エピローグ
そして、三年後。
「……やっと、見つけた」
私は、彼のもとに辿り着く。
「……どうして、ここが?」
彼は一瞬驚いたように、目を見張っていた。
「私が、誰だと思っているのかしら? 皆に助けて貰って、貴方を探し当てたの」
「そうだな。……愚問だったか」
「……やっと、国内は落ち着いたわ」
「知っている。王都から離れたこの地にも、お前の名は轟いている」
「……それ、悪名じゃないと良いけど」
私の言葉に、彼はただ笑う。
「私、もう何も諦めたくないの。……貴方の手を離すことも、嫌」
私はそう言って、手を差し出す。
「有難い話だが……」
「ラダフォード侯爵家の嫡男だったからっていう理由は駄目よ。文句を言わせない程には、これまで私自身実績を積み上げたし……貴方が私の命の恩人にして、ラダフォード侯爵家の私の暗殺計画を阻止した立役者っていうことを浸透させたもの」
「それは……随分と過大評価だな」
「貴方が、自身を過小評価しているだけよ。……貴方、この地で随分と活躍しているじゃない」
ヴィルがいたのは、都市から外れた寂れた田舎町の筈だった。
だと言うのに、彼がここに来てから……この地は見違える程に発展していた。
彼の指揮下で道路を整備し治安維持に務めた結果、大きな街に挟まれたこの地は交通の要所として生まれ変わった。
そこからもその地位を不動とする為に、幾つもの手を打っていた。
街が栄えれば栄えるほど、彼の名もまた上がっている。
そしてこの街も、彼を必要としている。
「貴方は、ここにいた方が良いかもしれない。でも、私は、貴方を諦められない。貴方が側にいてくれたら……私は、もっと頑張れる」
ヴィルヘルムは、そこまで言っても私の手を取ってくれない。
正直、さっきから自信満々に言っているけれども……ちっとも自信なんてなくて、内心緊張している。
もしかしたら離れている間に、誰か他の人のことを好きになったかもしれない。
そもそも私のことなんて、婚約者というカテゴリーでしか見てなくて……離れて冷静になったら、別に好きでも何でもなかったということに気がついたということだってあり得る。
だから手を拒み続けられていて、地味に内心落ち込んでいた。
「私は、貴方のことが好き。もっと、貴方のことを知りたい。……だから、これからも一緒に歩いていきたいの」
ここまで言って、駄目だったらどうしよう。
流石に好きじゃないと言われたら、諦めるしかないか。
「……ルクセリア」
ヴィルヘルムが真面目な顔で私の名を呼んだ。
その真剣な表情に、胸が高鳴る。
そしてそれ以上に最悪の回答が思い浮かんで、緊張する。
そっと、彼は私の手を握って跪いた。
「……愛している。どうか、側に居させて欲しい」
一瞬、何を言われたのかが分からなかった。
望んだ回答だと言うのに、全く言葉が頭の中に入って来ない。
けれども自然と身体は動いて、彼を抱き締める。
「勿論!」
彼は驚いたような表情を浮かべつつも、私を受け止めてくれた。
「それにしても、凄いな。僅か三年で、国内全てを掌握したのか」
彼の胸の中で、私は笑う。
「あら、知らなかったの? 私は、悪徳の女王よ。欲しいものがあれば、どんな手だって使うの」
「……参りました」
そうして、私と彼の道は再び交差した。




