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アルティメイト ~最凶な世界でもエンジョイライフ~  作者: ちょばい


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23.機械竜VS大仏×2

白炎竜の前に、二足歩行の巨躯を持つ二体の大仏が、じりじりと距離を詰めてくる。


――シュッ、シュッ!


ボクシングの構えを取った大仏が、巨体に似合わぬ凄まじい速度で鋭い左ジャブを放ってきた。 白炎竜は的確に…厚い前腕を盾にして受け止めた。が…


――ドガァアアアンッ!!!

「!?」


ただのジャブとは到底思えない、大砲の直撃にも勝る超重量の衝撃波が白炎竜のガードを突き抜けた。鋭い衝撃が白炎竜の腕に響く。強引に足を踏み留まらせる。腕が少し砕けた。


そこへ間髪入れず、もう一体のムエタイ大仏が、地響きと共に跳躍。


「オウラァッ!!」


陽気な怒号と共に、強烈な膝蹴りが白炎竜の顔面に跳んでくる。 ジャブよりも間違いなく重いその一撃をかろうじて白炎竜は避けた。


二対一。それも、最前線級の生物兵器が連携して攻撃してくる。 いくら幻獣機の白炎竜でも…元のボディならともかく、今のこのボディでは対処が難しかった。


「さすがだな!今のタイミングで避けられるとは思わなかったぞ!」


「やっぱ1体落とされたのがきちぃか?」


軽快なフットワークで2体の大仏が今度は白炎竜を囲む。そして同時に攻撃する。


ボクシングの大仏の放つ強烈なフック、アッパーカット、ストレート。ムエタイの大仏の鋭い蹴り、高速のひじ打ち。いくら硬いダンゴロムシの甲殻とはいえ、パンチは直撃すれば砕けるし、蹴りをもらえばその部分を斬り落とされてしまう。


白炎竜は、自身へのダメージが最小限になるように受け流していく。


そのたびに甲殻の表面はひび割れ、ポロポロと地面に落ちていった。


白炎竜は攻撃を捌きながら反撃をどうするか悩んでいた。こちらの攻撃の隙がないのだ。生半可な攻撃はカウンターを喰らうきっかけになってしまうだろう。


「亀みたいにかてぇな!!」


「いいのかよ反撃しなくてよぉ!!」


白炎竜はこのまま逃げてしまおうかとも少し考えていた。しかし、ここに来る前、サインに言われた言葉を思い出す。






【白炎竜視点(ミートゾーンに行く前)】


僕はサインという人間に頼まれ、助っ人として他の人間を助けに行くことになった。


新しいこのボディを試すのにいいんじゃないかという理由で。僕も試してみたいと思っていたからちょうど良かった。


しかしこのボディは本当に、とても動かしにくい。


僕の知識でも、まだ他の…普通の金属とかよりマシなのはわかるんだけど、前の体とどうしても比べてしまう。


持っていくものは、サインの家にあった3メートルサイズの大剣だけだ。というかこのボディに合う武器はこれしか無かった。


大剣を背中にマウントし、いざ飛び立とうとした時、サインが話しかけてくる。


『じゃ、行ってこい。と言っても人間相手なら余裕だよな。テキトーに暴れてくればいい。ただ、面倒なら放置して帰ってきてもいいぞ。今回の件は、そこまで頑張る必要はねぇしな。とりあえず今日中に、無事に帰ってこいよ』


無事に帰ってこい…心配されるなんて初めてだ。

サインは話を続ける。


「ただ、後悔だけは作ってくるなよ。後悔したらそれは一生の心の傷になる。これは自己修復機能があっても治せんだろ」


それはその通りだと思った。機械兵器としての役割から解放された今の僕は自由だ。何をしてもいいし、何もやらなくてもいい。


しかしそんな自由を、いきなりつまらない後悔でコケるのはしょうもないにも程がある。


やるからにはきっちりと…完璧にこの依頼をこなしてみせよう。

そう思った。


そして現在へ…






【ミートゾーン前線入口の戦い】


白炎竜は…大仏に反撃するのを諦めた。どんなにシュミレートしても、手足…そして尻尾を振ったところでこいつらに当たるわけがない。


しかし、ジェネレーターの出力はどんどんと、上げていく。


「何かする気だなぁ!?」

「見せてみろよっ!幻獣機の本気ってやつを!よ!」


大仏達の攻撃も激しさを増していく。白炎竜を挟み込んでいる中でのラッシュだ。大仏同士の攻撃も当たる距離だが、大仏同士のフレンドリーファイアは万が一もない。これを操作しているのは【観音】一人だ。


お互いの攻撃が当たらないようにきっちりと攻撃を分けていく。


白炎竜は自己修復をしているため、ヒビが入っても壊れることはないが、それでも飛び散った甲殻は戻らない…段々と削られていく。


そしてついに……ボクシング大仏の右ストレートが綺麗に白炎竜の顔面に入った……白炎竜の顔面が盛大に飛び散る………












「はっ…やられたぜ……」

「マジかよ!」


白炎竜の砕け散った顔面はバラバラの鋭い破片となり、ムエタイ大仏の方に向かって高速で飛び散った。


白炎竜は攻撃を、わざと避けなかったのだ。ジェネレーターの出力を上げ、自身の顔を液状化するかしないかレベルの温度にまで上げた顔は、ムエタイ大仏の体に無数の穴を空け、体内に残った破片は臓器を焼き溶かす。


