第122話:いざ、ステータスオープン!
現実社会でバタバタしておりました。
「じゃあ一緒に来て手伝ってくれ」
よく寝ている4人に毛布をかけてテントを後にする。
秋も深まり、少し肌寒さを感じるが、まだまだ外の連中は熱気を帯びている。
時刻はもうすぐ21時。
日の出と共に起き、就寝の早いこの大陸でも、ここに居る冒険者達は一般市民に比べて頑丈な身体と強靭な精神力故にこの時間でもまだまだ元気な様だ。
商業ギルド側の威勢の良い売り込みも聞こえてくるし、俺の感覚ではまだまだ夜はこれから。楽しそうな声が聞こえてきている。
(さてと、行くか)
ベースキャンプと言っても壁や柵がある訳でもなく、強いて言うなら馬車が外とを隔てる境界線といったところであろうか。
人気の少ない方に向かい、ベースキャンプを抜け出す。
向かうは昼間も入った森。木々が生い茂る暗闇の森故に全力疾走なんてバカな事はせず、小走りで森を駆け抜ける。
それでもこの速度で息を切らせていないだけでも、前世であれば考えられない身体能力である。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
(あった!)
暫く走る事数十分。目的のオークの集落に到着する。
鳥系の魔物を数体仕止め
この森は結構広くて残りの集落の数を考えれば、森の中にベースキャンプを移動させる必要が出てくる。
でないと1番遠いオークの集落に行けば2日かけてもベースキャンプに戻れなくなってしまう。
コッソリと1人で場所の確保に赴いたワケさ。勿論、レグやレイラインには何も言っていない。
俺が目を付けたのは、森の中心部に近いオークの集落。
ここのオークの集落はある一定の距離を置いて点在している。いくら同じ種族であってもこんな現象は普通では有り得ない。
それこそ、この森の集落全てが1つの群れであるかの様に不自然だ…。
その辺りの目星は付けているが、恐ろしくて考えたくない。ポジティブにいこうか。
「エリアス、行くぞ」
ぴょん
ここからはユックリと、そして慎重に物音を立てない様に注意を払い進む。
気配を消すなんて技術を俺は持ち合わせていないので、この方法しかない。
流石にこの時間は夜行性でなければ一般的には眠っている時間。それは魔物でも変わらない。
集落に近付き、気配を探るとやはり大方は眠っている様だ。
(行くか…)
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「フンッ!」
「ハッ!」
どれくらいの時間が経ったのか、時間の感覚はない。
気配感知を駆使してオークとの距離を確認しつつ唯々、神気刀を振るう。
バシュ!
時折、エリアスが俺の死角にいるオークを魔法で倒して援護をしてくれる。
「フンッ!」
最初は眠っていたオークの首を切断して数を減らしていたが、豚の顔をした図体ばかりの魔物とはいえ、いつかは気付かれる。
強襲者の存在に気付いたオークが大声をあげてからは、俺とエリアスによるオークとの戦いと呼ぶには呆気ない蹂躙劇が始まった。
「タァッ! ハァ、ハァ、ハァ」
ボチボチ疲労を感じ始めた。
森の中を走るよりも、戦っている方が体力を使うし、死と隣り合わせの緊張感が神経を擦り減らす。
(もっと鋭く…)
「ハァ!」
(もっと速く…)
「フッ!」
(もっとコンパクトに…)
「ハッ!」
神気刀を一振りする毎、自分の一刀に対して修正をかけ改善をしてゆく。
昼間にレイラインから指摘を受けたが、俺自身が1番わかっている。
自分の身体なのに、剣術のスキルが俺の身体を操っているかの様な感覚。
例えるなら、子供の頃に餅つきをした際、大人と一緒に杵を持って一緒に餅をつくハズが、実際に子供は杵に手を添えているだけで、大人が杵を持って餅をつく様な構図と言えば伝わるだろうか?
伝わらなかったならスルーしてくれていい。
要するに、俺が神気刀と自分の身体を100%使いこなしていないって事さ。だから余計に体力を消耗してた。
目の前のオークに神気刀を振るう際、1振り毎に明確なイメージを込める。
俺が、俺の明確な意志で、俺の身体を使って神気刀を振るう。スキルを使いこなすのではなく、剣術というスキルを支配するイメージを持って…。
だから魔法は使っていない。
ここの集落のオークには神気刀のみで闘うという【制限】を課した。勿論、上位種に対してもである。
それだけ、この課題をクリアする為に気合を入れているって事さ。
魔法で複数体を纏めて倒せない分だけ時間はかかっているが、今なら時間を気にせずにすむ。だから抜け出して来た。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「エリアス、お疲れさん」
ぴょん!
例によって上位種のトドメをエリアスに丸投げし、レベリング完了!
この2日間で俺もエリアスも随分と強くなったはずだ。
いざ、ステータスオープン!