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第三十話

「棒、瑠を朕の末の娘の婿としたい」


 兄帝から、瑠に対して縁談がもちこまれました。

瑠はまだ言葉を話し始めたばかりですし、兄帝の娘に至っては、産まれたばかりで名前すら発表されていない状態。

娘を産まれた時から婚約させる等ということ自体は、あり得ない話ではありませんのでおかしなことでもないとはいえ、気が早い話です。


 政略としてはよくわかる話です。

大華帝国としての権威が、事実上国土も光の一部と化した今後も続くことが確実な以上、光と大華帝国皇帝家同士が、血筋の上でも一体化すると言うのは意味があることでしょうから。


 僕自身が、大華帝国の皇帝でありながら光の皇族であるとはいえ、血筋が遠のけば当然皇族としても扱われなくなるわけです。

そうなれば、大華帝国皇帝としての側面のみが強調され、反乱の旗頭などにされることになりかねません。

かといって、仮にも大華帝国皇帝家を冷遇しているとみられれば、それだけで反乱の大義名分にされかねません。


 ですが、光の皇族から娘が入れば、そのつながりは強化されますし、何より光の皇族同士の関係が強化されるわけです。

逆にいえば、僕に娘が生まれれば、兄帝の皇子が帝位についた際には、後宮に入れられる可能性が高くなるでしょう。


 その辺は割り切って考えるしかないですが、まだ生まれてもいない娘の将来までほぼ決まっているというのは、ちょっと……な感じはしますね。

それが皇族の特権に対する義務だと言えば、そこまでですが。


「陛下、そのお話、喜んでお受けいたします」


「よろしく頼む」


 形式としては、中書省から献策されて、兄帝が承認したことになりましたので、申し込んだのは、中書省長官である僕からという形です。

でも、その申し込みを大華帝国皇帝である僕に対して行うとなるのが、面倒な所。

自分の息子に兄帝の娘を婚姻させることを献策すると言うのも、微妙なものですね。


 ま、このことは形式にすぎず、幸さんも含めて、当事者の中では、提案したのが兄帝で僕が受け入れたにはなるんですけどね。

でもこの先例が出来ると、中書省長官が自分の子供と皇族の婚姻を献策する人が今後いろいろ出てきかねませんね。


 そんなことを普通に行えば反発の嵐ですし、光の皇室に利点があるからこその今回ですから、そこまで心配することもないでしょうか?

瑠が将来苦労することにはならないようにしたいと思いつつも、まだ生まれてもいないその先の世代までは、自分達に頑張ってもらうしかないでしょうか。




 現時点では、光が売る物品に対して冊封国は、税の徴収を禁止されていますが、光が購入する際には、関税をかけています。

このことは、国内産業を守ると言うことにおいてはそれなりに意味を持ってはいますが、冊封国の産物を購入する際には割高になってしまうという弊害が出てきました。

同等品質で、同等のものなら国内の関税を考えれば安くなる商品を購入するという選択が行われては来ましたが、品質は異なるものの関税を考えると使えないと言った場合の対処を考えると、いっそのこと、冊封国からの輸入に対しての関税も廃止するほうが、光にとっては利益が大きいのではないか? と考えたんです。


 勿論、他国の影響で光の産業が消滅するようなものは、ある程度対処が必要になるでしょうが、光の物価が高騰することを抑制するためには、他国の産品と競争させることが良いでしょうし。


 財政のことを考えましても、物価が高騰しますと、国家の支出が増えてしまうんですよね。

税収は、前年までの実績を元に計算されますので、物価が高くなりやすいと価値としての歳入額が目減りしてしまう計算になります。

関税で得られる税収がなくなることは、短期的には損失となりますけれども、長期的に考えれば物価高を原因とする反乱を抑制することが出来る、冊封国の物品が光に対して売れるようになるため、冊封国との経済関係が強化され、そう簡単に戦争に持って行きにくくなると言った効果が期待でき、戦役に支出する額を減らせることが期待できます。


 国防費は、平時からも維持費が大きいものですが、実際に戦争になれば消耗がかなり激しいものになり、一気に必要な費用が増えますからね。

戦いに使う費用を抑制できるならば、関税分ぐらい問題にならないぐらいの支出節約につながります。



 そう言った目論みで進めていたのですが……光の経済活動そのものが活発になりました。

冊封国の安い産物を購入するようになって、国内の産業に刺激を与えた結果、国内産業の革新が促進されたんですよね。

冊封国の安い産物を加工して、高い価値のものにして輸出すると言ったことが行われたのは、序の口です。

冊封国同士では関税がかかることに着目して、光を経由すれば関税なしで商品を売買できるということで、中継貿易が急増し始めたんですよね。


 当然、冊封国も馬鹿ではないでしょうから、冊封国同士の関税を低くする等で対抗することが考えられますが、今は特需で沸いています。

おかげで光に富があふれかえることになりました。


 その資金で新たな田畑の開発や産業の開発が行われ、それがさらなる富を増やすことに。

税収自体が、関税の額を比較に入れる必要がないほど上がったおかげでかなりの利益になりました。


 当然ながら冊封国も税収撤廃を模索し始めますが、光との関係のように戦争の結果等のことがない為、交渉が難航しなかなか関税引き下げ・撤廃には辿りつけないでいるようです。

その間にも光の中継貿易は儲けを増やしていきます。


 結果として、移動魔法や輸送魔法の使い手の人件費が高騰。

それを見て新たに魔法を習得して輸送に関わろうとうする人が増える等もしています。

運河の利用も活発になってますし、予想以上に成果が上がっていることに満足できます。


「ここまで行くとは思っていなかった。この勢いで、他の政策も成功させよ」


 兄帝からは、感状を授けられ、僕一家への給料も増やしてもらえました。

順風満帆とは、今みたいな状況のことを言うのでしょうね。


 杜子春みたいに、金をすべて失って一文無しになる心配は当面はしなくて良さそうですね。

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