第二十七話
魔法についての整備が一通り整いましたので、魔法を有効に用いるために軍を再編成することになりました。
僕は、法の提案を行う中書省の長官として、制度を整備する傍ら、表には見せない部隊の整備を兄帝に打診しました。
と言っても、大して複雑なものではなく、戦闘時に相手の上層部を一気に拘束して一瞬で降伏に追い込む舞台を作ろうと言う話です。
瞬間移動の出来る術者に、敵上層部のいる城に侵入させて、制圧・拘束を行えば会戦をして兵を消耗することなく戦を終えることが出来ると言う発想ですね。
もっとも相手もそれなりの対策を取るでしょうし、同様の方法で反撃される可能性もありますから、その対策を取ることも必要になりますけど。
強いて言うなら、一度しかできない大技です。
その意味では、ある程度多くの勢力に連合して光に攻撃させて一気にと言う外交政策に持って行くのが一番でしょうか。
現在、光と風に挟まれた国々が徐々に団結を勧めていると言う情報が入ってきているからこそ、整備をしようと言う話でもあります。
適度に団結させて、攻撃を仕掛けてきたとなれば一気に上層部を拘束して降伏させる。
もっともこっちが考えつくことは、相手もやる可能性がありますから防ぐための手段をどうするかと検討するために、こっちがどういうことが出来るか研究をするということでもあるんですよね。
こっちが出来ることは敵も出来るし、敵が出来ることをこっちはできないかもしれないと考えていかなければいけないんですよね。
まあ、それなりの対策さえとられてしまえば、成功可能性に対しての費用が高くなりすぎますので、必然的に抑制されていくとは思いますが。
団結している国々を暴発させる圧力としては、一番は風との交流強化です。
風と光が強大化すれば、必然的に他の国々は警戒するわけです。
風が強くなると言っても、現状では光のほうが風よりは強い状態ですから、風だけ残れば後はいくらでもやりようがあります。
まあ、風も光を全面的に信用などしていないでしょうし、似たようなことを考えていても驚きませんけどね。
外交や政治はキツネとタヌキの化かし合いとも言いますし、自分が今優位だからと言ってすぐにそれが崩れるとも限りませんし。
それこそ風も光と敵対してもおかしくないですし、表面上仲良くしてはいても重要な機密はまわしているふりにとどめます。
当然お互い様だとは思いますけどね。
変に手の内を明かしすぎては、逆に疑心暗鬼を招きかねませんしこの位がむしろいいのでしょう。
風は風で、光と友好関係を築くとはしますが、文化的伝統のなさについて、光を低く見ることはやめようとはしませんし。
そのくせして、光の魔法制度をまねしようとするんですから、滑稽と言えるのですが、ここは大人に何も指摘しないことにします。
国民達がどう思うかまでは、責任持てませんけどね。
部隊の設立は秘密裏にするため、部隊そのものの訓練の情報についても目くらましをかませることにします。
砦に籠る盗賊討伐訓練というのが主な名目ですね。
訓練そのものの存在は隠しません。下手に隠せば、他国の密偵の関心を買うだけです。
その位なら、日常訓練の振りをして攻防の訓練を繰り広げていたほうが変に報告されずに済むと言うことです。
盗賊討伐自体は、珍しいものでもありませんしね。
目くらましも兼ねてはいますが、本当の盗賊討伐も行います。
盗賊討伐の訓練をしているのに、盗賊討伐をしないと言うのも不自然ですし、討伐をすれば被害にあう人が減るのは確かですからね。
そして、一か所討伐すると、他も委縮して目立つとやられるとなって活動を縮小してくれることが期待できます。
それもあって、敢えて派手に見えるような討伐を行いました。
魔法で籠っている砦の基礎を崩して、混乱しているところを殲滅すると言う宮城襲撃で敵首脳部を無効化する作戦乙を実践してみたとも言うのですが。
これ防ぐのは、結構厳しいために、これだけの効果があるとなると対策を強化しないといけませんね。
こうして準備を進めて行き、実戦能力を持つにいたったと兄帝にも確信していただけるようになった頃、あることが発表されました。
大華連盟の設立です。
大華八帝のうち、光・風・成・大華帝国を除いた四国と帝国とは名乗っていない小国達が連合して、光・風・成に宣戦布告してきたのです。
大華帝国は、今回も蚊帳の外に置かれていますが、別に人口百人の島の動向等、誰も気にしません。
流石に、光と成の戦いを見ていたからでしょう。
宣戦布告と同時に軍を国境越えさせて来ましたが。
待っていた光としては、一気に宮城制圧作戦を発動させるに限ります。
特に困難に当たることもなく、四帝の宮城の占領を終えました。
皇帝や首脳部を抑えられた国々も、逃れた皇族が抵抗政権を作るなどしていますが、今度は自分達が正当抵抗政権だとの名乗りを繰り広げて内戦を始めるなどして、四帝は一気に弱体化。
光としては、彼らが内部で戦ってくれる分には、軍を出す必要もありませんしね。
完全降伏に追い込んで、一気に方をつけるとまでは行きませんでしたが、所期の目的はほぼ果たしています。
風は火事場泥棒を頑張ろうとしていたようですが、抵抗政権の軍にすら破れるという失態を犯して、風の弱兵ぶりが露わになるだけになりました。
風の自滅で、光の立場はかなり強化されました。
戦争開始前は、光と風は対等な関係でしたが、戦争終結時には、名目的とはいえ冊封を受け入れると風側から申し入れてきました。
四帝は、ちょうど良いので分裂した政権ごとに冊封国として認め、分割させました。
結果、大華八帝は、光の覇権の元に再度統一を取り戻しつつあります。
そんな時に入ってきた話に僕と光は翻弄されることになります。
大華帝国皇帝が僕に帝位の禅譲をすることを求めてきました。
幸さんが名目上、大華帝国の皇族と言うことにしたために、大華帝国の皇位継承権を主張できなくもない状況になっているのは確かです。
ただ亀として産まれた幸さんが大華帝国皇族の血を引いている等ある筈もなく、名目に過ぎないと誰もがわかりきっていました。
しかし今回は、その名目を利用して僕に大華帝国の帝位を禅譲すると言いだされたのでした。
正直な話、大華帝国は権威も実態もほとんどないと言っても過言じゃないでしょう。
それでも、大華帝国の歴史的な名には大きな意味がありますし、光の時代に大華帝国自体が変わったと公式に認めたことになります。
ただそれなら兄帝に直接禅譲してくれればいいのですが……
兄帝自身はある程度理解してくれていますが、宮廷は大混乱状態。
まさか、大華帝国の狙いは光の統一阻止じゃないですよね?




