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第109話:察してくれよ……。

前話が短かった事で本日、無事に投稿出来ました。


2~3日おきに投稿するのが負担が少なくて良いですが、話が進まないのが難点ですね。


次は木曜日に投稿したいと思います。

時刻はもうすぐ4時、永い1日だった。



先にベースキャンプへ戻っていたレイライン率いるA班の冒険者達は、順番に風呂に入っていたようだが、俺達が全員で戻ってくるとお互いの無事を笑顔で喜び合っていた。


「ヨシタカ、飯の時間迄は時間がある。お前は風呂に入ってユックリ休んでくれ」

「その提案は魅力的だが、頼みがある」

「何だ? 俺の権限で出来る事なら許可してやる」

「言ったな?」

「どんな内容だ?」


俺とレグの会話を周囲の連中が窺っている様だ。


「無茶な内容じゃないって。晩飯の準備を手伝わせて欲しいだけだ」

「アホか! 何処の世界に新人に混じって炊き出しをするBランカーがいるんだよ。オメェは大人しく休んでろ!」

「俺だって新人だぞ? レグの権限の範囲内だよなぁ? さっき言ったよなぁ? ギルマスからも自由行動は認められてるよなぁ?」

「だ、だから言ってるだろうが、お前にはちゃんと休んでもらいたいと」

「だからだ。気分転換に炊き出しを手伝うんだよ、料理は趣味なんだ」

「くっ、それが本当にお前の負担にはならんのだな?」

「ああ、気分転換だ。それに毎回手伝う訳じゃない、今日の晩飯だけだ」


何時からだろう、周囲の連中の顔が呆れた顔つきになっている。


「……好きにしろ、その代わりシッカリと休めよ!」


なんかレグも呆れた感じでテントへ向かった。


「なあルーキ、痛!」

「どうしたんです! チャットさん!」


俺に話しかけようとした男がいきなり頭を殴られた。


いきなりの事で周囲が疑問に思っていると、殴った男が話しだす。


「お前等、この男は新人だが俺達よりも格上のBランカーだ。それに、剣も魔法も俺達を凌駕する程の強さを持つんだぞ、何時までもルーキーなんて呼ぶんじゃねぇ。みっともないだけだ」

「でもチャットさん……」

「聞こえなかったのか? 今度、ヨシタカの事をルーキーと呼んだヤツは俺が相手になる! 解ったか!」

「はい……」


ふーん。


どっかっで見た顔だと思ったら、最初に行動を共にしたCランクの冒険者か。


「全員に言っておく! 俺達はヨシタカに頼られる程には強くないかもしれないが、お荷物にはなりたくないし、今回の討伐戦では対等な仲間だと思いたい。いくら新人でも変に先輩面するなんて惨めな真似はするな!」


チャットという男はそれだけ言って立ち去った。


「へぇ、格好良い事を言うわね」

「そうだね、お祖母ちゃん」

「ああ言う事で、他の冒険者達を叱咤激励したんでしょうね」


今度はレイライン達か。


「立派な漢だな」

「そうね」


そう言ってレイラインが俺を見つめてくる。


「俺の顔に何か付いているか?」

「貴方、私の忠告を無視したわね?」

「何の事か分からんなぁ?」


思いあたる事は1つしかない……。たぶん、アレだろうな。


「私達の移動中にB班の方向から変わった魔力を感じたわ。B班の子に訊いたのだけど貴方、凄い回復魔法を使って見せたそうね?」


やっぱりアレだったか。


「変わった魔力と言ったが、どう変わってたんだ?」


誤魔化す訳ではなく、純粋にレイラインの魔力感知にはどう反応したのかが気になる。


「教えて欲しいの?」

「ああ。離れた距離でも大きな魔力を感じる事が出来るレイラインの感覚が知りたい」

「ええ良いわよ。お酒を飲みながらならね」

「直ぐに教えてはくれないのか?」


確かに酒を飲ませる約束はしたが、その時に話すなんてお預けはイラン!


「レグとの会話を聞いていたわよ。食事が楽しみだわぁ」


本当にお預けを食らわせてレイラインは人混みに消えてゆく。

それに付いて行くユインとシュウがすまなさそうに頭を下げて行った。


何だかんだでレイラインはマイペースな酒好きだと思ったし、彼女のそんな姿は周囲の冒険者に安心感を与えている様で、これはこれで良いと感じた。




◆◆◆◆◆




エリアスと風呂に入り、着替えを済ませて炊き出しを行っている場所へ向かった。


時刻は4時40分。


暗くなるには時間に余裕があるが、ここは戦場の様な騒がしさがある。


それもそのはずだろう。約200人分の晩飯を作っているのだから、戦場と呼ぶのに相応しい程の活気だ。

冒険者になりたての少年少女と呼ぶに相応しい数十人の若手達が調理に勤しんでいる。

所々でギルド職員や一般の冒険者の姿を確認出来るが、指示を出したり魔法で調理の補助をしている。


ギルドの職員に近付き、レグの許可を得た事を伝えて調理に参加した。


ここで俺はBランカーとギルマスの後ろ楯という強権を発動し、メニューを無理やり変更してやった!


