第55話:今でも優秀なんじゃね?
やってみたら上手くいった。
いやぁ~、やってみるもんだね?
神気刀なら太い木も簡単に切れるし、アイテムボックスにもすんなり入った。
あれだな、元気があれば何でもってヤツだ。
あー。
周囲に大量に転がっている魔石の回収が面倒だよ。
ガサガサガサ!
っ!何だ⁉
振り向くと、カルロが凄い勢いで走って来ていた。
「スゲー!スゲー!スゲーー!!」
テンションが高いな。
「何だよ今のアレ!身体中が燃えてハニービーを燃やしてたじゃん!魔法か?1人でハニービーを全滅させるって化けモンかよ!アイテムボックスってあんなデカイ物も入るんだな!あんたスゲーよ!あの魔法どーやったんだよ~。」
おかしい…。コイツは50メートル離れた場所で待たせていたぞ。遮蔽物がこんなにあるのに何で細かく見ているんだ?
「お前は見えていたのか?この森の中であの距離を?」
「バッチリ見てたぜ!オイラは子供の頃から目が良いんだ!」
イヤイヤイヤ、目が良いとかの話じゃないだろ!どんな目ぇしてんだよ!
スキルの影響かと思って、神眼で見てみると………たまげたよ。
コイツはあの状況で確実に俺の行動を見ていた様だ。
ステータスの内容はこんな感じだ。
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名前:カルロ
性別:男
年齢:15才
種族:人族
LV:12
体力:26/29
魔力:12/12
攻撃力:11
防御力:7
俊敏性:13
<スキル>
[武器]
弓術(初級)
<ギフト>
千里眼
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カルロは【ギフト】持ちだったのだ!
効果は、遠く離れたモノを見る事ができ、多少の障害物の影響を気にせず見ることができる、らしい。
一般人は自分の能力を鑑定等で知る機会が無いので、自分のステータスや所持するスキルを知る事は稀である。ギフトといった先天的に持つ特殊な能力でさえ、本人はその存在に気付かぬまま生涯を終える事が当たり前だ。
そう言った意味では、どれ程の者がギフトを持っているのだろうか?
カルロは恵まれていると言えるな。
千里眼なら直接、弓による戦闘にも活かせるし、斥候職にも向いている。ちゃんと成長して経験さえ積めば、有能な冒険者になれるだろ。
「オイラ決めたぜ!アニキの弟子になる!」
何勝手な事を言ってるんだ?
お前なんて弟分は要らんし、弟子なんて取る気ないぞ?
「悪いが弟子なんてイラン!」
「えー!何でだよ~。いいじゃんか~。」
頭が痛くなったよ…。
1人でハニービーの魔石を拾っている間、まとわりついてきたが完全に無視した。
おかげで回収に30分もかかってしまった。
ステータス画面で魔石の数を確認したら、324個もあった。Gランクの魔石なんてたいした金額にはならないだろうが、これだけの数を纏めて売ればそこそこの額にはなりそうだ。
森を出ようと引き返したが、カルロはずっと後を付いてきた。無視しながら進んでいくとカルロが態度を変えた。
「アニキ!ゴブリンだ!」
え、ほんとか?
あっ、ほんとだ!進行方向にゴブリンが5体いる。
脳内マップ上では確認出来るが、マップを意識していない状態では気付かない距離だ。もう少し近ければ、気配感知のスキルで気付いただろうが、流石ギフトの千里眼と言ったところだな。
(実はコイツ、メッチャ使えるんとちゃうか?)
少し試して見るか。
「おいカルロ、弓で狙えるか?」
「もう少し近付けば当てられるぜ。」
「本当にお前が俺に付いて来る気があるのか試してやる。」
「ホントか⁉」
「試験は2つだ。先ず1つめ、ゴブリンを弓で最低でも3体倒せ。距離はお前に任せるから、近付いて確実に倒しても良いし、遠くから倒しても構わない。但し、俺が加勢した時点で3体倒してなかったらアウトだ。いいな?」
「わかったよ!」
カルロは弓を構えてゴブリンのいる方向へ進み始める。
距離は100メートルはないだろうが、カルロはこの木々が邪魔な状況でもハッキリとゴブリンの姿を捉えているのだろう。
しかし、カルロが持つ弓は安物の弓と思われる。この弓では相手の姿を捉えていても矢は届かないだろうな。
進む事、30メートル。カルロは遂に矢を放った!
ゴブリンとの距離は50メートル以上もあるので、俺は自身の目で確認する事は出来ないが、脳内マップ上ではゴブリンの数が減っている。
続けて2射目を構えるカルロ。
ゴブリンは仲間を殺されたが、その場から大きく動いてはいない。周囲を警戒はしても、こちらの姿を捉えられないのだ。
2射、3射と命中しゴブリンの数は残り2体となった。
カルロは弓で3体のゴブリンを倒したので、約束のノルマは達成したが、4射目を構える。
3体目のゴブリンが倒された事で、俺達の位置を判別した2体のゴブリンはこちらに向かっているが、ゴブリン達はカルロの弓で全て倒される事となった。
(カルロって、今でも優秀なんじゃね?)