表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/125

第46話:食事について話をしたい

本日の1話目です。


宜しくお願い致します。

「ないんですか?残念です…。」


ベルハルトがえらく気に入ったみたいだな。


「皆さん、料理のお味は大丈夫ですか?」

「ああ。大丈夫どころか、とても美味しいよ。」

「本当に美味しいわ。」

「ヨシタカ様、この卵料理は何と言う料理なのですか?」


「それは茶碗蒸しと言います。」


「茶碗蒸しかね?」

「はい、茶碗蒸しです。醤油はホンの少ししか使っていませんが、美味しいでしょう?」

「ええ、美味しいわ。柔らかくて優しいお味ね。」

「こんな卵料理は初めてですわ。」

「料理の順番が違いますが、喜んで頂けて良かったです。」


そう、俺がメインで用意した1品目は茶碗蒸しなのだ。


理由は幾つかあるが、金持ちの食事のメニューには卵料理が喜ばれるとラオンが教えてくれた。


訳は簡単。畜産業らしい畜産業が行われていないので、鶏の卵が貴重だからだ。

感覚的には高級スーパーで購入したので、卵1個で銅貨4枚もしたが、普通の店でも銅貨2枚もするらしい。(卵1個が200円か、高っ!)

鳥型の魔物の卵がたまに流通し、貴重な事からそれも重宝されるらしいが、とにかく卵料理は富の象徴に近い様で好まれるとの事だった。


個人的には茶碗蒸しを前菜として出そうかと思ったが、前菜は野菜が主役の料理が好ましいと、ラオンからの助言があり、前菜を筑前煮にして、メインの1品目を茶碗蒸しにした。


「この前菜の料理も良いね。サトイモがこんなに美味く感じたのは初めてだ。」

「お野菜にしっかり味があって美味しいわ。」


筑前煮も口に合って良かった。


正直なところ、味付けの濃さには悩まされたのだ。


こっちの料理は調味料の関係から、基本的に薄味の傾向にある。

俺の普段通りの味付けならば、確実にしょっぱく感じるだろう。だからラオンやその弟子達に味見をしてもらいながら仕上げた。


味見をした連中は醤油の持つポテンシャルと、筑前煮の美味さに度肝を抜かれていたな。


ラオンが驚いていたのは醤油と魚醤の違いだった。


見た目はとても似ている2つの調味料だが、匂いと味が全く違っていて、それぞれが料理のデキに及ぼす影響の大きさにビックリしていた。


人は普段から食べなれた味付けを好むモノだ。俺には醤油が美味いと感じても、彼等にすれば馴染みの深い魚醤の方が、醤油よりも美味だと感じるかもしれなかった。


しかし、食事の様子からそんな心配は杞憂に終わった様だった。


メインの2品目に取りかかろう。スープもメインと一緒に出すよ。


いつものカセットコンロにフライパンを2セット準備して、本日の真のメインディッシュを調理する。


熱したフライパンに、だし汁や蜂蜜酒に醤油を加えた即席の【丼つゆ】を注ぐ。そこに薄切りにしたネギと一口大に切ったシャドーバードの肉を投入して加熱していく。


肉に火が通ったら、フライパンを揺らしながら溶き卵を流し入れていく。


何が出来るかわかっただろうか、【親子丼】だ。


正確には魔物の肉と鶏の卵だから親子ではないが、俺的には親子丼だよ。


子爵家6人に俺とエリアスにラオンの9人分の親子丼を作るので、今回はフライパンで調理したが、なかなかのデキだと思う。


アイテムボックスから土鍋を取り出し、深めの皿にご飯をよそって親子丼の具を乗せて汁をかけたら完成だ。


米を炊くのに、こっちの鍋でいきなりぶっつけ本番は怖かったので土鍋を出して炊いた。(消費魔力は46)


親子丼とけんちん汁、それぞれ【なんちゃって】料理だが、色々な制約の中で作ったにしては上出来だと思いたいな。


メイドさんに親子丼とけんちん汁を配ってもらい、近くのラオンには俺が手渡した。


いざ実食!


