第67話:執務室に行くか
ふっ、やってやるぜ。
グギュルグルル~
?、…何の音だ?
「お腹が空いたね、今日はラオンのクッキーを楽しみにしていたのだが、食べ損なったかな?」
子爵のハラの音か。
俺は昼食をシッカリと食べたからかそこまでではないが、確かにもうすぐ空も暗くなる頃合いだ。ハラも減るだろう。
「ハニービーの蜂蜜クッキーでしたか。」
「ああ、通常の蜂蜜よりもハニービーのモノは上品な味わいでね。私の好物の1つなのだよ。昼食のサンドイッチも美味しかったなぁ。」
「お口に合った様で良かったです。明日は1日を使って明後日の準備をします。」
「君ほどの男に準備なんて必要あるのかね?」
バルム子爵の言っている事は正しいが、さっき食事には自重しないと決めたのだ、料理の作りおきを用意しておけば何時でも美味い飯が食える。
明日は1日をフルに使って、大量の食事を作ることにした。
さっそく準備をするか。
「こう見えて心配性でしてね。一旦、部屋に戻りますね。」
「ああ、私は自分の仕事を片付けるとしよう。」
そうだよな、今回の討伐作戦には子爵家から物資の援助や、魔法士の派遣もあるのだから子爵もやらねばならん事もあるよな。
◆◆◆◆◆
さてと、夕食までは1時間程かな。
俺も自分の準備をしようか。
これまで、魔力がフルで回復する前に缶コーヒーや酒類のストックを出して魔力を消費していたが、どうしたって最大値まで回復してしまう。
俺の魔力は300には満たないが、魔力だけならここの魔法士団の誰よりも多いだろう、確実に。
その魔力を使って、大量の食材を出す事にする。
先ずは野菜だ。野菜類を片っ端からイメージする。
キャベツ・タマネギ・ナス・トマト・アスパラ・ゴーヤ・レタス・モヤシ、それぞれを俺の魔力を250も使って出した。
普通の魔法使いでこれだけの魔力を持つ者はいないだろうし、例えいたとしてもこの消費量ならぶっ倒れているか、魔法を発動する前に魔法自体が暴走するだろう。
万物創造は魔法ではないが、能力を行使する際の感覚は魔法とかわりない。
流石に250もの膨大な魔力を使って出したから、全部出すのに20分もかかってしまった…。
そのおかげもあり、大量の野菜を確保できた。
肉類は俺が万物創造で出すモノよりも、こっちで手に入る魔物の肉の方が美味いので、明日の朝にでも買いに行こう。
次は食事の後で調味料関係を出すとしようか。
つんつん
「どうしたエリアス?」
すりすり
これはオネダリのサインか?
もしかして、ハラが減ったのか?
「ハラが減ったのか?」
ぴょん
…あれ?
そういえば、なんか大きくなった?
前は茶碗サイズだったエリアスだが、ちょっと大きくなった気がする。
丼よりは小さいが、出会った頃よりは大きい気がするな。
「エリアスお前、大きくなったか?」
うにょん
自分ではわからんか。
まあ、そんなモンだろうな、自分が大きくなったなんて自覚する事なんてないよな。
「そうか、エリアスも成長してるんだなぁ。よしよし、もっと大きくなって強くなるんだぞ~。」
なでなで
ぷるぷる
ああ、ハラが減ってるんだな、何か食べさせてやろう。
魔力には余裕があるし、もうすぐ晩飯だから少しだけ食わせてやるか。
イメージ…。
…………
「ほら、これを食べたら晩飯までガマンするんだぞ?」
ぴょん、ぽむ、ぷるぷるぷる!
やっぱりエリアスはお子ちゃま舌だな。シュークリームで喜んでらぁ。
シュークリームといえばクラウちゃんを思い出すが、クラウちゃんは元気かな?
今も俺の事を見守っていてくれてるのかな?
ダンディーなタナトス様のおかげでこの世界でも美味い飯が食えるし、今のところ金に困る事もないが、クラウちゃんの加護には本当に助かっているよ。
ホント、神様には感謝しかないな。
お供えでもした方がいいかな?
日本にいた頃の俺は、神様なんて信じてなかったし、クリスマスや正月の初詣だって唯のイベントとして楽しんでいたけど、実際に神様に会って色々と世話になって感謝をしているのだから、何かしらの形にして感謝した方が良いかもしれないな…。
後で形だけでもお供えをしてみようか。
トン!トン!
「ヨシタカ様、よろしいですか?」
「ああ、どうした?」
晩飯にははやくないか?
「旦那様がお呼びです、執務室までお越しください。」
バルム子爵が呼んでルのか。
「わかった、直ぐに行く。」
「お願いします。」
何の用事だろう?取り合えず、執務室に行くか。




