第64話:いただきます
そう、俺は1人じゃないさ。
さっさとサンドイッチを作って、俺はトンカツで白いご飯を食べるんだ!
ゆで卵をボウルに入れて、フォークの隙間を利用して玉子を潰していく。
この時、細かく潰さない様に注意する。黄身は玉子サンドのコクの元になるが、白身は食感を残す為にも細か過ぎては味気無い。
卵を潰したらマヨネーズで和える。そこに隠し味でホンの少し醤油を加える。塩とコショウは使わない。
余談だが、この土地で食べられている鶏卵は生では食べられない。地球でも、鶏卵を生で食べる事が出来る国は日本だけと言っても良いくらいだ。
日本の場合は卵に対して、徹底した品質管理のもとに生食が可能になっているし、賞味期限自体が生食用の日付を記載しているので、購入後にきちんと冷蔵庫で管理すれば安全に生で食べる事が出来るのだ。
当然、賞味期限を多少過ぎていても、加熱すれば問題なく食べる事が出来るよ。
そんな訳で、この世界にはマヨネーズなんて調味料は存在しない。マヨネーズの材料は、卵黄・酢・油の3つだ。この3種類を混ぜることでマヨネーズが出来上がる。
材料の卵黄を加熱しないのだから、マヨネーズは食べる事が出来ない。
マヨネーズは俺だけが扱える魔法の調味料だね。
6枚切りの食パンを3斤出す。合計で18枚の食パンでサンドイッチを作っていく。
本来、サンドイッチのパンにはバターを塗ったりするが、今回は塗らない。過剰な味付けを避ける為だ。
玉子サンドを仕上げてしまおう。
5枚の食パンにマヨネーズで和えた玉子をのせて、それぞれをもう5枚の食パンで挟めばいい。最後に耳を切り落として半分にカットして完成。
出来上がった6つの玉子サンドは子爵達に、残りの4つはここにいる者で食べる。
次はカツサンドだな。
粗熱が取れたトンカツに軽くトンカツソースをかけてパンで挟む。食パンの耳を切り落として、子爵達の分は半分にカット、ラオン達の分は4等分にカットする。
子爵家の昼食には、カツサンドと玉子サンドを1つずつ皿にのせて一端、アイテムボックスに入れておく。
「ラオン、完成品の味見をしてくれ。」
「ああ、喜んで味見をさせてもらおう。」
カツサンドは少し小さいが仕方ない。
鍋の大きさ的に、1度に2枚しか同時に揚げられなかったし、さっきカツだけで食べているのだから。
先ずはカツサンドを食べてみるか。
アムッ
ンフ~、ソースが染みた衣とパンに挟まれて、カツの旨味が増している。衣がサクサクだった揚げたては美味くて当然だが、ソースが染みたフカフカのパンと食べるカツのサンドイッチはバツグンだよ。
「エリアスもな。」
ぴょん!
ぽむ、ぷるぷるぷるぷる
「そうか、うまいか。」
すりすり、すりすり
「カツサンドはもうないぞー。次は玉子サンドをやるからちょっと待ってろ。」
エリアスにやる前に、1口だけチェックだ。
パクッ
ふふっ、この世界でも玉子サンドの味は変わらない。
優しい玉子の美味さと濃厚なマヨネーズの存在感。玉子トーストにしても美味いよな。
「ホラ、玉子サンドだぞ。」
ぽむっ、……!ぴょん!ぴょん!ぷーる!ぷーる!
おー、なかなか良い反応だ。
すりすり、すりすり、すりすり
「エリアス、これは試食だからもうないぞ。俺達の昼飯は後で作るからちょっとだけガマンしてくれ。」
うにょーん…、うにょーん…
見てるこっちが辛くなるくらい、エリアスがションボリしているのが解る。
エリアスは不思議なスライムだ。
俺の言葉を理解しているし、食べ物の好みもあるようだ。
スライムってさ~、何でも食うしザコキャラってのが全人類の総意で間違いないと思うんだが、エリアスはスライムっぽくない。…謎だ。(芸を教えたら覚えそうだ)
俺とエリアスがサンドイッチを食べた向かいでラオン達も試食をしいていたが、集まって熱い議論を交わしていた。
サンドイッチは出来たし、そろそろ米を炊くとしよう。
はじめチョロチョロ中パッパッ、ってね。
食パンの耳もやっつけようか。
揚げ油を温め直してさっと揚げる。
油をきったら、チョコソースをかければ完成だ。
簡単だけど、飾らない良さがあって美味しいと思うよ。
チョコソースと缶ビールの消費魔力が同じなのには驚くよ。基準は何だ?
コツコツと大学ノートに書き留めてはいるが、最近はめんどくさくなってきた。(やめよっかな…)
「ヨシタカ様、昼食の準備はいかがでしょうか?」
ん?バトラか。
「準備は出来ている。運んでくれて構わない。」
「そうですか。では、運ばせていただきます。」
「よろしく。俺はここから離れられないし、このあともラオンに伝える料理があるから、当分の間はここにいる。」
「分かりました。旦那様にも伝えておきます。」
「頼むよ。」
人数分のサンドイッチとパン耳のチョコソースの皿をメイドさんが運んでいった。
米は蒸らしに入ったから、あと10分か。
エリアスの分を考えれば、トンカツ1枚では足りないのでもう1品作ろうか。
ジャイアントボアのバラ肉を頑張って薄切りにし、調理場にあったキノコを食べやすいサイズにカットする。
熱したフライパンに少しの油でキノコを軽く炒める。火が通ったら一旦、フライパンからキノコを取り出し、バラ肉を炒める。
ある程度、肉に火が通ったら焼き肉のタレをフライパンで絡める。そこにキノコを入れて軽く和えれば完成だ。
手軽な男の料理、日本風に言えば【豚バラとキノコの炒め物】かな?
キノコは最後にフライパンで和えただけなので、タレが濃く感じない様になっている。あくまでも、タレの味はバラ肉に付けるのがポイントだ。ご飯がススムぞ~。
ついでに、インスタントの味噌汁を用意しよう。
はぁ~。
俺の目の前には、ガッツリとした【男の定食】があるよ~。
白いご飯・味噌汁・トンカツ・バラ肉ときのこの炒め物
こんな食事に飢えてたんだよ…。
はーー、味噌汁のいい香りがする。何年も嗅いでない様に感じてしまうくらいに、恋い焦がれた香りだ。
トンカツはエリアスと分けたが、炒め物があるので、おかずは十分だろう。
俺と同じモノを食べたがるエリアスは、メニューは同じだが味噌汁以外はワンプレートに盛った。
それでは、いただきます。




