フル・メタル・ラビット
警告!!
本作は東方Projectの二次創作です。
原作、または貴方のイメージと違う設定があるかもしれません。
自分の持つ東方Projectのイメージが損なわれるのが嫌だと感じた場合は、速やかに読むのを中断してください。
本作には映画「フルメタルジャケット」のネタバレ要素、綿月姉妹のキャラ崩壊、玉兎のキャラ崩壊などが含まれています。
1・月の海兵隊
ここは月面、静かの海。海と言っても水は無い。
人類の常識では当たり前の事だが。
「ワン、トゥ、スリー、フォウ、ムゥン、シティ、マリンコゥ!!」
ワン、トゥ、スリー、フォウ、ムゥン、シティ、マリンコゥ!!
「ワン、トゥ、スリー、フォウ、アイ、ラブ、マリンコゥ!!」
ワン、トゥ、スリー、フォウ、アイ、ラブ、マリンコゥ!!
今ここでは、月都海兵隊の強化訓練が行われている。
いつの間に人類は月に植民したんだとか、いつの間に月が軍隊を持ったんだとか言わないでほしい。彼らはそもそも人類では無いし、軍隊と呼べる程の規模でも無いのだから……
事の始まりは、一枚の記録媒体だった。
人類は知らない事だが、月には文明が存在する。
今、地球上にいる人類が、その姿を見せる遥か以前に、月へ移住した者達がいた。その者達は、生命が争い、潰し合う中で生じる『穢れ』が生命の寿命を短くするという事を発見し、それから逃れる為に月へ移住したのだ。
彼らはそこで、非常に高度な文明を築いていた。
月の裏側、結界で隠されたもう一つの月世界にある月の都。そこでは、月人達が何不自由の無い生活を営んでいる。
その平穏を守る為、守護の役割を担う者達がいた。
綿月家。
千年以上にわたり、月の護りを任されてきた名門中の名門だ。
彼らは月の守護だけではなく、地球の監視も務めていた。月人にとって、地球は自分達の領土という認識なのだ。
その家の姉妹、豊姫と依姫は月人の中でも特に優秀で、妹の依姫はその身に八百万の神を降ろす事も出来た。
その妹の方には一つの悩み、いや、望みがあった。
玉兎達に強くなってほしい。
玉兎とは、月人の代わりに様々な雑事を行う月の兎の事だ。
兎と言ってもウサ耳以外の見た目は人と変わらない。
綿月家では素行の悪い玉兎を引き取って自分達の私兵として鍛えているのだが、これが思うように進まないのだ。
玉兎は本来臆病な性格で、そもそも争い事に向いてない。どれだけ鍛えようとしても、怠け、さぼり、逃げ出す。
何度お仕置きしても、争いに関わる事には真剣に向き合おうとしないのだ。
どうすれば玉兎達を一人前の兵士に出来るのか?
紫のポニーテールが特徴的な少女、綿月依姫は考えていた。
ある日の事。
依姫は姉に言われて月都の外へ様子を見に来ていた。何かが月に迷い込むのを感知したらしい。
月面には、稀に地上の者がやって来る事がある。
今までも、自力で宇宙を越えてきた人類。月都にちょっかいを出す妖怪。神隠しにあった地上人など、様々なモノが来たものだ。
依姫はお供もつれず、姉に言われた場所を調べていた。些細な事なら一人で十分だし、大事なら玉兎は邪魔になるからだ。
そこまで考え、溜め息一つ。
「はあ…」
――せめて、敵前逃亡なんて真似だけはしないようになって欲しいんだけどなぁ。
依姫は辺りを調べていると、薄い箱の様な物を見つけた。どうやらこれが、今回迷い込んできたモノらしい。
箱の表面には、地上の兵が被る兜と英語の文字が写されている。
箱の中を見てみると、一枚の円盤が納められていた。
DVD。
月の技術からすれば、骨董品どころかアンモナイトの化石の様な代物だ。
特に妖気や思念の類も感じない。量子力学的偶然で、この月都に迷い込んだのだろう。
