ハッカーの女
目の前のドラゴンは想像以上に大きかった。
「俺が最初に産み出したときは、象くらいの大きさだったのになぁ。でかくなりやがって」
俺はドラゴンの足の裏を短剣で傷をつけた。皮が分厚くて血が出てくるまでかなり深く刃を差し込む必要があった。
紫色の液体が傷口からしみだししてきた。俺は試験管のような容器にその液体を入れて蓋をし、地下のシェルターに帰ることにした。
「あの…ドラゴンに勝てるんですか?」
シェルターにつながる人気のない路地裏の扉を開けようとしたとき、後ろから声をかけられた。振り返ると、花飾りをしていて青みがかった長髪の美女が立っていた。目には涙を浮かべており、不安そうな顔をしている。
「いや、勝てるっていうか…」
俺は曖昧な返事をした。
「でもさっき、ドラゴンにを倒してましたよね?」
「あれは麻酔銃で気絶させただけだ。倒した訳じゃない。悪いけど急いでいるから。じゃあ」
俺はうしろを向き、扉を開けた。
「待ってください! 私と協力してください!」
「え?」
美女は胸の前で祈るように手を合わせ俺に懇願してきた。荒れ果てた大地が背景になっていることもあり、美女の美しさが映えていた。乾いた風になびく瑞々しい髪からは芳香が香ってくる気もした。
「協力て…」
「私はこう見えてハッカーだから、情報系には強い自信があります‼ 政府の情報とかならいくらでも入手できます‼ だから協力して人間の生活を取り戻しましょう‼」
美女は熱弁した。異常に胡散臭い。
「とはいってもなぁ、俺は別に人間の生活を取り戻したい訳じゃない。ただ自分で作り出してしまったドラゴンを責任をもって処理したいだけだ。誰かに頼る義理はない」
あ、言っちゃった。
「!…あなたが…ドラゴンを作り出した、鋳鈴博士ですか⁉」
「まあ、そうと言えばそうだが」
美女の目がキラリと光った。
「どうした? そんなに目を光らせて? 多額の懸賞金でも頭をよぎったのか? 悪いが捕まえないでくれよ#今は__・__#。ドラゴンの処理が終わってからなら捕まえてもらってもいいが」
「懸賞金なんてどうでもいいです。ただ実は…」
「実は?」
「ドラゴンが勝手に増殖してしまったのは私に原因があるといっても過言ではないんです」
美女の言葉に頭がこんがらがった。
「は?」
ハッカーを名乗る美女は語りはじめた。




