魔法最高成績
光と熱で視覚やら痛覚やらの刺激を目茶苦茶にされ胎蔵界曼荼羅の様な映像が脳ミソを飛び交う。が、死んでもいなければ五体も満足に動く。
「やあ、お坊主ちゃん」
大侠客にして魔法少女、無患子躯枢柩が背で僕を庇い、魔法を発動して僕を守っていた。周囲を水の膜が覆いゆっくりと蒸発しているという情報が、有機コンピューター経由で脳裏によぎる。無患子、やはり何処かで隠れ見ていたのだ。
「やはり君が予言の子だったお坊主ちゃん。男にして魔法少女という、存在することそのものが規格外ああ、君なら」
無患子から何か、力のようなものが流れ込んでくる。脊髄に分散して潜む有機コンピューターが分析、情報を吐き出した。
【カテゴリ:魔女 ネーム:Umbilical】
「今弟子にしたからあなたも魔法を使ってみて。魔女は知ってる?知らない?そう。魔法少女より単純だからすぐよすぐ。大丈夫の魔女、UNBELIEVABLE,Unbreakableと呼ばれているの。ああ、ああ、君なら」
光の中から手が伸びてくる。始祖が溶融しながらこちらに縋りつこうと、滑る触手の様に熱で歪んだ手を。
「君ならきっと、お姉様を殺してあげられる」
始祖の手を握手するように素手で握り潰して、その手でそのまま僕の手を取りダンスを始める無患子。
慌てて僕も《大丈夫の魔法》とやらを発動。手が熱で溶けると思っての防御的な反応だった。無患子が生み出した水の膜も完全に消失したが、問題なく光爆の世界でくるくる踊る。
「魔女の弟子になりなさいお坊主ちゃん。全国津々浦々をめぐって、いろんな魔女の弟子になるの。お姉様に、あの人には、魔法少女では勝てない」
「何故殺すのさ☆」
お姉様とやらが誰か、聞くまでもないだろう。
「それがあの人の望みだから」
嬉しそうにくるくる回る。草臥れた衣装の魔法少女。本気の時にのみ纏うはずの魔法少女衣装を、きっと何年もずっと着ている狂気の女。
「でもタイミングが大事よ。今はダメ。あの人がいよいよ終わってしまう時に、大量虐殺者になってしまうその時に、みんなで袋叩きにしてあげるの」
炎でも熱でも僕たちの衣装は燃えなかった。どうやったら無患子の様にボロへと変わっていくのか。
「それが生かされた私たちの恩返しなのよ、お坊主ちゃん。衣装の意匠は無患子。花言葉は『』。本の装丁は笑顔。遠くない将来見るだろう。無患子躯枢柩、どうぞ」
患わず
病まず痛まず
老いもせず
然れども膿まず
無患子の珠
魔法少女同士の挨拶を求められる。白峰菊利の集会室でした挨拶回りとは違う、穏便に済ませるためのそれではなく、決闘の前の挨拶を。つむじ曲がりに我慢しようとしたが、これっぽっちも抵抗出来ずに口が開く。
「衣装の意匠は女郎花。花言葉は『美しい人』。本の装丁は後ろ髪。登熟最中の稲穂のよう。メロウ・マダラ=オミナエシ、参る」
七草に
押しも押されぬ
女郎花
婀娜な色目に
わたし女郎々々
なんか、決闘を申し込まれ、ボコボコにされてダンジョンの外に放置された。みんなは無事脱出していて、地上で再会出来ました。梅鉢千代古と桔梗姫橘は消息不明だけど、まあ生きているだろう。
患わず 病まず痛まず 老いもせず 然れども生まず 無患子の珠




