第107話:いのちをだいじに、だな
これからも投稿を続けていきますが、以前の様に毎日とまでは出来そうにないので、3日に1度は投稿する様にしますので、今後とも宜しくお願い致します。
これぐらいの大怪我なんて治してみせる!
俺はこれまでに、何度か聖魔法を使って解った事がある。
それは【聖魔法の本質】である。
例えばであるが、火魔法が火を操る事が出来ると考えられ、水魔法が水を操る事が出来ると考えられているように、聖魔法は傷や病を癒す事が出来ると考えられている。
だから聖魔法の通称は回復魔法である。
火魔法や水魔法の場合、この考え方は正しいが聖魔法の場合、実は違うのだ。
聖魔法の本質とは、【生命体の肉体】における細胞レベルへ干渉する事が出来る魔法なのである。
肉体の細胞レベルに干渉することが出来るからこそ、傷や病を癒す事が出来るし、アンデット系の魔物にもこの属性魔法でダメージを与える事が出来るのである。(実は通常の魔物にもダメージを与える事が出来る)
では何故にこの属性魔法の名前が聖魔法と言うのかであるが、生命体の細胞へ干渉し影響を与える行為は、本来であれば神の御業の如き神聖な行いの為、この属性魔法が聖魔法と名付けられているのである。
俺は神の知識をフルに駆使し、この真実に辿り着いた。
【聖魔法の本質】を理解している俺が、現代の日本で得た医療知識と神の知識、それに万物創造のアシストがあれば、切傷であろうが骨折であろうが、両腕の切断みたいな大怪我であろうともドンと来いである。
レストとリーズの傍へ近付き、レストとは反対側からリーズの状態を確認しようとすると……。
「ルー、いや! ヨシタカ! 頼む! リーズを!」
「大丈夫だ、俺に任せろ」
確かに、リーズと言う女性冒険者の怪我は酷い。
離れて見ただけでは分からなかったが、呼吸が不規則で辛そうだ。
ポーションなんて傷薬では気休めにもならんだろう。
この世界にもエリクサーなる万能薬はあるが、滅多に手に入る様な代物ではなく、希少過ぎてバカ高い金額が当たり前の様に付く。
並の聖魔法使いでも、命だけでも助けられるかは分からないレベルの大怪我だ。
「リーズ、直ぐに治してやるからもう少し頑張ってくれよ」
そう言って俺はリーズの身体に触れ、眼を閉じ、聖魔法で自分の魔力を彼女の身体に流し込む。
ここからは集中力が大事だ!
目に見える怪我だけであれば、その傷を治せば済む話だが、今のリーズは金属製の鎧が半壊する程のダメージを胴体に負っている。
鎧の下であり、そもそも骨や内臓なんてモノは目で見る事が出来ない。
だからこそ、肉体はおろか細胞へも干渉出来る聖魔法で俺の魔力をリーズの身体全体に流し、万物創造と神の知識のアシストにより、俺の脳内でレントゲンやCTスキャン、内視鏡の様な画像を再現し、彼女の全ての状態を立体的に確認するのである。
(あ~、魔力が減っていく~)
脚や腰に異常はない。腹部も大丈夫だ。……クソッ! 予想はしていたが、胸部が酷い……。
肋骨が折れて肺や心臓を圧迫したり傷付けている。背後からもオークの攻撃をくらったのだろう、肩甲骨にもヒビが入っている。
顔の左側は見て分かる様に骨が砕けて皮膚が潰れているし、脳にもダメージがある様だ。
確かに大怪我だ。
ほっといたら確実に死ぬレベルだ。
中途半端な聖魔法使いなら、命を救うだけでも十分かもしれない。
でも、俺は違う。違うのだ!
この世界で自由に、好き勝手に生きる事を神様に許され、それが出来る程のチート能力を貰った男だぞ!
こんな所で冒険者1人の命も救えない様な中途半端なチート能力なら、クラウちゃんだろうが元いた世界のタナトス様であろうが怒鳴り込んでやんよ!
だからこそ、俺は自分の能力を信じる。神様に貰った能力を信じる。
この世界は魔力という名の生命が持つエネルギーが、世界の理に影響を与える事が出来る世界。
だからこそ、俺はイメージする。
リーズの肋骨、肺、心臓、肩甲骨、顔、脳。傷つき、傷んだ身体の全ての損傷を治療する為に。
1度に全てを治療するのは難易度が高い。今の俺の技量では、ムダに時間がかかってしまいそうだ。
優先順位を考えて効率良く治療しなければ、最悪の場合は俺の魔力が尽きてしまう……。
◆◆◆◆◆
神経を使う、集中力を切らしてはいけない、どんどん魔力が減っていくし、頭がボーッとする、身体もダルい……。
この作業を始めて、何れくらいの時間が経過したのだろうか……。
何時からだろう、周りが騒がしくなった気がするな。
「……跡だ!」
「……ーズの顔が!」
「大した男だぜ!」
「頑張れルーキー!」
「顔が綺麗に戻ったわ!」
もう少しで終わりそうなんだ、静かにしてくれ、でないと俺の集中力が切れそうだ。
あ~、ヤバい……。俺の意識が朦朧とし始めた……。
すりすりすりすり
首筋に感じるのはエリアスかな?
応援でもしてくれてるのか?
ああ、もう少しで終わりそうなんだ頑張るぜ。
◆◆◆◆◆
終わった……。
聖魔法での治療を終え、眼を開けるとリーズが横たわっている。
左側が潰れた顔ではなく、きちんと整った女性の顔。折れていた右腕もちゃんと真っ直ぐに伸びている。
鎧は壊れたままだが、呼吸も規則的にされている。
(成功だ……)
立ち上がろうとした瞬間。
『ウォーーーー!!』
周囲から大歓声が聞こえた。
驚き、顔を上げるとレストが泣いていた。
「ありがとう、ありがとう、ありがとぅ……」
レストはリーズを抱きしめ、涙を流しながら何度も感謝の言葉を搾り出していた。
周囲を確認すると、リーズの治療の成功に冒険者達が歓喜していた。中には歓喜のあまり、男泣きしている野郎の姿もある。
ドン!
中腰の俺の肩を誰かが強く叩いた!
振り返るとレグだった。
「良くやったヨシタカ! 」
あの厳つい顔のレグですら、満面の笑みである。
「俺に任せろと言っただろうが。リーズは後遺症も残る事はないだろう。今迄通りの生活をおくれるはずだ」
「そうかそうか! 俺もダメ元でお前を頼ったが、結果は俺の予想以上だ! 冒険者は身体を張ってナンボだが、命をかけるモンじゃねぇ。人生は1度っきりだ、命は大事にせんとな!」
「ああ、いのちをだいじに、だな」




