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高家の晒首  作者: 西季幽司
第三章「心理的密室」
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地位と金③

「今日はこれくらいにしておきましょう」

 あちこち走り回ったので、移動に時間を取られてしまった。田村敬之からの事情聴取を終えると、既に日が傾いていた。

「送って行きましょう」と竹村は言ってくれたが、都内だ。ここからなら地下鉄を乗り継いで帰ることができる。「ここで解散しましょう」と告げると、「そろそろ番組の放送ですね」と竹村が探りを入れて来た。そして、「捜査の過程で知り得たことを公共の電波に乗せないでおいていただけますか」と釘を刺されてしまった。

「分かっています。分かっていますけど、何かご褒美のようなものをいただけませんか」と西脇が粘った。隣で圭亮がうんうんと首を振りながら、援護射撃をしてくれた。

 番組の放送は明後日だ。何か目玉となりそうな「衝撃の真実」が欲しかった。

 竹村は「ふむ」と考えた後で、「鬼牟田さん。品川高憲社長の死について、どう考えています?」と尋ねて来た。

「病死でしょう。斎藤が言った通り、スタンガンで人を殺すのは無理があります。それに、高憲さんが殺されたのだとしたら、動機がありません。高房さんが、夢を実現する為に、それに反対する父親を殺害したのだとすると、高憲さんの死後、何故、社長職を引き継いだのでしょう。筋が通りません。好きな道へ進めば良かった」

「飯尾はどうです? 彼が殺したのだとすれば」

「高憲さんを殺して、何の得があったのでしょう。それで社長になれるのならともかく、高房さんがいます。実際、高房さんが跡を継いでいます」

「なるほど。では、高憲社長の死について、番組で取り上げるのは構いません。高房さんの死についてはどうでしょう?」

「う~ん。こちらは密室でなかったようですので、殺された可能性が高いと思います」

「やったのは?」

「飯尾さん、それに翔子さんでしょう」

「まあ、そうでしょうね。動機は地位と金ってとこですか」

「翔子さんは離婚寸前だった。良家の子女ですので、お金に困っていた訳ではないでしょうが、高房さんが保有する株式は飯尾さんが社長になる為に必要だったのでしょう。飯尾さんは、やはり社長になりたかったのでしょうね」

「てことは、実行犯は飯尾でしょうね。翔子は手を貸しただけだ」

「だと思います」

「こちらは他殺の疑いがあって、警察が動いているという程度にしてください」

 西脇には竹村の考えていることが手に取るように分かった。一度、自殺として処理してしまった事件を、「密室ではなかったかもしれない」という理由だけで、再捜査に持ち込むことは難しいのだ。当然、竹村は上司に報告を上げているだろう。だが、容疑者が全員、死亡しているとなると、再捜査への障壁は高いはずだ。テレビ報道はその障壁を突き崩す一手となるかもしれない。そんな思惑がありそうだ。

「分かりました」と答えながら、西脇は番組でどう料理するか考え始めていた。

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