赤狐-SEKIKO-
「畜生夫人☆」
魔法少女魔法としてファイアアローはオーソドックスすぎるので、その形状を模した火炎放射、のような雑な誤魔化しは偽物とすぐバレる。
だから焼夷カプセルを撒いて誘爆させ、それっぽいオリジナル技に見えるよう演出。
芋虫から大量の寄生バエが羽ばたく様に、カプセルから粘性の火が吹き出し梅鉢千代古の体を焼いた。
「男のこのこのこのこの……魔法少女だと……!」
侠客魔法少女白峰菊利の戦きを獣耳とステルスドローンの集音マイク、有機コンピューターの読唇アプリによる文字起こしから拾う。演技だろうな。偽魔法でベテランの魔法少女を騙せるとは思えない。
むしろ安心しただろう。前代未聞の男の魔法少女、なんてただのハッタリ。動揺させ、梅鉢にも魔法少女衆にも有利に立ち回るための見せ金だろうと。
そこで、ちょっと揺さぶる。
「ブルースターゲッコー☆シュ☆」
青色の八方手裏剣を投げつけ、割り損ねた焼夷カプセルに火をつける。手裏剣、獣人の文化圏出身の魔法少女ならモチーフにしていてもおかしくない魔法少女武器を使った。
「……!?」
白峰は尻尾を見せなかったが、死体花ダブルカヌードカラーが明確に動揺。
フジキゲンノショウコから借り受けた、たった一枚の手裏剣型魔法少女武器。本当は魔法少女なのではないか、或いは他の、未知の魔法少女と共謀しているのではないか。そんな疑いを掛けられればこっちのもの。
ここからまんまと逃げ延びるために、嘘ハッタリは多ければ多いほど良いのだから。
「珊瑚銃が効いとらんがんかいや。だじゃかん。獣人マシンガン、……モシン・ナガン?マシンガン」
梅鉢千代古の八尾が変形、物理的な弾丸がこちらに殺到してきた。
白峰菊利の白峰暴威が砕け、桔梗姫橘も珊瑚銃モドキでは弾幕に対応しきれず、二人とも一旦、白峰配下の魔法少女たちが構築した塹壕へ逃げ込む。
この数分の間に、鋼鉄と高分子ポリマー製のエセ境内でどうやって地面を掘ったのか、それら人工物を土のように柔らかく砕いたのか、理屈は全くわからない。魔法少女は恐ろしい。
「メロウどの!」
桔梗が避難のために呼び掛けるが、僕には必要ない。
「召喚。凪げ、玉繭」
これももちろんハッタリ。魔法少女でないので召喚魔法なんて使えない。側に侍る梅チーこと梅鉢千代古長男を基点に超次元ポケットからパワードスーツを転送し、装備させただけである。
尾の無い梅鉢長男の仙髄に増設された拡張パーツとパワードスーツが接続。
「敵討ちだ!ああああぁぁぁぁぁ!」
雄叫びなのか弟ああああの名を叫んだのか知らないが、梅チーが親殺しのために踏み出す。その背に隠れ、僕も前進した。




