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【機密文書】Artifact-1865-b 回収報告書



文書番号:ART-1865-B-REC-001

機密レベル:4(支部長以上閲覧可。レベル3以下は閲覧禁止)

作成日:20XX年X月X日(回収翌日)

作成者:財団 極東支部 管理部 記録課

配布先:極東支部長、本部管理部、パトロン会議(大西洋拠点)


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1. オブジェクト概要

正式名称:Artifact-1865-b

通称(非公式):「セレン」(回収班長による命名。詳細は7項参照)

分類:有機体・人型実体・知的生命体

現在の収容状況:極東支部移動拠点(洋上)隔離室にて軟禁。24時間医療監視下。Artifact-1453(孤島)への移送準備中。


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2. 回収経緯

回収日時:20XX年X月X日 22:40〜翌日 02:15(現地時間)

回収場所:中東 ████ 地域、財団極東支部管轄外の古城(財団施設「中東調査拠点」)

回収要員:

- 極東支部 警備部 警備班(班長:ウーティス・ヴァンス)

- 本部直轄 強襲班(班長:クロエ・ナギ)

- 現地残留調査班(生き残り3名)


背景:

世界同時多発的パンデミックの混乱に乗じ、現地政府派武装勢力が財団施設を襲撃。撤退作戦の最中、最深部の休眠施設にて対象が発見された。対象は財団が極秘裏に調査を進めていた「Artifact-1865(月面遺跡)」と同一文明の技術を用いたと思われる石室内に、座った状態で存在していた。


回収時の状況(客観記録):

古城の地下最深部は、人工的に温度および湿度が制御された空間であった。対象は石造りの台座に腰掛け、背筋を伸ばしたまま目を閉じていた。周囲には、財団の調査員と思われる遺体が3体横たわっており、対象を盾のように囲む形で倒れていた。死因は銃撃および失血死。対象に外傷はなく、衣服に至っても著しい汚損がない。


回収班長は対象を発見した際、即座に「生体確認」を行い、生命反応の有無を報告。その後、対象を抱え上げ、戦闘空域からの離脱を優先した。


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3. 物理的・生物学的特徴


外見年齢:10代後盤〜20代前盤

身長:155.3cm

体重:42.1kg(回収時。軽度の栄養失調および脱水症状を伴う)

性別:女性型(外見および内部構造にて確認)

髪色:銀色〜淡青色(可視光スペクトル分析の結果、既知の人間のメラニン構造と一致せず。色素細胞に未知の結晶構造を確認)

瞳色:淡い青(暗所においてわずかに発光。輝度は0.3ルーメン程度)

皮膚:著しい日焼けや外傷なし。体温は回収時34.2度と低体温気味だったが、48時間後に36.0度へ回復。


特記事項:

背部(肩胛骨間)および右前腕内側に、感情的高揚時あるいは特定の周波数への反応時に発光する幾何学的な文様を確認。発光色は青白く、Artifact-1453(孤島遺跡)およびArtifact-1865(月面遺跡)の構造物に見られる文様と類似率87%を示す。


血液検査(抜粋):

対象のDNAは、人類のものと基本構造を共有するが、染色体末端のテロメア構造に「未知のタンパク質保護層」が観測される。これは、回収された「寄生生物(パンデミックを引き起こしたもの)」の細胞構造と類似している。

現時点では、対象と寄生生物の直接的な関連性は不明。しかし、両者は同一の「起源」を持つ可能性が極めて高い。


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4. 行動特性・知的レベル


回収当初、対象は一切の言語反応を示さなかった。財団標準語(英語)、現地語、アラビア語、極東支部で流通している日本語・中国語のいずれにも反応なし。


しかし、以下の行動が確認されている。

-視覚追従:人間の顔、特に回収班長ウーティス・ヴァンスの顔を、他の要員よりも長く追視する傾向。

-聴覚反応:回収班長が「Artifact-1865-b」という呼称を発した際、反応なし。同班長が「セレン」という呼称を発した際、初めて微細な頭部運動(頷きに類する動作)を確認。

-自発的行動:窓の外にある月を、回収3日目の深夜に指差した。監視カメラ記録に残存。


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5. 付録:回収班長への事後聴取


記録番号:INT-1865-b-01

実施日時:回収翌日 10:00

実施場所:極東支部移動拠点タンカー 第2面会室

聴取者:管理部記録官 ████

対象者:ウーティス・ヴァンス(極東支部警備部 警備班長)


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[記録開始]


記録官:それでは、Artifact-1865-b回収に関する事後聴取を開始します。まず、回収時の状況について、組織的視点から簡潔に。


班長:地獄でしたよ。地上はゾンビだらけで、武装勢力はRPGまで持ち出して城壁を攻めてきた。我々は中庭に降りて防衛線を張り、調査班と負傷者をチヌークで逃がしました。対象は地下最深部にいました。現地で残っていた調査員が「最重要対象が残っている」と報告したので、俺と強襲班の残りで回収に向かいました。


記録官:最深部の状況は?


班長:石室でした。人工的に冷えていて、中央に台座のようなもの。対象はそこに座っていた。目を閉じて……まるで眠っているように見えました。周りには、守るように倒れている調査員の死体が三体。


記録官:対象に危害を加えようとする者は?


