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第4話 告白の手紙

黒川は、自室の机に手紙を置いた。

帰宅してすぐに開ける気にはなれなかった。

制服のまま椅子に座り、しばらくそれを見つめる。


(……落ち着け)


小さく息を吐く。

あのときの白石の様子が、頭から離れない。

顔を真っ赤にして、逃げるように教室を出ていった。


――あれが、演技とは思えない。


(でも……)


視線が、封筒に落ちる。


(この前も、手紙だったよな)


新学期初日。

突然渡された、あの「別れの手紙」。

結局は、練習だった。


(だったら、これも……)


そこまで考えて、黒川は首を振る。


考えても仕方がない。

封を切る。

中から、丁寧に折られた便せんを取り出した。

ゆっくりと、開く。

整った文字が、目に入る。


「地味で控えめなところが好きです」


思わず、眉が動く。


(地味で控えめ……?)


これって褒めてるのかよ。


だが――好きと言う言葉に悪い気はしなかった。


胸の奥が、じんわりと温かくなる。

だか、次の一行。


「私と、交際してください」


黒川は、言葉を失った。

胸が、大きく脈打つ。


(……告白、だよな)


どう見ても、それ以外の意味はない。

回りくどさはない。

まっすぐで、逃げ場のない文章だった。


「はあ……」


息が漏れる。


嬉しい。


それは、否定できなかった。

白石のことは、気になっている。

目で追ってしまうくらいには。


――だからこそ。


(これも、練習なんじゃないのか?)


疑いが、頭をもたげる。


あのときと同じなら――今回もそうかもしれない。


だが、すぐに別の光景が浮かぶ。


震える手。

真っ赤な顔。

逃げるような足取り。


(あれで……演技、なのか?)


考えにくい。


けれど、言い切ることもできない。


(分からない……)


黒川は、便せんを机に置いた。

視線だけが、そこに書かれた言葉をなぞる。


(どうすればいいんだ)


信じたい、と思ってしまっている。

だが、信じるには材料が足りない。

白石の行動は、どこかちぐはぐで、掴みどころがない。


(……また、練習じゃないって、どうして言い切れる)


答えは出ない。

考えは、堂々巡りを続ける。


やがて黒川は、便せんを丁寧に折り直した。

封筒に戻し、机の引き出しにしまう。

それでも、頭の中は静まらなかった。


ベッドに横になっても、目は冴えたままだ。

白石の顔と、手紙の言葉が何度も繰り返される。


(「好きです」……か)


短い言葉が、やけに重い。


(……本気だったら、どうする)


問いは、宙に浮いたまま消えない。


(いや――)


黒川は、小さく息を吐いた。


(だからこそ、確かめないと)


逃げても、意味はない。

明日、直接、確かめるしかない。

そう決めても、すぐに眠れるわけではなかった。

天井を見上げたまま、何度も寝返りを打つ。

結局、夜が深くなるまで、答えは出なかった。




***




翌朝。

黒川は、重たいまぶたをこすりながら登校していた。

眠れなかった理由は、言うまでもない。


(……今日、聞く)


そう心に決めると、胸の奥がわずかに軽くなる。

逃げずに向き合う。

それが、今の自分にできる唯一の答えだった。

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