「ゴミね」
そう呟くと、依姫はそれを処分しようと愛宕の火を召還した。地上の物は穢れているので、高熱滅却するに限る。
呼び出した火に、『ゴミ』を投げ込もうとする依姫。
だが、彼女はある事に気づき、思い止まった。
この箱の表に書かれている文字と兜は、以前、自力で月に来た者達の国で使われているものである。
依姫は「アポロ」と呼ばれる計画で月面に来た者達の事を思い出し、頭の中にある考えが浮かんできた。
――地上の者達はとるに足らない存在ではあるが、それでも、一番最初に月に届いたあの国は、地上では一番優れた国なのだろう。それなら、ひょっとしたら、その国の兵の訓練水準は、あの玉兎達に修行をさせるのに適したものかもしれない。
箱に写る兜を見る。
兜には「生来必殺」を意味する英語が書かれていた。
これまで依姫が玉兎達に行ってきた修行は、自分が師匠から受けた修行を元にした我流だった。玉兎に合わせて手加減はしていたのだが、それでも玉兎達には大変厳しいものだったのだ。
………
――これも何かの参考になるかもしれない。
依姫は、その記録媒体を持ち帰る事にした。
2・投げ捨てられたモノ
結界の外。
静かの海。
そこでは今日も、総勢十名の玉兎達のランニングが行われていた。
「ユーカーリーン、は、ビー○ーエィ!」
ユーカー○ーン、は、ビービーエィ!
「ハー、クゥ、○ーィは、ワ○サラシ!」
○ー、クゥ、レーィは、ワキサラ○!
ランニングのリズムに合わせて歌を歌う玉兎達。
何故、こんな歌を歌うのかと言えば、彼らの主である依姫からの命令だからだ。
命令通りにしないと「お仕置き」が待っている。
ちなみに、歌詞は依姫によるものである。
「ゲン、ソウ」
ゲン、ソウ、
「キョウ、は」
キョウ、は、
「ツキ、の」
ツキ、の、
「モノ、だ!」
モノ、だ!
「オレにヨシ!」
オレにヨシ!
「オマエにヨシ!」
オマエにヨシ!
「ウン、ヨシ!」
ウン、ヨシ!
………
以前よりも鋭くなった目付きで、歌いながらランニングをする玉兎達。
その頭の中には、一つの考えしか無かった。
――どうしてこうなった?
あの日、姉から指示された場所で見つけた記録媒体を鑑賞した依姫は、とても常識的な感想を抱いた。
全くもって参考にならない。
箱の裏面を碌に見なかった依姫は、例のDVDの内容を地上の軍隊の教官用教本のような物だと思っていたのだが、それは本当に酷い内容だった。
新兵を不条理に口汚く罵る教官。
原始的なだけの訓練内容。
玉兎との比較対象になりそうもない人間達。
唯一、玉兎達に似た行動をとる穏和そうな太っちょは、ドジを踏む度に教官から酷い仕打ちを受けて仲間の足を引っ張り、今はベッドの上でその仲間からの袋叩きを受けていた。
――こんなんだから、地上は穢れでいっぱいなのよ。
これ以上は見る価値無しと、依姫は記録媒体の再生を止めようとしたが、そこで場面が変わった。
例の太っちょが銃を撃ち、それを、あの鬼教官が褒めていた。
どんな時でも罵る事しかしなかったあの教官が、だ。
彼はそれほど成長したのか?
見ると、太っちょの目付きはがらりと変わっていて、それは一端の戦士のようにも見えた。
――これは、もしかして…
依姫は太っちょが開眼したのだと思った。
――もしかすると、あの鬼教官の罵倒には駄目な奴を伸ばす効果があったのかしら? あの、玉兎のように臆病そうなふとっちょが、一人前の兵士に……
これはいけるかもしれない。
一瞬、そう考えた依姫だったが、その考えには抵抗があった。
――確かにあの太っちょは強くなったのかもしれない。けれど、人間と玉兎は違う。常識的に考えて、同じようにうまくいくとは………
常識的…?