ムエタイ大仏はこれに耐えきれず、そのまま倒れ、動かなくなった。


ボクシング大仏も無事では済まなかった。顔面に右ストレートを放った拳に高温の液状化したダンゴロムシの破片が張り付きこんがりと焼けてしまっている。


「そりゃそうだよな……お前の本体はジェネレーターだ……どんなに体ボコっても無駄だったわ……はぁ、なんで俺も気づかないかねぇ」


白炎竜は残った大仏にゆっくりと歩み寄る。


「あー、負けだ負けだ!敗者は大人しく!植林でもしてくるよ畜生!」


そう言いながら大仏は白炎竜に殴りかかった。

強力な拳で白炎竜のボディはボコボコにされる。しかしそれを無視しながら白炎竜は大仏に抱きつく。


「弱体化しても、やっぱ幻獣機は幻獣機だってことかぁー…」


ボクシング大仏は自身が高温で焼け溶ける匂いをかぎながら、しかし悲鳴を上げることもなく静かに死んだ。






【ガルロンカルスリーダー視点】

俺は、巨大な機械兵器と巨大な生物兵器による、死闘を遠くから見つめていた。


凄まじい戦いだった。本来ならあのクラスの巨大な兵器同士の衝突は、動きが鈍重になるはずなのに、それを微塵も感じさせないほど超高速でスピーディな殺し合いだった。しかし……


(どっちも相打ちで、完全に再起不能になっちまったよ……)


あの圧倒的な強さを誇っていた白炎竜さんも、最後はボクシング大仏を道連れにして、身に纏った超高温の体ごとドロドロに溶けて燃え尽きてしまった。


大仏達は完全に消滅したが、白炎竜さんも、動かなくなってしまった。


……どうすんのよ、俺。


これ、もしかして俺がサインの野郎に弁償しなきゃいけないやつか?


いや、そもそもサインになんて連絡すりゃいいんだよ。あんなヤツに、頭を下げるのとか超嫌なんだが……!


俺が戦戦恐恐と、これから起こるであろう超面倒な未来の対処法を考えながら、黒焦げになった兵器の残骸を呆然と眺めていた、その時だった。


煙が立ち込めるスクラップの山から、何かが……ムクリと起き上がるのが見えた。


それは、剥き出しになった心臓部の『ジェネレーター』をド真ん中に据えた、一回り小さな竜人…のような姿をした機械兵器だった。


小さくなった……と言っても、その体は、成人男性と同じくらいの大きさはあるのだが。


そして、その露出したジェネレーターは、未だに膨大なエネルギーを周囲の大気へと激しく放射し、バチバチと青白く眩い光を放ち続けている。


間違いない、あれは…


「無事だったんだな、白炎竜さん……!」


俺は胸を撫で下ろし、心の底からホッとした。


だいぶコンパクトに、ちっさくなってしまったが、無事ならきっと大丈夫……大丈夫、だよな……?


まぁ、いいか! 最悪の事態だけは回避できているんだ。それでいい。後はきっと、流れで何とかなるはずだ……!


白炎竜さんはスッと……神速のスピードで、俺の目の前へと一瞬で移動してきた。


そして、自分がこのキャンプへ飛んできた方角――つまり、サインの隠れ家があると思われる方角を、鋭い金属の指先でピシッと指差した。

俺はその意図を一瞬で理解した。


「あっ、帰る…と。今回は色々とありがとうございましたっ!お礼とか何もできなくてすみませんっ!」


俺は、直立不動の姿勢から地面に額がつく勢いで全力で頭を下げる。


あんな化け物みたいな生物兵器まで対処してもらって何もないって人としてどうなんだよって罪悪感が俺の胃にダメージを与える。


……いや、会話的に白炎竜さんが来なかったら、あの大仏共も来なかったのでは?と思わなくもないが、今は棚上げにしておこう。


深々と頭を下げる俺に対し、白炎竜さんは『気にするな』と言わんばかりに、手のひらを前に出して首を横に振るジェスチャーをしてくれた。


そして、背中に折り畳まれていた翼をバサリと大きく広げると、ブースターを点火。凄まじい衝撃波を爆発させ、文字通り一瞬で、大空の彼方へと超音速で飛び立っていった。


キュィィィイイイン――と、一本の眩しい青白い光の線が、空に向かって真っ直ぐに伸びていく。


その青白い軌跡が完全に視界から見えなくなり、周囲に完全な静寂が戻ったところで、俺は糸が切れた人形のように、ぐったりとその場に座り込んだ。


「くっ…………そ疲れたぁ…………」


もう一歩も歩きたくないし、何もしたくないし、何も考えたくない。


……結局、俺が拠点に戻ることができたのは、それから1時間後のことだった。


荒野のド真ん中で泥のように座り込んで完全にダウンしている俺を見かねて、拠点からわざわざ迎えに来てくれた側近の『ミートキング』が、俺の身体を台車に乗せてゴロゴロと転がしながら運んでくれたのだった……

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