第105話:この世界に馴染んだよなぁ
最近、投稿の感覚が空いておりますが、投稿を続けていきますので今後とも宜しくお願い致します。
「ヨシタカさん、何をしているんですか?」
俺が牛丼を食べようとした正にその時、後ろから声がした。
振り向くと見知った2人が立っていた。その後ろには他の冒険者達もいる。
「ユインとシュウか、飯を食うんだ。邪魔するな」
2人を無視して牛丼を食べ始める。
バクッ!
(くそ~、ウメェ……)
チープな安っぽい牛肉の歯応えと、その脂が溶け込んだ汁を吸ったご飯の相性。そして玉ねぎの甘味が良い。
この世界に来てから約10日か。美味い肉に出逢えた事は嬉しいが、やはり日本の食事が1番だ。
牛丼に対しては栄養が偏るとか何とか言われているが、早くて安いのに満足感があるので、たまに無性に食べたくなる。
決して上等な食事ではないが、今はこれがとても美味く感じる。
つんつん
ん? 何だ? ああ、エリアスか。
どうやらエリアスが牛丼を半分食べ終え、触手で俺の腕をつんつんした様だ。
「もう半分食べたのか、早いな。美味いか?」
ぴょん
「そうかそうか、美味かったか。じゃあ、ちょっと待ってな」
アイテムボックスから生卵を出して小皿に割り入れ卵をかき混ぜる。
よく混ざったら半分をエリアスの牛丼にかけて、その牛丼全体を少し混ぜてエリアスの前に置く。
「ヨシタカさん! 生の卵を食べるんですか⁉」
「お腹を壊しちゃいます!」
何だよ⁉ ずっと見てたのかよ……。
「俺の故郷の卵は生でも食えるんだよ。エリアス、さあ食べてみな」
ぴょん
触手を絡ませて牛丼の木皿を取り込んだ瞬間、これまでに見たことのない激しい反応があった。
ぶるぶるぶるぶる!
【ぷるぷる】ではなく【ぶるぶる】と白い身体を震わせて吸収している。吸収する速さも普段よりも速い気がする程だ。(いつもの2割増しかな?)
「お前等は何時まで見てるんだ?」
生卵に反応したので振り向けば、ユインとシュウは此方を見ている。
ユインは口の端にはヨダレが見えている……。
「申し訳ありません……」
「ヨシタカさんのご飯が気になっちゃって……」
◆◆◆◆◆
結局、1食分あった牛丼をユインとシュウに分けてやった。もちろん生卵付きで。
俺はエリアスの残りの生卵をかけて食べたが、当然の事ながら美味かった。
「ウソ! 卵を生で食べたらこんなに美味しいの⁉」
「いやいや、これはこの汁が美味しいのですよ!」
「卵があった方が美味しいよ!」
「卵があっても美味しいですが、汁を吸った米が美味しいのです!」
おいおい、牛丼1杯でマジになるなよ……。
「どっちも正解だ。牛丼と言うこの食べ物自体が美味いから、アレンジの1つとして生卵が用いられるが、他にもアレンジの方法は沢山ある。機会があれば他のも食わしてやるよ」
「ホントですか⁉」
「是非、お願いします!」
機会があったらな……。
それにしても、牛丼に生卵は反則級だよな。米がツユを吸い、それを卵がコーティングすることで牛丼が飲み物の様にスルスルと喉を通り抜けていく。
(ヤッパ、日本の食事は美味いわ)
「あなた達、何をしているのかしら?」
今度は前方から声がした。それも、怒気を含んだ声だ。
「お、お祖母ちゃん!」
「レ、レイライン様!」
声の主はレイライン。
「早かったな、レイライン」
「私の言葉が聞こえなかったのかしら?」
「飯を食ってるんだ。悪いか?」
「私達が戦っていたのに?」
「ああ。と、言うよりも、そっちが終わっているのを知ってたからな。まさか、苦戦してたのに何で助けに来なかったとか言うのか?」
ハッタリではない。実際にレイライン達のグループが目的を達成していた事は知っていた。(牛丼を食い始める頃には終わっていた)
それに、避難している様なオークを相手にレイライン達が苦戦するなんてありえない。
「バカな事を言わないで、あんなオーク共に手こずる訳がないでしょう」
「解ってるさ、だから俺は飯を食ってたんだ。こんなに頑張ったんだ、飯を食うぐらいで責められる謂れは無いと思うぞ?」
そうとも今日1日、俺は誰よりも頑張り、活躍したはずだ。
自分の持ち場を片付けた後に飯を食うぐらいで責められたら堪ったもんじゃない。
それに俺達3人以外の数人の冒険者達も、休憩がてらパンや干し肉をかじっている。
「それを言われると困るわね。私達も少し休憩をするわ。それにしても、よくもこんな場所でリラックス出来るわね?」
ふっ、気にしない様にしていたのに……。
「腹が減ってたから無視してたんだよ」
此処は先程までオーク共と戦っていた集落の中。
少し離れているが、大量のオークやその上位種の死骸が視界に入る。
風にのって血の臭いも感じられる程に凄惨な光景が近くにある。
俺も変にこの世界に馴染んだよなぁ。