依姫は、今まで自分が玉兎達に行ってきた“常識的”な修行の数々を思い返す。
彼女は師匠の教えに従い、考え付く限りの事をしてきた。できる限りの手を尽くして玉兎を鍛えてきた筈だが、それでも彼等は一向に強くならなかった。
そう、“常識的”な修行では駄目だったのだ。
思わず笑みがこぼれる。
――ならば、“非常識”な訓練を施すまでだ。
そう思い、記録媒体を最初から、じっくりと見る依姫。
その顔には少しの迷いも無い。
…常識は、投げ捨てられた。
3・月面都市の鬼姫軍曹
依姫は、地上の記録媒体を見るのを半分より前の所で止めた。場面は新兵達が訓練を終え、任地を言い渡される所だった。
――おそらく、後の部分は細かい指導要領や、あの新兵達がどのような戦果を上げたかの記録なんでしょうね。
記録媒体の事を軍人の教官用の教本と勘違いしていた依姫は、そこから先を見なかった。
――大体の要領はわかったのだ。後は私だけで十分。地上のものにこれ以上頼るなんて情けない真似は出来ないわ。
依姫は、記録媒体から得た知識を元に、玉兎達の訓練計画を練り始めた。
……ここで最後まで見ておけば、いや、せめて箱の裏面でも見ておけば、後の地獄は無かっただろう。
玉兎達には「月都海兵隊」と言う名称が与えられた。
地上の「海兵隊」という組織は、地上で何事か有ればすぐに駆けつける戦闘部隊であり、その名は地上の悉くを支配する月の部隊に相応しいものだと依姫は考えたのだ。
海と言う字が入っているのも良い。
また、新しい発想の元になったあの記録媒体の軍人達への感謝も込められていた。
我らの武名は「海兵隊」の名と共に。
依姫は、そう考えたのだ。
玉兎達に課せられた新しい訓練は、それまでとは違う意味で厳しく、そして非常に過酷なモノだった。
玉兎達が苦手だった精神修養や、難しい技術の習得などの時間は減った。
代わりに、体力を限界まで追い込むような特訓が一日中続くようになった。
それは、玉兎達にとって大変辛いモノだった。
訓練中、休んだりへたり込んだりした者には、依姫から容赦の無い罵声が浴びせられる。
「早く来い! のろま、動け!」
「チンタラするな!」
「さっさと立て!」
障害物をうまく乗り越えられないと罵声を浴びせられる。
「ダボケツを上げろ! どうなってんだ貴様!」
「これ以上迷惑かけるな! さっさと乗り越えろ! 動け!」
「私の障害物から降りろ! やめちまえ! さっさと降りろグズ!」
戦闘訓練の内容は今まで通りだが、負けた者はやっぱり罵声を浴びせられる。
「ふざけるな! 本気出せ! ウサ耳落としたか!?」
「BBAのフ○ックの方がまだ気合いは入ってる!」
「とことん鍛え直すぞ、国津神の○○が粗○○になろうとも!!」
…依姫様、意味わかって言ってるのかな。
そう思う玉兎もいたが、口には出さない。
下手な事をすれば、「お仕置き」が待っている。
それはとても恐ろしいモノだった。
ある者は、行進の時に幼稚園児の格好で子供のように指をくわえるよう命令された。
ある者は、皆の前で徹底的にウサウサ扱き下ろされた。
ある者は、皆が連帯責任で腕立てをしているその場でお菓子のニンジンをかじらされた。
最初の頃こそ、辛いよう、辛いよう、と夜毎枕を涙で濡らし、影で依姫の悪口を言いあって鬱憤を晴らしたりしていた。
だが今では、誰も泣かないし笑わない。
ただ、機械のように正確に。
ただ、兵器のように純粋に。
ただ、一発の弾丸のように迷い無く行動する。
それが一番の近道なのだ。
彼らの目は、あの記録媒体の中の「開眼した」太っちょと同じモノになっていった。
訓練もいよいよ大詰めとなり、静かの海では玉兎達による大演習が行われていた。
眼前で行われる演習を見て、依姫は満足していた。
あの臆病で要領の悪かった玉兎達が、怯えの表情を微塵も見せずに自分の号令一下、困難な状況を次々と突破していく。
自律機銃の放つ弾幕の嵐の中を匍匐前進で黙々と進み、指定された浮動標的に数多くの命中弾を浴びせ、地雷原の地面を短剣で探って次々と地雷を発見、無効化していき、爆炎の中を雄叫びを上げて突撃する。
完璧だ、と依姫は思った。
