の方に行くか」

 対岸を渡って行き、沢山の船団が停泊している港を見に行く。


(海をずっと漂ってたけど、こうしてちゃんと海を見るのは初めてかも。内陸育ちだからテンションが上がるわ!)

「おっ、出港するみたい」

 良いタイミングで来たみたいだ、城のような巨大な船が離岸していく。それに追随して中型船が追いかけて行く、沖に進むにつれ大小複数の船が船団を形成していく。

「商船団は同じ国の会社同士がまとまって航海するの。お互い助け合えるし事故があっても対処するのが楽になるらしいわ」

(凄い、本当に先生に教わっているみたい)

 ははは、これでも本当の先生なんだけど?


「次は商業区行くか、ここで取引されたものが商業区へ運ばれていくんだ。どうせならそこでメシでも食べて一杯ひっかけてから帰るか」

 海側から内地の高台へ向けて坂道を進んでいく。いわゆる私達が大通りと呼んでいるもので、交易センターもこの通り沿いにある。

 夕方になり人の往来が多くなってくる。賑やかさに拍車がかかり、より飲食店も活気付いてくる。


「何食うかな〜、久しぶりに肉かな〜肉食べよう」

 テンションが上がってきてオリジナルの鼻歌が出てしまう。


 ここは魚は豊富だけど肉の生産がとても少ない、内陸から運ばれては来るがやはり量はたかが知れている。この近隣で猟師が狩ってくるの肉もあるが、もっと量が少なくて高価だ。本当は滅多に食べれるものではないが、今日は気分が良いし半日分しか給料がないので、それを全部使って豪勢に食べてしまおうと思い立つ。


 まあ、豪勢と言っても高級レストランなんて行けないけどね。


「やってる〜?」

 馴染みの串焼きの店に入る、外に漏れる肉の焼けた良い匂いを嗅ぐだけでまさに拷問だ。

「よお、キア!いらっしゃい!!」

「牛肉と鳥肉を頂戴よ!あと冷たい果実酒も!」

 注文をするとすぐにその場で焼き始めてくれる。ここのお店は値段が安い割に、でっかい肉塊を食べさせてくれる庶民の味方だ。


「おらよ、芋もオマケだ」

「マジ!?ありがと!大好きだぜ!!」


 ノリの良い店主が満面の笑みを私に向ける、そして出された皿の真ん中には牛肉と鶏肉、芋のボリューム満タンの串焼きが鎮座する。そして冷え冷えの果実酒が脇を固める。

「私は今、人生最大級の幸せを感じている」

 ヨダレを飲み込みすぎて喉がカラカラだ、まずは冷え冷えの果実酒で喉を潤す。


「かあぁぁぁあ!最っ高っだぜ!!」

(オッサンになってるぞ)


 いいんだよ、上品なんて大昔に捨ててきた。


「肉だよ肉!久しぶりだよ!」

 豪勢にかぶりつく、口の中に肉汁が溢れ出す。一言で言い表すなら「最強」である。

 昔はマナー良くフォークとナイフで細切りにして上品に口に運んでいた。

 だが今ではそれがもったいない事に気づいた、大きな肉塊を大口で本能のままに貪り食う。貴族では絶対真似出来ない芸当だよ!



 非常に有意義な夕食だった、美味い肉と美味い酒を堪能して店を出る。

 あたりはすでに暗くなっており、帰るには良い時間になっていた。

「最後に良い場所に連れてってやるよ」

 そう言うとヨヒムの店を通り過ぎて高台へと向かう。高台は高級住宅街で私には縁のない場所だ、だけど高台から見えるメダリアの街の夜景を金持ちが独占するのは許せない。


(凄い・・・綺麗)


 指輪から感嘆の声が漏れる。

「いいでしょ、ここからの景色。街灯の光や、家の窓から漏れる光が夜空の星みたいに見えるでしょ」

 遠く沖にみえる光は海上で駐留する船の灯り、1番大きく光るのが灯台の灯りだ。それらを高いところから見るのと幻想的で美しいの一言だ。

「さてと、そろそろ帰るか。明日は朝一番で仕事探ししなきゃな」

(そう言えば、明日から無職だね)

 何を言っている、たった10日間無職なだけだ。


 いや、まあ、最初から定職についてないけど。


 自虐的にダメージを受けてしまった。少し落ち込みながらも帰路に着く。

 大通りから脇の道に入り、いつもの道を通ってヨヒムの酒場に着く。

「ありゃ?閉まっている?」

 灯りがついているが看板は下ろされている、そして手書きで臨時休業と書かれた張り紙が貼ってある。

「何かあったのかな?」

 扉を開けて中に入る。

「あっ、やっと帰ってきた!どこをふらついていたのよ!」

 クララまで帰っていた、今日は早く帰って来れたみたいだ。

「お前に客だ」

 ヨヒムに言われてその方向を見る。


『やあ!麗しの通訳さん!また会えました!!』


 この顔は・・・ナンパで陽気なウォルテア商団の代表者の船乗りさん?勢いのままに熱烈歓迎なハグをされてしまう。

「おい!ビランダ船長!何をしているんだ!!」

 おや?ナンパな船乗りさんの後ろから怒りの声がするぞ?

 ハグをから解放されて声の方を見る、そこには黒髪で凛々しい男性が立っていた。着ている服も上質そうで見るからに上流階級のイケメンだというのが分かる。


 それで・・・えっと?誰だ?


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