これには職員や冒険者達が驚いていたが、ここで普通に食べる食事の調理を手伝うだけなら俺は参加などしない。


折角、討伐戦の初日を無事に終えて皆が喜んでいるのだ、旨い飯を食べて英気を養って欲しい。明日も頑張ろうという気持ちにさせてやりたい。


全てのメニューを変更するのは無茶な事は解っていたので、スープの内容を変えて俺が指揮をとる事を伝えると、これが妥協点としては充分だった様で、皆が納得してくれた。




「さてと、今日のスープ作りは俺が指揮をとる。宜しく頼む」


『お願いします!』


おぅ、若手は返事に元気があるなぁ。


「ヨシタカさん、貴方がBランクの権威で調理に参加したのはいいけど、私達は何を作ればいいのかしら?」


水魔法を使う女魔法使いの言葉が刺々しいな。


「見て解る様に、スープの具材は準備が終わっているのよ? それに調味料だって塩しかないんだけど、こんな状況で貴方は何がしたいの?」


周囲の若手はBランカーの俺の存在を歓迎しているが、この女の態度はイラつくモノがある。


確かにスープの具材用のジャガイモとニンジンと何かの葉野菜は切り終えている。幸いにも、オークの肉はいくら使っても良いと言われているのでホルモンを貰ってきた。味付けだって普通なら塩のみだろう。


「何も邪魔をしに来た訳じゃない、これを見ろ」


そう言って缶詰のホールトマトやブロッコリー、マッシュルームにキャベツを出した。

200人分が必要だが、それだけの量でも消費魔力は70に抑える様にした。豊富な具材よりも味付けに手を加えたいのだ。


それに、普通の者にはこれくらいの食材が追加されるだけでも、十分に豪華な料理と言えるだろ。


「レグには俺が提供する食材の使用許可も取っている。俺の料理の味はレイラインのお墨付きがある。だから安心してくれ」


これも本当だ。レグは俺に調理の参加許可を出したら直ぐにテントへ戻ってしまったので、食材の持込みに関しても再度、レグの許可を得た。

その場にレイラインも居たことで、直ぐに許可が降りたのは言うまでもないだろう。


「好きにすると良いわよ」


レグとレイラインの名前を出したら、渋々ながらも引いた様であった。


魔法で右手に玉状の雷を作り出し一言、言い放つ。


「今度、俺の邪魔をしたら只では済まさんからな?」


更に雷の玉を大きくする。


「な、何よ! 私が何をしたっていうのよ!」


ちょっと反抗的だな、懲らしめてやろうか。


ぴょん


あっ! 右手の雷球を 女魔法使いに投げようとしたら、エリアスが頭の上から飛び出して俺の前に着地した。


「エリアス!」

「何よ、スライムのクセにやるの⁉」


たぶんそうじゃないか?


「殺したらダメだぞ~」


うにょんうにょん


やっぱり、ヤル気の様だ。殺ったらアカンぞ~。


正直な話、目の前の女魔法使いとエリアスのステータスではエリアスの方が格段に上だ。(女魔法使いの名前はシーナ)

転生したエリアスのレベルは1に戻った事もあり、今日の討伐戦でもだいぶレベルが上がっているんだよ。


まあ、一般冒険者の魔法使いと言っても、所詮は飯の仕度に駆り出される程度の魔法使いなのである。

こんな女を相手にエリアスが負けるとは思えない。逆に、殺してしまうんじゃないかと心配してしまう。


「殺さずに適当に倒すだけでいいからな~」


うにょん?


「そんな女でも一応は味方だから殺さずに倒してくれよ~」


ぴょん!


おお、理解してくれた様だな。


「きぃ~! 飼い主も飼い主なら従魔も従魔ね! スライムのクセに私の前に立った事を後悔させてやるわ!」

「エリアス~、程々にな~」


ぴょん


「全てを焼き尽くす炎よ、現れ出でよ! ファイヤーボール!」


シーナが詠唱し、ピンポン玉のファイヤーボールを放った。(全てを焼き尽くす炎なのにピンポン玉のファイヤーボールかよ!)


一方のエリアスは身体から触手を4本伸ばしたかと思ったら、触手の先端に野球ボールくらいの大きさのファイヤーボールを作っていた。


「詠唱無しでファイヤーボールを4つ?!」


慌てるシーナ。


それもそのはずだ。言葉を発しないスライスとはいえ、無詠唱で魔法を同時に発動させたのである。これには俺も驚いた。


俺は万物創造のアシストがあるので同じ魔法であれば、苦もなく同時発動が出来るが、普通の魔法使いであれば、これだけで十分に優秀な部類に入るらしい。


エリアスは全てを焼き尽くすらしいファイヤーボール改め

、ピンポンファイヤーへ向けてファイヤーボールを1つ放った。


ボン!


「キャア!」


一応は2つのファイヤーボールがぶつかり相殺した様にも見えるが、明かにエリアスのファイヤーボールの方が威力が強かった様で、衝突による爆発の全ての熱や爆風がシーナの方へ行った様だ。


大怪我や火傷は無さそうだが、シーナは地面に倒れ込んでいる。


残りのファイヤーボールをシーナに放とうとするエリアスが見えたが、今のシーナにアレはマズイ! マジでオーバーキルだ! 死んじまう!


ぼしゅ!


触手を振りかぶって3つのファイヤーボールをシーナへ投げつけるエリアス。(やっべー!)


急ぎ猛ダッシュしてシーナとファイヤーボール×3の間に移動する俺。(身体能力が高くて良かった……)

割り込んだと同時に、神気刀を取り出してファイヤーボールをぶった切る!


ボン!


先程の爆発よりは規模は小さいが、俺の近くでファイヤーボールの残骸が爆発した。


(間に合って良かった……。流石にベースキャンプ内で味方殺しはマズイだろ……)


シーナの状況を確認すべく、後ろを向けば……。


………………。


シーナは気絶し、地面が濡れていた……。


どうして濡れていたかって?


察してくれよ……。

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