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アルティメイト ~最凶な世界でもエンジョイライフ~  作者: ちょばい


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98/98

38.あ……ぽ…………∵

【サイン視点】


「これ以上の戦いの回避は不可能ですゴザルさん」

「この先に大量の生物兵器がいます」

「すでにこちらを捕捉済みっすね。逃げても執拗に追われるっす!」


ゴザルに付き従う機械兵器たちが突然立ち止まり、不吉な宣告を始めた。


「でも、ここを抜けないと帰れないよね」

「そうだな、アミュー。俺たちの車はこの先だ。姉御の『前線予報』でも、ここまで戦場になる予定はなかったはずなんだがなぁ」


アミューが臨戦態勢に入る。久しぶりに感じる、彼女の「ガチ」の殺気だ。

隣で煙女を背負っているグォンドが、生唾を飲み込む音が聞こえた。


「ゴザルさん、合体しましょう」

「っすね。合体した方が楽に切り抜けられるっす」

「合体……する? しない?」

「合体……?」

「さ、サイン殿の前であまり《合体》という言葉を連呼しないでほしいでござる……!」


なんだなんだ? 面白そうじゃねぇか、見せてもらおうじゃないの。

ゴザルの周りに、美少女型機械兵器たちが集まっていく。


「赤は、返り血を隠すための仮面マスクに」

「白は、右腕を強固なシールドに」

「青は、左腕を鋭利なブレードに」

「緑は、右脚の踏み込みを倍化させるブースターに」

「ピンクは、急所の防護を担当するっすー!」


彼女たちの体がパーツごとに分解され、ゴザルへと次々に装着されていく。

……左脚のパーツはないのだろうか? と思わなくもないが、無粋なツッコミは飲み込んだ。


ただ、ピンクが急所防護を担当しているせいか、ゴザルの股間周りだけが鮮やかなピンク色になっていて、正直言って猛烈にダサい。


顔面には赤い面頬が装着され、左腕には白いラウンドシールドが輝き、右腕には青く発光する刀が握られた。

右脚はブースターを搭載した無骨な機械脚へと変貌している。刀を軽く振るえば、周囲にバチバチと青い電流が走った。……そこだけは、素直に格好いいと思う。


「さあ、みんな!拙者が先陣を切るでござる!はぐれないように頑張ってついてくるでござるよ!」


恥ずかしさを隠すためか、少しヤケクソ気味に吠えるゴザル。

もちろん、喜んでついていかせてもらいますよ。




ゴザルが外へと飛び出した直後――。


黄色と黒の縞模様をした弾丸が、視界を埋め尽くさんばかりに飛来した。

弾丸なんて通常は肉眼で追えるものではないが、これだけの物量だと俺にさえはっきりと見える。


弾丸の群れが一瞬でゴザルを包み込む。

「ござあぁぁぁーーー!!」


青い刀を振り回し、ゴザルはその弾幕を強引に切り払った。

飛び散った残骸を一目見て、俺はその正体を察した。


「『BEE・ショット』か…」


《BEE・ショット》

最前線生物兵器『エンパイアクイーン』が飛ばす生きる弾丸だ。弾丸が生きてるので攻撃も避けるし、強力な毒まで付いているので一発でも受けるとアウトだ。まあ、回復薬・紫で解毒できるので俺達なら問題ないな。


俺の方にも少し飛んでくるが、それはアミューが握りつぶしてくれている。


グォンドは苦戦しているようだ。頑張って殴ろうとしてるが拳が避けられている。


しかしそれはアミューが小石を投げ飛ばし、撃ち落として事なきを得ていた。


「これは思った以上にアカンでござーる!予定変更!拙者はエンパイアクイーンを倒しに行くでござる!サイン殿とアミュー殿頑張って生き残るでござる!」


ゴザルの右脚が激しく輝いたかと思うと、次の瞬間、彼はその場から消失した。

『縮地』ってやつか。速すぎるだろ。



「さて…残された俺たちで、こいつらをどうにかしなきゃならんわけだが」













「ア……………………ア………ポ…ポ……ポ…」


俺達のところには顔に腕が四本生えた、気持ちの悪い大きな生物兵器がこちらに向かって走ってくる。


顔が(∵)になっていてて、煙女と同じくらい感情を感じられない。


「あーあ、俺は戦いは専門外って何度も言ってんのによぉ…」


俺はヤミイチから買ったスカベンジズのハイエンドライフルを取り出しあの『特殊弾薬』を装填、そいつらに射撃する。


そいつらはその弾丸を手で、何事もないように払った。刺さってくれもしないんすね。


アミューが射撃している俺の懐からマガジンを取り出す。そしてそれを迷わず飲み込むと、瞬時に右腕から出した。


「サイン!これ!」


俺は即座に残弾のあるマガジンを捨て、アミューが再構成したマガジンを装填。再び射撃を開始した。


今度の弾丸は弾かれず、しっかりと奴らの肉体に突き刺さる。

気持ちの悪い動きをしていた生物兵器の動作が、ピタリと止まった。


「ア…ア……………………ポポポポポポポポポ!」



その弾丸が当たった生物兵器達は突然おかしくなったように地面を転げ回った。これが『くすぐり弾』の効果か。いいねぇ。


以前、俺の腕が折れた時にアミューがギプスを強化してくれた。きっと同じような原理で注射針が刺さるように強化してくれたのだろうな。


「ナイスだアミュー」

「うん!」


俺達は車のある方向、前線の外に向かってなりふり構わず全力で走る。


――ズガァァァンッ!

