第二十四話
風との盟約が無事締結されました。
風の宮廷での締結には、僕が正使として赴きました。
宰相補佐の役職、曲がりなりにも皇弟であると言う出自、瞬間移動で何かあったら脱出可能と言うことが選ばれた理由です。
もっとも、風の宮廷ならば依頼で行ったり、書庫に入り浸ったことありますので、魔法で行って帰ってくること出来ますと言ったものの、単行してどうすると宰相様と兄帝に怒られてしまいました。
僕自身、依頼で風の皇帝や上層部には会ったことありますので、特に問題ないと思ったんですけど、こういう盟約では形式が大事なため、随行要員を連れて行かないことは論外だったようです。
それでも、わざわざ旅をしている時間がもったいなかったので、使節団が風の国に入る直前までは光で執務を行い、瞬間移動で合流、風を出たらすぐに光に戻ると言うことをしてしまいました。
移動中に途中の国の宮廷に寄るようなことも今回の使節の性格上ありませんし、この程度の省略は、兄帝様も結果的には許してくれました。
風の宮廷からは、
「流石は、段持ち冒険者だけある」
変な感心のされ方をしてしまいましたが。
少なくとも、非礼であると非難はされずに済みましたので、問題なかったとみなしていいのでしょう。
盟約そのものは、締結後すぐに公表されました。
この盟約自体、存在を喧伝することで力を発揮するものですから、秘密にする意味ありません。
間の国々に、成・風に対してちょっかいを出せなくすること及び、変に光に対して対抗するための盟約を組むぐらいなら、光の成への権益を認めさせた上で光との盟約を考えさせる方向にすることが出来れば上出来でしょうか。
実際、目に見えて成に対する恫喝外交は減りました。
そのことで成からは感謝されましたが、冊封国の権益を守ることは、光の権益にもつながりますので成が光への依存を深めてもらえれば、それで万々歳と言えます。
瑠は赤ん坊だけあって良く泣いています。
ちょっと元気良すぎる気がしなくもありませんが、病弱を悩むよりはよほどいいことですし、いとおしく思えるのも確かです。
とはいえ、乳母を頼んでいるからこその余裕と言ったものもあるかもしれませんね。
自分たちで育てるとするには、僕が仕事で忙しく幸さんに全部押し付けると言うのと同義ですし、そもそも幸さんは元が亀なため、人間の子供をどう育てればいいのかと言うことが分かっていません。
乳母を頼まないという選択肢はあり得ませんでした。
僕にも乳母はいたみたいですが、父の代は乳母が多すぎて、乳離れするとお役御免となっていたようです。
今も宮廷に残っている僕たち兄弟の乳母は、兄帝とそのすぐ下の弟の乳母ぐらいのものですから、子供の人数が増えるに従って一時期な乳母で済ませるとなって行ったようです。
一時的な乳母で良いので、身分はある程度高くなくても良いとなり、宮廷に残ることも出来なくなったようです。
勿論、元乳母達への年金の支給は行っているとのことですから、見捨てたわけではないようですけど。
僕の乳兄弟もいる筈ですが、会ったことはありません。
兄帝の側近にも、兄帝の乳兄弟がいることを考えれば、ある程度親しくなることもあるようですが、過ぎたことは仕方ないでしょうか。
瑠の乳母は、兄帝が直接選んでくれた教養深くそれなりの身分の奥方です。
そのため、瑠の乳兄弟も早いうちから紹介されました。
僕自身が同年代の友達と言うものを持った経験がないため、息子の瑠にいるのはちょっとうらやましく思いますが、気が早すぎますでしょうか。
でも、僕自身が小さいころから勉強していたことを伝えたからと言って、赤ん坊に論語や四書五経を読み聞かせるのはどうかと思います。
これ自体は、別に瑠に限ったことではなく、小さいころから学問をさせれば身につきやすいと考えられた結果ではあり、実際にそうして育てられた子供が三歳にして、論語の一節を唱え始めたという報告があって以降、光で大流行しているというものなんです。
ただ僕自身、四歳から始めたわけですから、そこまで小さいころから始めなくてもいいのでは? とも思いますが、効果があるなら良いのかもしれません。
身体も早く動かせるようになるよう、手足を乳母が動かしてやるようにしているとのことですが、本人嫌がって泣いているのがちょっと。
僕と幸さんが二人して、ごめんねと瑠に対して謝ってしまうんですが、効果があると言うことであれば異を唱えるわけにもいきませんね。
これも元は僕が小さいころから修行したことをもっと先から始めれば大きな力になるだろうと言う発想のことですが、はいはいを始めることが何もしない子供よりも明らかに早い等の報告がある以上、任せるしかないのが実情でしょうか。
僕の場合は自発的にやっていたことですが、強制してやらされる場合は同じ効果があるのか疑問に思わなくもありません。
教育は教育、僕達夫婦が親として愛情を注ぐことは別に行うと言った形でやって行くしかないのでしょうか。
瑠がかわいそうに思う分、僕達がよりいっそうの愛情をと考えてしまうことは、恐らく他の家でも起きているのでしょうね。
「人の子供の育て方は、亀とは違うのですね」
「いや、僕もこんな育て方されてない筈だよ」
「そうなのですか?」
「うん、普通に引いてる。だけど、瑠の親は僕達なんだから、大変な思いをしている瑠を僕達が癒してあげようよ」
「そうですね。私達が出来ることをしてあげないと瑠がかわいそうです」
瑠も結構早く寝がえりやはいはいを出来るようになりましたので、効果は出ているようです。
効果が出ていると言っても、親としては複雑な気持ちになりますね。
僕達が無理に教え始めると暴走しかねないことを考えれば、この位でとどめておいたほうが良いのかもしれませんけど。