今行っているのは地上人の戦争を模した状況だが、かつて月に侵攻を企てた妖怪達が行っていると言う“弾幕ごっこ”の状況においても、玉兎達はかなりの高成績を叩き出していた。
新しい訓練を受けた玉兎は皆、乾いた砂が水を吸い込むように教えられた事を吸収し、部隊としての戦闘能力は幻想郷の全戦力を凌ぐ程になっていたのだ。
依姫は感激していた。
――この子達も、やれば出来る子だったのだ。
依姫は、これまで心を鬼にして教育し続けたのは間違いではなかったと確信した。
厳しい訓練によって、彼らが日に日に無口になっていくのを見るのは心が痛んだが、それも、彼女達を一人前の兵士にしてやりたいと思えばこそ、依姫は厳しい態度をとり続けられた。
見てみれば、玉兎達の目は、あの記録媒体の鬼教官が『特級射手』と称する程に成長した例の太っちょと同じ、闘士そのものの目になっている。
嬉しさに曇る依姫の目には、彼らの瞳はそう映っていた。
眼前には全ての状況を終了し、完璧な隊列で依姫の言葉を待つ二十の紅い瞳。
――皆、よく、ここまで頑張ったわね。もう、貴方達は立派な兵士、いえ、一人前の月の戦士よ。
依姫は宣言した。
「本演習の終了を以て、諸君等の訓練課程の終了とする。解散!!」
…それを聞いた玉兎達の口が、ほんの少しだけ、歪んだ。
終・完全被甲弾頭兎
綿月邸。
依姫の部屋。
玉兎達への訓練が終わった今、依姫は例の記憶媒体を最後まで見ようと思っていた。
自分の行った訓練の成果と、記録媒体に収録されているであろう鬼教官の成果。どちらが優秀なのかを確認する為だ。
比較では無く、確認である。
彼女は自分の成果に絶対の自信を持っていた。
――私の訓練では皆、イジメなんてしなかったし、全員があの「開眼した」彼と同じような気迫を発するようになった。何より、月の民である私が地上人より劣るなんてありえないわ。それより、厳しい訓練を耐え抜いた玉兎達へ、どんなご褒美をあげようかしら?
そんな事を考えながら、再生機のスイッチを入れる。
記録媒体の再生が始まる。
そして…
映像からは一発の銃声。
――どういう、事?
依姫には理解できなかった。
あの鬼教官が「開眼した」彼に撃たれ、そして………二発目の銃声。
――なんで?
場面は依姫の理解を待たずに次へと進む。
あの新兵達の戦場での記録。
いささか下品な日常に、小規模の戦闘。
――いや、そうじゃなくて、どうなってるの?
依姫の思考はまだ追い付かない。
コンコン。
依姫の部屋の扉を叩く音がする。
――姉様かしら?
そう思ったのだが、それにしては妙だ。
気配が感じられない。
依姫に気配を感じさせずに部屋の前に立つそれは、再び、三度、四度、コンコン、コンコン、コンコン、と扉を叩いた。
やがて、一人の気配が感じ取れるようになる。
――この気配は………
その気配は、依姫が訓練した玉兎のモノだった。
――なんで玉兎が? それも、私に気配を感じさせずに…? それに、門番は何をしていたのかしら? 玉兎を断り無しに屋敷に入れるなんて……
この時、依姫の頭の中に、悲惨な最期を遂げた鬼軍曹の言葉の一つが浮かんできた。
『貴様らは厳しい俺を嫌う。だが、憎めばそれだけ学ぶ』
……彼女達は、非常に多くを学んだ。一人につき一柱ではあるが、玉兎の身で神降ろしが出来る程に……
扉の外には、よく訓練された玉兎。
おそらく、門番やその他を一声もあげさせずに無力化し、ここまで来たのだろう。
穢れは感じない。
それはつまり、殺すより難しい非殺傷で皆を無力化してきたという事だ。
――いいじゃない。上等よ。
依姫は奮い立った。自分が教育した玉兎がどれ程のモノになったのか、直接確かめるのも悪くない。
――確かにあの子達は強くなったが、私から見ればまだまだだ。ちゃんと力の差を教えてやれば、扉の前の子もおとなしくなるだろう。
依姫は気合いを発し、扉に向かった。
次の瞬間。
「お礼参りにいこうぜ」
記録媒体の映像は一人の逞しい兵士を映し、扉の前の気配は十倍に膨らんだ。
それは一瞬の事で、すぐに気配は一人分になったが、依姫に事態を把握させるには十分だった。
…皆、来てる。
ここで一つ。
何故、玉兎達の中でイジメが無かったのか?