班長:いませんでした。武装勢力は最深部に到達していなかったようです。むしろ、対象を守るために調査員が死んでいたと思います。


記録官:分かりました。次に、最も重要な確認ですが——貴方は、なぜArtifact-1865-bに「名前」を付けたのですか?


班長:……ああ。


記録官:財団規定第12条、保護対象(有機体を含む)への感情移入防止の観点から、対象には正式な番号を割り当て、これを用いて呼称することが求められています。「名前」を与えることは、対象との不必要な親密化を招き、客観的な判断を鈍らせる原因となります。貴方はその規定を理解した上で、あえて?


班長:ああ、理解してますよ。規定は暗記してます。でもな、記録官。現場にいたのはお前じゃない。あの子は——あの子は、震えてたんです。目を見開いて、周りの銃声と死体を見て、声も出せずに震えてた。


記録官:それは、回収された対象の感情です。貴方がそれに介入する必要はありませんでした。


班長:必要があったかどうかは、現場の班長である俺が判断しました。あの子に「Artifact-1865-b、こっちへ来い」と叫んでたら、舌噛んで転びます。敵に位置も割られます。臨機応変でしたよ。


記録官:……臨機応変、ですか。


班長:そうです。それに、あの子は人間の形をしています。少なくとも見た目は。同じ人間の形をした存在に、番号だけで向き合うのは、現場の士気に関わります。強襲班のナギだって、あの子を「対象」って呼んでましたが、目は死者を見る目じゃありませんでした。


記録官:感情的な表現は不要です。事実を。


班長:事実ですよ。(小さく息を吐く)……あの子は、自分が何者かわかっていないように見えました。自分の名前さえ。だったら、こっちがつけてやっても差し支えないだろうと。俺は、あの子を道具として回収したわけじゃない。生きて、この狂った世界に連れ帰してやりたかった。それだけです。


記録官:……貴方の行動は、管理部の注意対象として記録されます。今後、対象への接近は制限される可能性があります。


班長:ご随意に。ただ、一つ言っておきます。あの子は、俺の声に反応しました。「セレン」って呼んだ時、初めて。規定で番号を呼んだ時は、まるで人形でした。どっちがあの子の保護につながるか、お前たちが判断すればいい。


[記録終了]


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聴取者所見:

回収班長の行動は、明確な規定違反である。しかし、回収班長が対象に接近しない状況下では、対象が自発的な摂食・休息を行わないことが確認されている。

現時点では、回収班長の存在が対象の精神安定に寄与していると判断。即座の隔離・再配置は困難。支部長ヴィクター・ヴァンスの裁量に委ねる。


---


6. 付録:医療班観察記録(抜粋)


実施者:極東支部 医療部 Dr. ████

期間:回収翌日〜3日後


対象は初日、固形物を全面的に拒否し、水分のみを求めた。水の成分分析を行ったが、特異な反応は認められない。


回収2日目、回収班長ウーティス・ヴァンスが個人的に調理したおかゆを持参した際、初めて自発的な摂食を確認。味覚の嗜好は地球の人間と大差ない模様。


特記事項:

対象の髪の色素は、地球には存在しない波長の光を反射している。月光下(波長約400-500nmの増幅環境)においては、わずかに自己発光する傾向がある。これは回収班長が命名した「セレン」との関連性を示唆するが、因果関係は不明。


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7. 付録:隔離室監視記録(抜粋)


日時:回収3日目 02:17

記録者:自動監視カメラ(カメラID:ISO-04)


対象はベッドから起き上がり、窓の外を見上げた。窓の方向には満月が確認される。対象は右手を挙げ、月を指差した。


その直後、対象の前腕内側の文様がわずかに発光。輝度は低いが、Artifact-1453(孤島)から観測された「光の柱」と同波長を示す。


対象は「セレン」という呼称に、初めて明確な反応(頭部の微動、視線の変化)を示したのも、この時刻から2時間後のことである。


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8. 結論および提言


1. Artifact-1865-bは、Artifact-1865(月)およびArtifact-1453(孤島)と深い関連性を持つ、現在人類の知る範囲外の知的生命体である。

2. 対象の細胞構造は、パンデミックを引き起こした「寄生生物」と類似した特性を持つ。これは対象が「感染源」である可能性を示唆するが、現時点では発症や感染力は確認されていない。

3. 対象は回収班長ウーティス・ヴァンスの存在下でしか安定的な精神状態を保たない。強制的な隔離は、対象の健康悪化および、対象が持つであろう「門制御能力」の喪失リスクを伴う。

4. 提言:管理部としては、回収班長への規律処分と、対象の厳重な監視を両立させるべく、班長を「対象管理責任者」として暫定配置することを推奨する。


以上。


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【レベル5閲覧用追記】


> パトロン会議への報告要旨:

> Artifact-1865-bは「鍵」である。Artifact-1453の完全な起動には、対象の生体コードが不可欠と推測される。

> 回収班長の「命名」は、対象との「接続」成立を意味する可能性がある。これは計算外の事態だが、利用価値は高い。

> 極東支部長ヴィクター・ヴァンスには、状況を掌握し、対象を管理下に置くよう厳命された。

> 対象の細胞組織から「寄生生物」と同系統の抗体あるいは制御因子が抽出できれば、パンデミックの終息が可能となる。

> 人道的配慮は不要。対象は「Artifact」である。


文書終了

こういう報告書を書くことに憧れていました。

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