「本日のスープとメイドディッシュです。お召し上がりください。」

「うむ。頂こうか、とても美味そうだ。」


俺を含め、全員が親子丼をスプーンで食べ始める。


パク


う~ん、味は親子丼っぽい。ちゃんと美味しい。薄味だが。

流石にいつもの親子丼とは違うけど、本物の親子丼を知らなければ十分だと思う。


こっちで手に入る米がパラパラのインディカ米だったので、丼つゆに小麦粉で少しとろみを加えたのが良かった。


けんちん汁もちゃんと美味い。


柔らかくなったタイコンにニンジン、味の染みたサトイモ。何よりもキノコ類がバツグンだ。

肉厚のシイタケに歯ごたえのしっかりしたマイタケにシメジ、日本のスーパーで販売されていたキノコ類よりも断然美味い。


エリアスも全身を震わせて吸収している。


子爵家の面々は言葉を発することなく、無言でひたすら食べていた。

時折、アイコンタクトで会話をしている感じがする。(ちゃんと会話しろよ!)


仕方がないので、ラオンに感想を訊く。


「ラオン、味はどうかな?」


スプーンを止めて、ラオンはユックリと話し始めた。


「料理人としては失格かもしれんが、美味いの一言に尽きる。醤油という調味料の素晴らしさもあるが、料理が美味い。茶碗蒸し、あんな卵料理は初めて知った。あの味は魚醤では再現出来ないだろう。この親子丼も驚かされた。上の具も美味いが、米と一緒に食べれば極上の料理と言うしかない。正直な感想として、米料理をこんなに美味いと思ったのは初めてだ。」


そう言ってけんちん汁をラオンは飲んだ。


「それにスープも美味だ。野菜やキノコのうま味をスープがまとめあげている。先程の筑前煮と具材は変わらないが、味や印象が全くの別物だ。」


大絶讚だな。


今回は親子丼を作ったが、最初に作ろうと思ったのは【しょうが焼き】なのだ。

屋台で食べたジャイアントボアが気に入り、醤油を使う事を前提に考えたら、しょうが焼きを真っ先に思いついた。


醤油に豚肉みたいな魔物の肉、ショウガも売っていたので意気揚々と例の店を出ようとした時に、ある事に気が付いた。


キャベツが売ってなかったのだ!!!!!


日本なら普通に売っているはずのキャベツが、売ってなかったのだ!


店員に訊くと、あと2週間もすれば出回るらしいが、今は手に入らないと言われた。


ガチでショックだったよ。


一応、米があり、しょうが焼きを作る。となれば、キャベツは必須だろ?


しょうが焼きの汁が染みた千切りキャベツの美味さ。

あれだけで白飯が1杯食える。ちょっとマヨネーズを付けたら、もう極上のオカズだ。


いくら異世界とはいえ、キャベツの無いしょうが焼きを食べさせるのは許せなかったのだ。俺の心が。


急遽プランを変更し、今の状況に至る訳だが、結果は吉とでた。


俺も自分の親子丼とけんちん汁を食べ、腹と心を満たした。いくらインディカ米でも米だ。

久しぶりの和を感じる料理に、俺自身が満足感を得た。


後はユックリと風呂に浸かって、さっき作った筑前煮と日本酒で晩酌でもして寝たいよ。


「いやぁ、とても美味かった。このような米料理は初めてだ。スープも、茶碗蒸しも、前菜も美味かった。」

「ええ、本当に美味しかったわ。」

「そうですね。」

「昼は屋台で食べ、夜は初めて食べる料理の数々、いい1日でした。」


ベルハルトよ、何を締め括ろうとしてるんだ?醤油の説明がまだだろうが‼


「お兄様は屋台で食事をされたのですか⁉」

「羨ましいです!」

「おお、早速街を楽しんできたのか♪」

「はい、父上。とても良い経験でした。」

「そうかそうか。私も若い頃はガランと街に行ったものだ…。」


何をしみじみ思い出に浸ってるんですか?

あんたは屋敷を抜け出しては酒場や賭博場、それに娼館へ遊びに行ってたんでしょうが!


「昔の話はまた今度にしてだ。ヨシタカ君、今日の食事について話をしたい。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