表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
藍色の外套物語 ~親衛隊に任命されてから、うだつが上がらなかった日々が懐かしい時がある~  作者: 星河語
第2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/21

魔が差すと即ち、死を見る。 14

2025/12/25 改

『ヴァドサ・シーク隊長の苦闘の日々 ~親衛隊に任命されてからうだつが上がらなかった日々が懐かしい時がある~』を大幅に加筆修正しているものです。


 主人公の性格からすると、こちらの展開の方が作者としては納得しています。


 スマホでも読まれることを前提に、改行が多めです。今までとは違うやり方をしているので少し変かもしれません。ご了承ください。

「立ってもよろしいのですか?」


 シークの問いに、若様は恥ずかしそうに小さく頷いた。


「感謝致します。それでは失礼致します。」


 ようやくシークは立ち上がった。大丈夫だと思っていたが、けっこう足は(しび)れていた。意外に足腰が固まっている。


(やっぱり、あれ以上長くなったら歩けなかったかも……。)


 ぶざまな姿を見せなくて済んだのは幸いである。


「……ね、ねえ、あのね。」


 若様が話し出した。だんだん沈黙している時間が短くなっている。


「……そ…、そんなに……丁寧に…はな…話さなくて……いいよ。だって…、叔母上が……。」


 最後まで言わなかったが、きっと叔母が何か言うのではないかと心配しているのだろう。あまりにも可哀想であり、同時に無性に腹が立った。

 しかも、国王軍は王妃の命令ではなく王の命令で動くものである。そこまで王妃に遠慮する必要はない。こちらはじきじきに王と王太子に面会して命令を受けてきたのだ。

 ここらへんで一度、若様の認識を変えておく必要がある。


「……若様。少し説明をさせて頂きます。」


 シークはもう一度座り直すと、しっかりと目線を合わせた。若様はちょっとびっくりしたように、フォーリの外套(マント)をぎゅっと握る。


「私をはじめ部下達は、親衛隊であり国王軍です。国王軍は国王陛下より直々にご命令を賜り、任に就くものです。私はこちらに参ります前に、陛下と王太子殿下に拝謁し、直接ご命令を賜りました。国王陛下がご健在であられる今、私共は王妃殿下ではなく国王陛下にご命令を賜る者です。」


 若様はフォーリにしがみつきながらも、じっとシークの話を聞いている。


「もし、若様にどんな形であれ仇なす者があれば、それがたとえ、八大貴族の領主であろうとも、ためらわずに斬れというご命令を承っております。」


 若様よりもフォーリとベリー医師の方がびっくりしている。二人がはっと息を呑んだ気配がして、視線が突き刺さる。


「……叔父上が…そう…仰ったの?」


 若様が尋ねた。びっくりすると、かえってすんなり言葉が出るのだろうか。


「はい。王太子殿下も驚かれていました。事前にそのようなお話がなかったのでしょう。その時に陛下がご決断されたご様子でした。」


 その時、若様の双眸が揺らいだ。


「…あ…あに…うえは…、お元気だった?」


 あにうえ、とは誰かシークは戸惑った。若様に兄はいない。


「王太子殿下のことだ。」


 フォーリの説明にシークは理解した。


「お元気そうでした。ただ、若様のことを心配なさっておられました。」


 若様の両目から涙がぽろぽろとこぼれる。これは、どうしたらいいのだろう。普通の子どものようには対応できない。それに、あまりにも可愛らしい子なのでよけいだ。もし、街の真ん中だったら、すぐに変な大人がやってきて(さら)ってしまうかもしれない。


「若様……。説明しないとヴァドサが困惑します。」


 フォーリが優しく言って手巾ハンカチを出して若様の頬に流れる涙をそっと拭う。若様に向ける顔だけとても柔和で優しい。さっきの鉄面皮が嘘のようだ。思わずその落差に呆然としてしまう。


「……あ…あにうえ…は、私を…たすけて…くれた。…い…い、命の恩人なんだ…。」


 泣きながら一生懸命説明してくれた。

 その時、突然、シークは思い出した。王太子より手紙を預かっていたことを。うっかり忘れる所だった。


「さようでしたか。実は王太子殿下より、お手紙をお預かり致しております。お話申し上げるのが遅くなってしまい、申し訳ありません。」


 シークはすっかり忘れていた手紙を懐から取り出すと、フォーリに手渡した。封蝋(ふうろう)されたままで開けた痕跡(こんせき)は全くないはずだが、フォーリは確認してから若様に手渡す。


「若様、部屋に戻ってからにしましょう。」


 今すぐに開けそうな様子を見て、フォーリが注意する。


「……うん。」


 大事そうに手紙を押し抱き、嬉しそうな笑顔を見せる。シークは思わず左手のピンを握った。何というか、若様の周りに光りの粉が舞っているような、そんな錯覚が見えそうなきらきらした笑顔だ。

 なんだか、過ちを犯した者達の気持ちが分かる気がした。こんな気持ちが分かる気がするだけで危うい傾向だ。


 シークは危機感を感じた。


「……あ…ありがとう。ば…ヴァドサ隊長。」


 一度で名前を覚えている。以外だったが、切れ者の王太子の従弟なのだ。本来の力を出せればきっと、とても賢い子なのだろう。


「それでは明日、もう一度、部下達を連れてご挨拶にお伺い致します。何かご用意するものなどございますか?」


 シークの問いに若様はきょとんと首を傾げた。何か欲しいものもないのだろうか。それにしても、あまりにも可愛らしいので見とれそうになるのを耐えた。


「何か欲しい物などはありませんか?」


 聞き直すとフォーリを見上げている。そういう物はフォーリが全て管理しているようだ。フォーリに何か耳打ちされた後、ううん、と幼く首を振る。


「なければ、私はこれで失礼致します。ただ、フォーリに確認したいことがありますので、彼と話をしてもよろしいでしょうか?」

「…ふぉ…フォーリと?」


 どうしよう、とフォーリを見上げる。


「若様、私もヴァドサと話があります。その間、ベリー先生と一緒にお部屋でお待ち下さい。」


 若様はこくん、と可愛らしく頷いた。


「……分かった。」


 若様はシークの方を見ると、迷ったように小さく手を振ってから、ベリー医師に手を繋がれて一緒に歩いて行く。十歳より幼い子が手を引かれている様に見える。

 本来の成長ができる機会を奪われたのだと思えば、悲しかった。

 物語を楽しんでいただけましたか?

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。


                             星河ほしかわ かたり

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