答えは簡単。
依姫は玉兎達を、皆平等に「可愛がった」からだ。
意図してそうなった訳ではないが、玉兎は皆おっちょこちょいなので均等に「お仕置き」の順番がまわってきた。
目立つ対象がなければ、イジメというのは起きにくい。
むしろ、依姫一人を「敵」とする事で玉兎の団結は高まっていった。
追記。
玉兎には「波長を操る」能力がある。
その能力を応用すれば、玉兎同士で無線通信、テレパシーのような事が出来る。
訓練を受けていた玉兎達は、その能力で互いに感情を密にしていたのだ。
依姫も、玉兎達の情報共有には気づいており、それは素晴らしいモノだと考えていた。
個々においては弱くとも、互いが互いを的確に補い合えば、その力は何倍にもなる。
屋内への突入作戦などで一番の問題となる、多方面からの突入タイミングの同期も、彼等には何の障害にもならない。
彼等は今や、二十本の腕と二十個の瞳、十の頭と体を持つ、一つの「個」である。
そう、それは本当に素晴らしい能力だ。
その矛先が自分に向けられなければ。
…扉を叩く音が増えている。
コンコン、コンコン、ゴンゴン、コンコン。
依姫は焦っていた。
彼ら一人一人なら問題にならない。
彼らが束になったとしてもなんとかなる。
だが、彼らが綿密な連携を組んで仕掛けてきたら…
扉を叩く音が心無しか激しくなる。
コンゴン、コンゴン、ゴンゴン、コンコン。
――ヤバい。
本当にヤバイ。
どど、どうしよう?
扉を叩く音は、はっきりわかる程大きくなる。
ゴン、ゴン、ゴン、ゴン! ゴン! ゴン!
――ひえぇぇ~。
た、たすけて姉様!
…その姉、綿月豊姫は、とっくの昔に逃げ出していた。
扉から響いてくるのは、もはや騒音、轟音だ。
――そうだ、窓から…
窓から逃げ出そうとして、そして息を飲む。
外を見ると、そこはブービートラップの園だった。
見てとれるだけでも、とんでもない量の罠。月都の科学の粋で作られたそれらは、依姫でも迂闊に近寄れない代物だ。
玉兎達はこれだけ大量の罠を、月都最強の依姫に気づかれずに設置、埋設したのだ。
依姫の退路を断ち、なおかつ自分達の戦力を集中する為に。
退路は閉ざされた。記録媒体からは明るそうで、物悲しい兵士達の歌が聞こえてくる。扉も、もう限界だ。
画像は暗転し、エンディングが、スタッフロールが流れ始め…
そして。
一際大きな音と共に、扉は蹴破られた。
そこには、二十の狂気の瞳があった。
終
結果・さもありなん
月都の病院。
その一室に綿月依姫はいた。
全身を包帯でぐるぐる巻きにされた木乃伊のような格好になっており、頭からピョコンと飛び出した紫のポニーテールだけが色彩を持っていた。
――私は負けたんじゃ無い。
訓練を頑張ったあの子達に「最強」に勝利するというご褒美をあげただけよ。
ぐすん。
完
本作を読んでいただぎ、ありがとうございました。
本作はただ、軍曹ソングに合わせたトウホウテキナナニカをやりたかっただけで始めてしまいました。
とりあえず、それだけです。
本作を読んでいただき、本当にありがとうございました。




