俺の幼馴染み6
いつかは誰かに告白されると思ってた、それが思ったより早かっただけ。
誰だろうか? こんな鈍感に、告白して意識させた勇気ある少女は。
「……で? 誰なんだ? お前に告白した勇気のあるその子は。
そのこと相談したいから、その体勢でずっと待っていたんだろう? 相手がわからないと相談に乗りようがないしな、まずは話を聞いてやる。話してみろよ」
と、そう言えば、弘人は意外そうな表情を浮かべながら、顔を上げた。
……お前に恋愛するなって言うほど、依存してねーよ。むしろ、そろそろお互いに自分のことを優先した方が良いと思っているくらいだし、お前がこのままで良いと甘やかすから、俺は朝陽以外の友人を作る気がしないんだよ。
傷だらけになった俺を、見つけてくれた朝陽には感謝してるけど……、表情や感情を失い、誰かを信頼することを忘れてしまった俺に毎日、お見舞いに来てくれていた弘人に今まで依存し過ぎていたんだ。
弘人が幸せな家庭を築くことを、俺は何よりも願っていることだとは言え、見知らぬ中学生だと言うのにあの人が穏やかな声でああ言ってくれなければ、……こんな気軽に恋愛相談を乗ることを提案出来なかっただろうと思う。
弘人はきっと、誰かに恋をしても俺を見捨てることはしないって、名前も知らないあの人の言葉でそう気づけたし、今ならそう信じられるような気がした。
何時まで経っても話し始めない弘人に対して、俺は苦笑いしてこう言った。
「あのなぁ、俺だって蜘蛛さえ見なければ過呼吸状態になる回数だって減ったんだ、もう少し自分のために行動しろよ。ここに毎日来るのだって、俺がちゃんと家に帰って来てるか不安だからここにいるのだってわかってるよ? それをやめろとは言わないが、もう少し自分のために時間を使って欲しいんだ。
だから、ちゃんと告白してきたその子と、真正面で向き合ってあげなよ? ……勇気を出して告白してくれたんだから、誠意を持って返事を返してあげて」
そう言った俺の表情を見て、弘人は涙目になりながら穏やかに微笑み、
「久し振りに、お前の愛想笑いじゃない笑顔が見れた。もう見れないかと思ってたから、ちゃんと笑っている姿が見れて良かった」
と、そう言われて初めて気がついた。自分の口元だけが緩ませるように、笑っていたことを……。
◇◆◇◆◇◆
告白されたことを相談された次の日。
給食を食べ終わった後、弘人はいつの間にか何処かに消えていた。
もう少しで掃除が始まることを知らせに、弘人を探しに行き、図書室の前を通りすがった瞬間、いつも聞き慣れた声が俺の耳に聴こえてきた。
何故かはわからないけど、俺は死角になる場所に隠れてしまう。
「あのさ、俺のことを良く知らない人なら、友達から始めようって言えたかもしれない。……だけど、君は友達で、一日中考え抜いたけど友情以上の気持ちを抱けなかった。期待させて待たせて君の気持ちに答えられないよりは良いと思う、君の気持ちには答えられない。ごめんなさい」
俺に相談と言うよりは、話を聞いただけって言った方が正しいかもな。
俺はただ、誠意を込めて返事をするようにって言っただけだし、答えを保留するより、今回の告白はしっかりと断るとそう決めたのは弘人の意志だ。
きっと、弘人のことだからちゃんと彼女を想って、好きで居てくれる相手と付き合った方が良いって、優しい弘人のことだから、きっと判断したんだろう。
だから、さっきの断る際に言っていたあの言葉はちゃんと弘人が一日中、一生懸命に考えた言葉だ。
直ぐには伝わらないかもしれない。でも、きっといつかは気づいてくれるはず。どんな思いで、弘人が告白を断ったのかを。
告白をした女の子の言葉を聞くのは無粋な真似だと思ったから、掃除の時間だと弘人に知らせに行くのを止め、俺は教室へ帰るために歩き始めた。
いい加減、弘人も中学生だ。知らせに行かなくてもちゃんと来るだろうし。
なによりも俺は、弘人がちゃんと自分の幸せを優先するために自分自身で考え、歩み始めたんだと、そう思うと自分のことのように嬉しくてたまらなかった。