「ア……ポ…」


目の前の地面の下からアポアポ生物兵器が突然飛び出してきた。


「邪魔!」


アミューが即座に蹴りを見舞う。だが、奴は4本の腕で器用にそれを受け流した。

衝撃を相殺されたのか、地面を数メートル滑っただけで、ダメージを受けた様子はない。


こいつら…アミューの攻撃を耐えるか。相当強いな。


だが、隙としては充分だ。俺は追撃の『くすぐり弾』を叩き込み、そいつも再起不能の笑い地獄へ突き落とした。


振り返れば、グォンドも歯を食いしばりながら、煙女を背負って必死についてきている。


俺は視線を前に戻し再び走…!


アポアポたちが暴れ回った振動のせいか、俺の足元の地面が突如として崩落した。

もうあいつのことは『アポアポ君』と呼んでやる。余計なことしかしないな、あいつは!


「サイン!」


あー、これアミューも間に合わねぇな。俺の体は奈落へと落ちていく。あんまり深くないといいなぁ…深いと戻るのが面倒なんだ…俺は落下しながら、アミューに指示を飛ばした。


「俺は大丈夫だ!煙女とグォンドを助けて前線から離脱しろ!」


「サインーーーー!」


…俺の指示が聞こえなかったのかアミューも飛び降りて来ちまったよ…視界の端にはグォンドも飛び込むのが見えた。


ええ……もうこの状況なら、俺一人の方が確実に安全に帰れるんだが、全員ついてきちゃうのか。そうですか。


仲間がいると上手く隠れられねぇんだよ俺。


でも、泣きそうな顔で俺の方へ手を伸ばしてくるアミューに、「邪魔だ」なんて口が裂けても言えるわけもなく…


アミューは空中で俺の体を掴むと、そのまま俺の下へと自分の体を滑り込ませた。

……あの、アミューさん。これ、あの筋骨隆々のヘビィさんのお得意技――プロレスで見たことがある…

バッグブリーカーだーーーーー!!!!!

ドォーン!!!!!グキッ…


落下の衝撃と共に、俺の体が「逆Vの字」に折れ曲がり、背骨付近に凄まじい激痛が走った!紫!回復薬紫を注射するんだ!痺れる腕を頑張って動かして薬剤注入のボタンを押す。

大丈夫?体がパワーアーマーごとVの字に変形してない?


「あああぁぁサイン! ごめん、ごめんなさいっ!」

「き、気にするな…俺を守るためにどうにかしようとしてくれたんだろ…これくらい、俺は大丈夫だ…」


即効性の回復薬をブチ込んだおかげで、何事もなかったかのような顔をしてアミューの頭を撫でることができた。


パワーアーマーは多少歪んだが無事だ。そこそこ深い穴だったが、アーマー本来の衝撃吸収システムだけでも耐えられただろうに…


「大丈夫か?」


グォンドも降りてきて俺のことを心配してくれていた。

君、俺のことを殺そうとしていたとは思えないくらいの変わりようだね…おっと!


「止まってる暇はないぞ!動け動け!」


上の方でくすぐり悶えていたアポアポ君が、バランスを崩して落ちてきた。

急いで逃げなきゃ潰される……あ?


落下中だったアポアポ君の巨体が、着地する前に真っ二つに両断された。

断面から緑色の体液が噴き出し、雨のように降り注ぐ。


そしてその血を浴びながら、青白い光を放つゴザルが飛び降りてきた。


「こっちでござる!」

「ゴザル…俺の武器に血がついちまったぞ」

「何しょーもないこと気にしてるでござるか!!」


いや、だってこれ高いんだぜ? コーティング済みとはいえ、この得体の知れない血で錆びだらけになったらどうしてくれるんだよ。


ゴザルが再び走り出すと同時に、俺はアミューによって無理やり肩に担ぎ上げられた。


いや、俺走れますが?さっきの怪我はもう治療したのに相変わらず心配性だな。


「……使いすぎたでござるっ! サイン殿、何かエネルギーになるものはないでござるか!」


走りながらゴザルが叫ぶ。

確かに、ゴザルを纏う青い光が落ちている気がするな。さてはあの合体状態、燃費が相当悪いな?


「アミュー、俺のバッグからパワーアーマーの予備バッテリーを2個残して全部ゴザルに投げてやれ」

「うん!」

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