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どうして……

少し短めです。

 押忍!! 漢の中の漢を掲げる男、その名はガク。宇宙空間って夢がありますよね。水を浮かばせたいです。


 いつまでも全裸の女の子を頭の上に乗せてる訳にもいかない。

 体温が直接伝わるのはいろいろマズイ。


 主に倫理的に。


「ルアン。ちょっとこっちにおいで~」

「な~に?」


 馬車の荷台でルアンは果物と格闘していたが申し訳ないが、中断してもらう。


「両手を上げてごらん。バンザーイだ」


 俺が軽くやって見せる。


「ばんざ~い」

「ちょっとそのままじっとしてるんだよ?」

「わかった~」


 俺が手に持つのはサラのハンカチ。

 使用許可はもうもらっている。


 ハンカチを胸が隠れるようにし、両手が使えるようにする為、脇の下を通して背中で縛る。


「あははは! ガク、くすぐった~い」

「あ、もうちょっと我慢だ。……はい、出来た~」


 水色のハンカチを普通に簀巻きの要領でルアンに巻いて可愛く縛った。

 結び目が背中なので羽があるように見える。

 後ろから見るとお尻が出そうで危ういが、まぁ大丈夫かな?


 こんな小さな洋服って売ってるのかな?

 あ、特注で作ってもらうか。


 色々な服をそろえて写真を撮りたいな~。

 ノーマルに緑の妖精っぽいヒラヒラスカートの服も良いよな?

 少し変化球で顔だけ出る着ぐるみも良いかもしれない。クマとかウサギとか猫とかいろいろと揃えられるな。

 動きやすい普通の服も買ってあげないとな。

 あ! サラとお揃いでメイドコスも良いんじゃないか? サラも喜びそうだし。


 ……程々にしないとルアンに嫌われるしまうかもしれない。


 もし、『ガク、きら~い』って言われたら本気でショックだ。

 あ、ヤバイ。想像しただけで泣きそう。


「ガク~。どうしたの~。どこか痛いの~?」

「大丈夫だよ。優しいなルアンは」


 優しく頭を撫でる。

 あぁ、癒される。


「ガク~。げんきでた~?」

「でたよ~。ルアンのおかげだ。ありがとな」

「えへへ~。ガク、げんきでてよかった!」


 うちの妖精はなんでこんなに天使なのだろう?

 もしかしてうちの子はこの世で一番可愛いのでは!?


「ガク。このかっこうかわいい?」

「お姫様みたいに可愛いぞ」

「ほんとう~?」

「あぁ!」

「わ~い!!


 うちの妖精は可愛い。うん。確信。


「少し動きにくいと思うけど、何かにぶつかったりして怪我したら大変だからな。邪魔だからって脱いじゃダメだぞ?」

「は~い」

「うん。いい返事だ。ルアン」

「えへへ~」


 か、可愛い……。


「フフフ。甘々ですね、ガクさん」

「ん~? 可愛いから仕方ないよ~」


 あぁ……。

 俺の膝の上でウトウトしているルアン。


 何これ、動画撮っちゃう!!


「ルアン。疲れたら寝て良いぞ」

「……うん。ねむい……」

「おやすみ」

「おや……す……みぃ……」


 コテンっと寝た。

 電源が切れた人形みたいだな。


「ルアンは寝ちゃいましたか?」

「うん。気持ちよさそうに寝てるよ」


 普段持ってるバックに入ってるハンカチを取り出して膝の上で寝ているルアンに被せる。

 風邪を引くのか分からないが、一応被せておこう。


 まったく、やっと静かになった。

 目を離すとすぐにどっかに行っちゃうから目が離せない。


 馬車から転げ落ちそうになったり、荷物に潰されそうになったり、挟まったりと元気が良すぎるな。


「子供ができたお父さんみたいですよ?」

「俺も思ったよ。これが育児か」


 本当に大変だ。

 けど、本当に楽しいモノだ。


 けど、まさかルアンが……。


「サラ……」

「どうかしましたか?」

「ルアンは……どうやらあの本に封印されてたらしい」

「そんな……」


 先ほど、ルアンの可愛さを自慢しようとした時にちょどリョウさんの書き込みを読んだ。


「複雑で難解な術式で相当なランクの何かを封印する為の本だったらしい」

「それならルアンは……」

「あぁ、封印されるべきだったのかは分からないけど、相当な妖精だったんだろうね」

「ルアン」


 ルアンと遊んでいてずっと心の中で思っていた。

 なんで本の中にいたのだろうか、と。


 その結果は危険な生き物って事か。


「……先ほど掲示板を見てらっしゃいましたが、その時に?」

「うん。書き込みはしてないけど覗いたんだ」

「……ルアンがそんな危険な妖精のハズがありません!」


 サラは少し怒りが混じらた一言を放つ。


 俺の膝の上で無防備に涎を垂らしながら寝ているこの子が封印されるほどの凶悪なモノだったのか?

 俺もそんな風には見えない。


「サラ。俺もそう思う。ルアンは危険な妖精じゃないよ」

「もちろんです」


 本当に、なんでこんな良い子を封印したんだ?

 感情的になってはいけない。


 もし、この子が危険な事をした場合は俺が止めなくてはいけない。

 それが出来ないのであれば、今ここで……。


「クソが……」

「ガクさん……」

「いや、怒ってる訳じゃないんだ。だた……」


 この感情は何というんだろうな。


「ただ、悲しいとか虚しいとか。……俺って本当に弱いなって思ってね」

「……ッ」


 サラは馬車の打綱を握り前を向きながら俺に何かを言おうとしたが、口を閉ざした。


「この子を守りたい。って本気で思う反面、今の俺じゃ絶対に守れないのが分かる。この子が道を踏み外した時、俺はこの子を止められないかもしれない……」


 悔しいのかな?

 どうなんだろう……。


 ポッカリと心が空中に浮いてるようだ。

 

「サラ」

「はい」


 俺はサラの方を向かず、サラも俺の方を一切見ない。

 お互い、ヒドイ顔をしているのだろう。


「強くなろう。ルアンを。俺たちの子を守れるように」

「……必ず」


 しばらく無言のまま馬車は目的の場所に向かう。


 俺は結局、自分の心の感情が何なのか分からなかった。


 ざわつく心を落ち着かせて目を瞑り、身体の中の魔力を循環させる。

 少しでも早く強くなる為に。


----------


「ガク~。ガク? ガクぅ~!!」

「……ルアン?」


 目を覚ましたのか。

 全然気が付かなかった。


「あ、ガクさん。やっと気が付きましたね?」

「ん? ……あれ? もう夜!?」

「ガク、ルアンがよんでもへんじしなかった~。ぷぅ~」


 集中していると時間が経つのは早いというが、まさかここまで集中してしまうとは……。


「あ~。ゴメンな、ルアン。どうやら少し集中し過ぎたようだ」

「ガク、もうごはん! もぉ~」

「あはは……。めんぼくない」


 娘に怒られるダメな父親みたいだな。

 プリプリ怒っているが全く怖くない。むしろ心が温まってくる。


「よし。行こうか、ルアン」

「うん!」


 サラもこっちを見て微笑んでいる。


「サラ、お腹へった~」

「おなかへった~」

「はいはい。今、出しますね~」


 笑いあって楽しい雰囲気が俺を包む。


 心の中の焦りは消えない。

 けど、やる事は変わらないんだ。



   【第二章完】

これにて第二章が終わりになります。

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