第114話:その酒を渡せ!
投稿が遅くなり、申し訳ありません……。
今回の討伐戦のメンバーの中で、他にもエルフやハーフエルフがいたが、俺のエルフに対するイメージが崩れそうだ……。
「ほら! 行くわよ」
レイラインが急かす様に進みだす。
「仕方がない。ヨシタカ、話は後で聞こう」
(悪いなレグ。話なんて聞けない程に潰してやるゼ)
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
レイラインに先導される形でレグのテントに入ると、ユインとシュウも付いて来ていた。
「さて、ヨシタカ」
さっさと椅子に座っていたレイラインがドヤ顔をしている。
「何だ?」
「早く用意しなさい」
「飯の用意は他の連中がするんだろ?」
「違うわよ! お酒よ、お酒! 何の為に貴方を呼んだと思ってるの! お酒を出しなさい! 昼間も約束したでしょうが! 血生臭い戦いが終わって汗を流したのよ! 私に美味しいお酒を出しなさい!」
ホェ~。
このうわばみエルフ、マジで酒しか頭に無いのか?
「突っ立ってないで早く用意しなさい!」
ダメだコリャ……。
「ハイハイ……」
既に席に着いてる4人の前にグラスを置き、レイラインとレグにはビール、ユインとシュウには三つの矢のサイダーを注ぐ。俺もグラスを持ち、手酌でビールを注ぐ。
エリアスはちゃっかりテーブルの上に移動していたので、木皿にサイダーを注いでやると飛び付いた。
「なぁに? エールなの?」
このババア……。
「俺が安易にエールを出す訳無いだろう?」
「エールだろ? ってか、俺はこのあとやる事があるから酒はいい」
(やっぱりな)
「こんなグラスのエールくらい大丈夫でしょ? それとも何? 私と一緒に飲めないって言うの?」
ドスの効いた声でレイラインが問う。(完全にアルハラだなぁ)
「いえ、その様な事は……」
(スマンがレイラインに付き合ってもらうぜ)
「騙されたと思ってグイッといってくれ、後悔はさせないぞ」
見本を見せる様に俺が自分のグラスをあおる。
ゴクッゴクッ、ゴクッ!
「~~~、クァーーーー! ハァ、ハァ、ハァ……、ウメェ~」
俺はこの瞬間の為に生きていると言っても過言ではないだろう。
格下のイース相手とはいえ、奥の手である火装炎武を使用したのだ、一仕事終えた後のビールが美味くない訳がない。
飯の準備だって手伝ったんだ、不味くなる要素がある訳無い!
「ず、随分と美味しそうに飲むの、ね?」
「ゴクッ、エールをそんなに美味そうに飲むなよ、ガマン出来なくなるだろうが!」
「美味しそう飲むんだぁ……」
「あのお酒は本当に美味しいんでしょうか?」
お子ちゃまには理解出来ん美味さだよ。
「美味いんだからしょうがないだろうが。ほら! 騙されたと思ってグイッといってくれ!」
「た、たかがエールでしょうが……」
「仕事があるのによぉ……」
渋々……、ではなく、涎を垂らしそうな顔で2人がビールのグラスへと手を伸ばす。
ゴクッ、…………! ゴクッゴクッゴクッ!
「ッ、はぁ~」
「クゥオ~~!」
普通に一口飲んだかと思えば、グラスのビールを飲み干した。
「どうだった?」
意地悪に訊いてやる、オレ。
「エールじゃないじゃない。最初から言いなさいよ。お代わりを貰えるかしら? ジョッキで?」
「ヨシタカ! もっと飲ませろ! オレもジョッキだ!」
「ああ、任しとけ」
(フフッ、勝った……)
バルム子爵やベルハルトに好評だったビールが、この2人の口に合わない訳がないからな。
これでレグを潰せる事が確定したも同然だろう。(レイラインはほっとこう)
「コイツでどうだ?」
ゴトン
「良いじゃない。それに綺麗ね」
「偉く高そうなジョッキだな!」
俺が出したのはジャッキはジョッキでも、硝子のメガジョッキだ!
通常の生ビールの約2,5倍~3倍は入るメガジョッキ。
これをレイラインとレグの前に出した。
この世界にも硝子製の皿やグラスは有るようだが、日本製の物に比べるとお粗末なデキでしかない。
日本の居酒屋では一般に使われている中ジョッキですら、この世界では高級品に分類されるのである。
ドでかい硝子製のメガジョッキなんて、この世界には存在しない様な物を見せられた2人の反応が良好なのも当然か。
「2人が飲むなら、これぐらいは必要だろ?」
惚けた風に軽く言う。
「チマチマ飲むよりは良いわ。ねぇレグ?」
「ええ。エールは豪快に飲むモンですからな」
「ああ、豪快に飲んでくれ!」
メガジョッキに大瓶1本分を泡を立てて注いでやる。勿論7対3を意識して。
「綺麗で良いわ。このエール、透き通っていて綺麗よ」
「エールにしては綺麗な色で泡も凄いな」
「これは俺の故郷のビールって名前のエールだ。ほら! 温くなるから飲んでくれ」
ビールの説明なんてどうでもいい。
折角、レグが酒を飲む気になっているんだ、ここで畳み掛けるべきだ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
結局、俺達の食事が運ばれてくるまでに、レイラインとレグはメガジョッキでビールを2杯も飲んでいた。
10分かかったか、かかってないかの僅かな間に大瓶2本を軽く空けやがったのだ……。(アホか!)
食事が運ばれ、俺が用意したスープを前に「あら!トマトのスープなんて豪勢ね~」や「ヨシタカ! 料理が来たんだ、もっとビールを出せ!」だのと言いやがった。
「折角トマトを使ったスープを作ったんだ、次はこれを飲んでくれ。スープにも、肉料理にも合うはずだ」
そう言って出したのはいつもの白ワイン。
実はこれ、スーパーで1980円で売っている甲州ぶどうの白ワイン。俺はこれを冷して飲むのが好きだ。
「ウフフ、白ワインね。このスープには良く合いそうだわ♪」
「レイライン様、白ワインというのは?」
「ヨシタカの故郷のワインの1種らしいわ。スッキリとした味で、冷やして飲むのが美味しかったわ」
「ワインは高いのに、異国のワインともなれば我々が口にするには……」
「何野暮な事を言ってるの! ヨシタカがご馳走してくれるって言ってるのよ! 飲まなきゃ損じゃない!」(イヤイヤ、アンタが飲みたいだけだろ?)
「それとも何かしら? 私とじゃ飲めないの?」
「そ! そんな事はありません!」
「だったらなれば飲みなさい!」
「いただきます! ヨシタカ! さっさとその酒を渡せ!」




